勇者ライフ!

わかばひいらぎ

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日常編(単発)

フーリの家へ

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 夜。いつもより会議が長引いたことにクライブは苛立っていた。
「くそ……なんで次の会議のお菓子を決めるのに五時間も使ったんだ」
「まぁそういう日もあるって」
「そうだよ。あんまり気を落とさないで」
「いや全部お前らのせいだろ!」
 今日は勇者団の方針会議が開かれたのだが、本題は三十分で終わり、残りの五時間は次回の会議のお菓子決めだったのだ。クライブが言うように、その話題を出したのはフーリとマルセルなのだが。
「さむっ……。まだ秋だぞ?」
「まあ夜だしね」
「さっさと帰って紅茶でも……って!?」
「なんだよクライブうるせぇな叩きのめすぞ」
「なんでだよ。そんな事より、電車止まってる……」
「遅延?」
「全裸の男性が百人が線路を縦断してて電車動けないって」
「僕も混ざろうかな」
「やめとけ。社会的な死がまってるぞ」
 クライブは腕を組みながら深くため息をついた。彼の家は電車に乗って三十分ほどかかる位置にあるため、電車が動かないと家に帰るのは絶望的で、今回に至っては夜なので帰るのは無理だということだろう。
「ねぇクライブ、電車動いてないってほんと?」
「ん?ああ。裸集団のせいでな。マルセルも電車だっけ?」
「うん。ひと駅だけだけど」
「じゃあ歩いて帰れるだろ」
「こんな夜に一人で歩きなんて怖いよ!不審者出てきたらどうするの」
「魔法で撃退すれば?」
「灰になっちゃうよ……」
 どうやらマルセルも帰れないようだ。
 「どうすんの?野宿?」
「しねぇよ。ホテルに泊まればいいだろ」
「僕所持金ないんだけど」
「じゃあマルセルは野宿決定ということで」
「なんで!」
 マルセルがぽこぽこフーリを殴る。でもすげぇ勢い。多分痣できる。
「痛てぇな!もういいよマルセル。僕の家ならすぐ近くだから泊まるか?」
「マジで!いいの?泊まる泊まるー!」
 マルセルは風魔法を巧みに使いながら高くジャンプをする。これがマルセル流の喜び方である。
「じゃあなクライブ!また今度!」
「おい待て待て。なんでマルセルだけなんだよ。俺も誘えよ!」
「え?お前金あるんだろ?」
「お前ん家に泊めてもらえば金かかんねぇだろ」
「そんなに僕の家に来たいの?全くもう……クライブったら……」
「変な言い方するな。で?泊めてくれるのか?」
「もちのろんだよ」
「ありがとな。じゃあ早速行くか。ここから歩いて五分なんだろ?いいよな、お前ん家本部に近くて」
「いいだろ?どうせなら僕んちに住むか?」
「それは遠慮するわ」
「チッ」
「なんの舌打ちだよ!」
「よし!じゃあ帰るか」
 こうして、マルセル,クライブの三人はフーリ宅に泊まることになったのであった。

 勇者団本部から歩いて五分。フーリ宅へ到着した。フーリ宅とは言ってもここは彼の従姉妹であるレヴェルが一階で武器屋を営んでいて、二階にフーリが居候しているのだ。
「お邪魔します……」
 夜も遅いので、静かに入る。
「わぁ、夜の武器屋ってなんか不気味だね」
 月明かりが模擬刀に反射して不気味に見える。
「じゃあとりま僕の部屋行こうぜ。できる限りのおもてなししてやる」
(フーリのおもてなしか……不安だな)
 クライブは心の中で密かに思った。

 三人はフーリ部屋に入る。
「うわっ、部屋きったねぇ」
「やっぱりゴミ箱買ったほうがいいかな」
「ゴミ箱は買おうぜ。逆にゴミどこに捨ててんの?」
「角に溜めてゴミの日にまとめて捨てる」
「不潔だな」
 フーリの部屋は九畳ほどの広さで、ドアから見て右側にベッド、左側の奥に机があり手前側に本棚がある。しかし、そのベッドと机の間にはゴミが散乱している。ポテトチップスの袋にティッシュに読みかけの本……。
「なぁフーリ。俺らここで寝るの?」
「あぁ、お前らは床がお似合いだ」
「ひでぇ言いようだな。じゃあさ、せめてここだけでも片付けていい?」
「お前にできるかな?」
「そんくらい出来るわ。マルセルも手伝えよ」
「このゴミ全部魔法で燃やしてから消火するってのは?」
「やっぱマルセル手伝わなくていいわ」

~三十分後~

「ふぅ……。ひとまずこの程度か」
 何と言うことでしょう!ゴミだらけでほぼ見えなかった床が顔を出し、二人が布団を敷いて寝れるくらいのスペースが生まれた。クライブは埃を吸わないために口周りに巻いていたタオルをとる。
「はぁ疲れた。なんで俺がお前の部屋の掃除なんてしてんだか」
「お疲れさん。今お茶とお菓子でも持ってくるよ」
 そういいフーリが部屋を出ていく。

~三分後~

「お待たせ~」
「割と時間かかったな」
「はい、これでもお食べ。トッピングはお好みで」
 そういい、フーリは三杯のラーメンを出してきた。いったいお菓子とは何だったのか。
「え、ラーメン……」
「嫌い?」
「いや好きだけどさ、この時間にラーメン?」
「醤油、味噌、豚骨ってあるけど。クライブ掃除してくれたから選択権をあげるよ」
「味噌で」
 午前一時を回る時刻にまさかのラーメンをすすった。最近のインスタントもなかなかやるなと思う。
「クライブはさ、ラーメンにこだわりある?」
「俺は麺柔らかめでネギ多めなら文句はないな」
「マルセルは?」
「その店のオリジナルに合わせるかな。特にこだわりはないかも。フーリは?」 
「僕は麺硬めで背脂多めかな。あとノートを入れて食べるとさらに美味しいよね。ついでに書いてあることが記憶に定着するし」
「ノートの件はよく分からないな」
「え?分かんないの?クライブ遅れてるな~」
「普通はノートなんてゲテモノ入れねぇんだよ」
「そういう地域なんだ」
「地域差ねぇと思うけどな」
 こうしてラーメンを食した三人は他愛もない会話をしながら床に就いた。
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