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ある日の散歩道
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(ん?)
新宿御苑の傍に一本の道がある。
静かな道だ、散歩するのは趣味ではないがたまになら通ってもいいと思えるその道を歩いている時だった。
(あれは……)
信号待ち。
そう思える挙動だった。
どんなものかを説明しよう。上手く書ければいいのだが、こういう場合は箇条書きで端的に書いた方が好ましい。具体的に書けはするが、下手を打ちたくはないのでこういう書き方をさせてもらう。申し訳ない。
1,ママチャリであった。
2,グレーだ、しかもかなり年季が入っている
3,後部座席が存在する。チャイルドシートと言った方がいいか。
4,その座席の背に注意書きが貼ってあった。色と書き方からして二回目だろう。
5、 乗っている人物はーーーーいや、あえて伏す。
6,その人物は貧乏ゆすりをしていた。遠目だからどちらかは判断しかねる。
7、着ていたものは分からない。けれどキャンプ用の帽子を被っていた。これだけは覚えている。
8、背中にバック?を背負っている……はず。
決して探そうとは思わないでくれ。遠目で見たからこそこれは回避できたと思うからだ。
さて、話を戻そう。
私は足を止めて、それ(人物と言っているがこの表現の方が正しいので仮称を『それ』とさせていただく)を見た。
ただの出来心だ、他に理由はない。
真正面、信号を待っているであろうそれはただひたすらママチャリを傾けて貧乏ゆすりをしている。
信号は確かに赤を照らしている。
だがそこまで焦るなら他の信号を探すか左右を確認して車が来ないタイミングを狙えばいい。
そんなことを知らないかのように律儀に信号を待ち続けるそれは何か不自然だった。
釘付け、脳裏にそんな言葉を流して私は身体を動かそうと試みる。
けれど出来心が好奇心の糸に変わって、私をその場に縫い付けた。
そしてその時は来た。信号が青になったのだ。
だがそれは貧乏ゆすりをやめてピタリと動かなくなっただけだった。
前に進んだり、後ろに下がったりすることはなかった。
私はその時に身体から力が抜けたのを知る。
なんだ、ただ頭がおかしい輩か。見て損した。
自分でも世俗の求めるものに毒されているなぁとぼやきながら、チラリと横を向いた。
何かあるわけではなかった。ちょっと意識しすぎかなぁと思ったうえで視線を横に向けただけだ。
そこには一つベンチがあり、散歩に疲れたのか一匹の犬と飼い主と思われる人物がいた。
飼い主はベンチで休んでスマホを弄っているが、私は犬の方に注意が向いてすぐに信号に視線を戻した。
先程の信号待ちの所にそれはいなかった。
もう行ったか、私はそう思った。
けれど先程のベンチの犬の動きが気になり、信号の方に向かった。
犬は休んでいる飼い主に水をもらおうとはしゃぎそうな歳に見えた。
大体4,5歳ぐらいだろうか。太ってはいるものの老年の疲れた様子は見えなかった。
その犬がピンっと耳を立てて先程の信号の方をただただじっと見ているのだ。
信号に辿り着くとそこには何もなかった。
近くに看板が一つ、『違法駐車禁止』について書かれたよく見る看板が一つ。
立てられているのはガードレール、こちらも何の変哲もない。
疲れていたのだろうか、私は目頭をつまんで先程の道に戻っていった。
興味本位とはいえ変なものを見る段階まで疲れがたまっていたのか。
ならばさっさと散歩を切り上げて早く帰ろう。そう思った。
これで話は終わりだ。
大きなオチもない、本当にこれだけだ。
(ん?)
私はそこで不自然なことに気が付いた。
一度振り返り、その信号を確認する。
(この信号……赤で点滅している………)
新宿御苑の傍に一本の道がある。
静かな道だ、散歩するのは趣味ではないがたまになら通ってもいいと思えるその道を歩いている時だった。
(あれは……)
信号待ち。
そう思える挙動だった。
どんなものかを説明しよう。上手く書ければいいのだが、こういう場合は箇条書きで端的に書いた方が好ましい。具体的に書けはするが、下手を打ちたくはないのでこういう書き方をさせてもらう。申し訳ない。
1,ママチャリであった。
2,グレーだ、しかもかなり年季が入っている
3,後部座席が存在する。チャイルドシートと言った方がいいか。
4,その座席の背に注意書きが貼ってあった。色と書き方からして二回目だろう。
5、 乗っている人物はーーーーいや、あえて伏す。
6,その人物は貧乏ゆすりをしていた。遠目だからどちらかは判断しかねる。
7、着ていたものは分からない。けれどキャンプ用の帽子を被っていた。これだけは覚えている。
8、背中にバック?を背負っている……はず。
決して探そうとは思わないでくれ。遠目で見たからこそこれは回避できたと思うからだ。
さて、話を戻そう。
私は足を止めて、それ(人物と言っているがこの表現の方が正しいので仮称を『それ』とさせていただく)を見た。
ただの出来心だ、他に理由はない。
真正面、信号を待っているであろうそれはただひたすらママチャリを傾けて貧乏ゆすりをしている。
信号は確かに赤を照らしている。
だがそこまで焦るなら他の信号を探すか左右を確認して車が来ないタイミングを狙えばいい。
そんなことを知らないかのように律儀に信号を待ち続けるそれは何か不自然だった。
釘付け、脳裏にそんな言葉を流して私は身体を動かそうと試みる。
けれど出来心が好奇心の糸に変わって、私をその場に縫い付けた。
そしてその時は来た。信号が青になったのだ。
だがそれは貧乏ゆすりをやめてピタリと動かなくなっただけだった。
前に進んだり、後ろに下がったりすることはなかった。
私はその時に身体から力が抜けたのを知る。
なんだ、ただ頭がおかしい輩か。見て損した。
自分でも世俗の求めるものに毒されているなぁとぼやきながら、チラリと横を向いた。
何かあるわけではなかった。ちょっと意識しすぎかなぁと思ったうえで視線を横に向けただけだ。
そこには一つベンチがあり、散歩に疲れたのか一匹の犬と飼い主と思われる人物がいた。
飼い主はベンチで休んでスマホを弄っているが、私は犬の方に注意が向いてすぐに信号に視線を戻した。
先程の信号待ちの所にそれはいなかった。
もう行ったか、私はそう思った。
けれど先程のベンチの犬の動きが気になり、信号の方に向かった。
犬は休んでいる飼い主に水をもらおうとはしゃぎそうな歳に見えた。
大体4,5歳ぐらいだろうか。太ってはいるものの老年の疲れた様子は見えなかった。
その犬がピンっと耳を立てて先程の信号の方をただただじっと見ているのだ。
信号に辿り着くとそこには何もなかった。
近くに看板が一つ、『違法駐車禁止』について書かれたよく見る看板が一つ。
立てられているのはガードレール、こちらも何の変哲もない。
疲れていたのだろうか、私は目頭をつまんで先程の道に戻っていった。
興味本位とはいえ変なものを見る段階まで疲れがたまっていたのか。
ならばさっさと散歩を切り上げて早く帰ろう。そう思った。
これで話は終わりだ。
大きなオチもない、本当にこれだけだ。
(ん?)
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