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中二病、依頼を受ける
しおりを挟むまずは僕が元刑事で上層部から目を付けられていた少し色付きの存在であることを謝らせてほしい。そのおかげで普通の生活でも警戒しなければいけないから、会話や行動の節々がおかしいとよく言われている。決して中二病じゃない。
プルルルルルルル
「ゲッ」
だからこの日来た電話に対しても僕は変な言動で行動をする。
内職が一段落してネット配信のアニメでも見ようかなと思った頃、事務所の電話が鳴り響いた。この電話の番号は仕事の依頼用として使っているから普段なら絶対にかかってこない。てか依頼自体がそこまで多くないから最近だとなんでこんな電話取り付けてるのか疑問に思うぐらいだ。
「はい、もしもし」
嫌々ながらに受話器を手に取り応対すると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おう、仁太。久しぶり」
「なんだ、故由姉さんか」
僕の家系図はちょっとおかしい。僕の家、頼瀬は探偵の家系で、爺さんが本業で探偵をしていて、父はそれじゃあ家が持たないからということで作家をしているけど、某金田一よろしく巻き込まれ体質なこともあって作家兼探偵をしている。で、母はそんな父を支えるために色々学んだ結果、専業主婦でありながらハッカーから司法解剖までなんでもござれのとんでもマミーになった。言ってるだけで頭痛くなる。
まだある。父の弟がとんでもない精豪で、日本に愛人が二桁を超えるほどいたらしい。僕はあったことないけどなんというかすごいモテたそうな。現在は南米でハーレムしているとかなんとか。そのおかげで子供の数は多く、彼の子供は日本だけで10人以上いる。その中で抜きんでているのがなんと10人もの子供産んだ毬月の令嬢だ、彼女もまたとんでもないほどの性欲の持ち主だったらしい。その10人の子供の長女として生まれたのが今電話をかけてきている毬月故由姉さんだ。
故由姉さんとは仲が良かった訳じゃないけど、親戚の集まり(というか一個大隊ぐらい集まった)で、僕が探偵の仕事もしているよーみたいな話をしたら飛びついて来たのがこの故由姉さん、というわけ。
「何ですか?事件なら僕よりも警察に行った方がいいですよ」
「いや、警察には無理な案件だ。刑事として働いていたなら分かるだろ?」
「・・・・・・・・・」
そこを突かれると痛い点がある。探偵だけで食っていけないこのご時世、僕は暇つぶしで受けた試験で合格して警察官になった。そしてそれなりに務めて刑事になった、まあ二課だけどね。
でも内情はあまりにも酷かった。もちろん仕事の内容ではない、むしろそれだけは向いていた。金だ、金の問題が非常に嫌だった。どいつもこいつも金が欲しいから手を出したという理由ばかり、1年務めて7割がその理由、ゲシュタルト崩壊しそうになった。それに加えて上司が自分で起こしたミスを金で解決して有耶無耶にしやがった、やめた今でも許せない。ほどなくして刑事をやめて、探偵になってからは適当に内職をして食っている。ストレスが溜まらないから今までと比にならないぐらい生活はマシになった。まあ一時期向こうの姉たちの何人かのお世話になったりもしたけど。
(はぁ・・・つまり、警察上層部につながってそうなどこかの宗教絡みってところか)
「・・・依頼なら話は聞きますよ」
「お、流石仁太。理解が早くて助かる。今度沙雪にお礼参りしてもらおうか」
「沙雪姉!?」
向こうの姉の中で最もお世話になった、僕が一番苦手とする人。簡単に言うと、母性が強い、甘やかし上手、魔性。これでいいだろう、もうこれ以上は思い出したくもない、アレが身内だと思いたくもない。
「あーそういえば、沙雪は地雷だったな・・・スマン」
「い、いや、大丈夫です、大丈夫ですよ。『洗脳赤ちゃんプレイ』の影響ががが」
「マジでスマン・・・」
閑話休題
「さて、本題に入ろう。写真を送るから確認してくれ」
するとピロンと音がなって、依頼用のパソコンに何枚か写真が送られてきた。こちらならば外部に漏れる問題はない
「確認しました。それで、他に情報はありますか?」
「そうさな、あるにはあるが確証はない」
「問題ないです、調べるのが私の仕事ですので。問題ありませんから言ってみてください」
「回空堂ってところだ」
おっとマズい、その情報はいけない。写真のファイルを開くと腹が膨れた子供が出てきた。なるほど、これならあそこの組織がいるのも裏付ける。だからこそマズい。あそこは上層部でも名前は上がるけど依然として検挙出来なかった組織なのだ。
「そうですか、調べておきます。ところで最近探していた猫は見つかりましたか?」
「・・・!!ああ、なるほど。見つかったよ」
「それは良かった」
流石に分かったか。あそこの組織の名前は本当にマズいことが。
回空堂、それは明治時代からあったとされる組織。世間一般で流通している本には一切乗っておらず、根も葉もない噂がネットで飛んでいる程度の実態があるようでないような組織だ。でも、二課で色々調べていて僕が関わった事案のほとんどにこの名前があった。以前僕の知り合いがそれを上司に報告して消息を絶っている。
(そこの教えの一つに『良き子は福を内に貯める』とか書いてあった)
その知り合いが消息を絶つ前に最後の最後にネットワークの海に調べた情報を沈めた。僕がそれを見つけたのはつい先日、『俺氏、変な情報を掴む』というスレで見つけた。変な情報は今話した通りの回空堂についての情報で、そこには本当に根も葉もないことが書かれていた。スレ主にとってはただ聞きかじった情報を乱雑に並べただけに過ぎなかったみたいだが、3にやけに詳しく回空堂について書いたコメントがあった。内容はまるで自白しているようなもので、スレ主の言ったことを否定したわけではなくその内容に繋がる、読んでいて納得できる具体性を含んでいた。それは投稿されて数分も経たずに消されたが、僕は手に持っていたスマホでそれを撮影していた。決してネットサーフィンをしながら馬の育成をしていたわけではない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
事務所の中にはいくつか盗聴器がある。設置されていた隠しカメラにこの電話と依頼用のパソコン、それとスマホのものは外しているが、他のものは付けたままにしてある。だからこそ今の情報を漏らすのはマズい。
「でしたら今回の件、いかがいたしますか?個人の見解としては調べるだけに留めておくのがいいかと」
「分かった。今回の件は無かったことに」
「ありがとうございます。ではまた次の機会によろしくお願いします」
写真が添付されたメールに『三日後に代々木公園で』と返信して、僕はパソコンを閉じた。
「あー依頼料は良かったけどこの依頼はパスだな。さて、iTunesカード買いに行くか」
そう言ってわざと背伸びをして事務所を出る。この数日監視が付かないことを祈りながら僕はコンビニに向かった。
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