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悪役令嬢、キューピッドになる
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翌日、昼休みを告げる金が鳴ると、
アイリスは飛ぶように私のところに
やって来た。
「セセリア様、おまたせしました!」
ここまでどれだけ急いで来たのか
アイリスの息は弾んでいた。
「そんなに急がなくても私は逃げたり
しないわ。さぁ、息を整えて!」
半分呆れたように笑いながら私が言うと
アイリスは小さく頷いてから数回深呼吸
をした。
「アイリス、昨日あなたには話さな
かったのだけど、私、いつも一緒に
昼食をとっている方がいるの。」
アイリスの息が整ったのを見計らって
私は切り出した。
「その方も一緒で構わないかしら?」
嫌とは言わないってわかってるけど
一応お伺いを立てないとね。
「もちろんです!セセリア様のお友達
なら大歓迎ですよ!」
アイリスは嫌な顔一つせず、瞳を
輝かせて言った。
「友達という訳ではないのだけど…。」
改めて考えると、私とアンセル殿下の
関係ってなんだろう?
殿下は、弟の婚約者である私を身内
だと言ってくれてるけど…。
「セセリア様、もしかしてそれって
後ろにいらっしゃる方ですか?」
アイリスの言葉に後ろを振り返ると、
そこにはアンセル殿下と側近の二人が
立っていた。
「殿下!いらしてたんですか!?」
驚きのあまり、思わず声をあげてし
まった私は、周りの視線に気づいて
あわてて声のトーンを落とした。
「ええと、アイリス、紹介するわね。
こちらはアンセル殿下よ。」
「知ってます。」
突然の殿下の登場に動揺もせず
アイリスは笑顔で答えた。
「こんにちは、アンセル殿下。」
「アイリス、こんにちは。」
あら、この二人面識あったのね。
「殿下、アイリスとは初対面じゃ
なかったんですね。」
「うん、僕は生徒会長だからね。
アイリスが転入した時に一度だけ
会ってるよ。」
それなら話が早いわ。
「殿下、今日からアイリスも一緒に
昼食をとってもよろしいですか?」
「もちろん。にぎやかな昼食になり
そうだね。」
殿下はにこにこ笑っていたが、後ろの
ギルバートとレオンは微妙な表情を
していた。
第一王子の昼食に、貴族じゃない子を
誘うなんて、非常識だとでも思われた
のだろうか。
まぁいいや。殿下がいいって言ってる
んだし。
「とりあえず、カフェへ行こうか。」
殿下に促され、私たちは移動する
ことにした。
それにしても、この煌びやかな集団
なんなの…。
アンセル殿下と側近二人だけでも
アイドルグループのように華やか
だというのに、アイリスが加わると
もうどこの神々なのってくらい
眩しいわ。
私、ここに混ざってていいのかしら。
いやでも、元々セセリアはヒロイン
を引き立てるための悪役令嬢だし
今更気にしても仕方がない。
「セセリア様、どうかしました?」
「あ、えっと、今日はなにを食べよう
かな~って考えてたの。」
まったく別の事を考えていた私は
急いでメニューに視線を落とした。
「こんなにメニューがあると迷い
ますよね。アンセル殿下、おススメ
はありますか?」
あら、この子なんて自然に殿下に
話を振るのかしら。
やっぱりただ者じゃないわ。
第一王子という地位はもちろんのこと、
直視を憚られるほど美丈夫な殿下に
貴族の令嬢でもここまで気軽に話し
かけることは出来ないだろう。
「そうだね、日替わりランチもいいけど
バンガーズ アンド マッシュかプラウ
マンズランチがおススメだよ。」
この二人、予想以上にお似合いだわ。
こりゃセセリアがどんなに頑張った
ってダメでしょ。
「そういえば、セセリアの手作り
お菓子をご馳走してくれるって話、
忘れてないよね?」
会話が弾む二人をぼんやり見ていた私に
殿下が話しかけた。
「まさか!忘れてませんよ!」
ウソです。忘れてました…。
そんな話してましたね。
「セセリア様、お菓子を作られるん
ですか?」
新しい話題に興味深々といった表情で
アイリスが私を見た。
「セセリアはお菓子作りの名人だよ。
僕はまだ食べたことないけど、弟の
カインに何度自慢されたことか。」
私が答えるより先に殿下が語り出した。
「あら、どうしてアンセル殿下は
セセリア様の手作りお菓子を食べた
ことがないのですか?」
「カインが独り占めして、僕には絶対
くれなかったんだよ。」
「そうなんですね。私もセセリア様の
手作りお菓子、食べてみたいなぁ。」
二人の視線が痛い…。
アンセル殿下には約束しちゃったし
いつかは作ってあげないとって思って
いたのよね。
この際だから二人一緒にご馳走して
しまおうか…。
どうしようか考えていた私は、この時
ひらめいた。
そうよ!二人の距離を縮めるいい機会
だわ!
「じゃぁ私、お菓子を焼くから今度
みんなでお茶会をしましょう!」
「それはいい考えだね。生徒会専用の
サロンがあるから、場所はそこでいい
よね?」
殿下もすっかり乗り気だ。
「あの…そのお茶会、私も参加して
いいのですか?」
アイリスが不安げに私を見た。
「もちろんよ!私の作ったお菓子、
ぜひ食べてね!」
お茶会は口実で、あなたと殿下を
くっつけるための会ですからね。
むしろいてくれないと困るわ。
「わぁ!楽しみです!私もお手伝い
しますね!」
「ええ、よろしくね!」
さぁ役者は揃ったわ。
私はアイリスとアンセル殿下の仲を
取り持つキューピッドになるわよ!
アイリスは飛ぶように私のところに
やって来た。
「セセリア様、おまたせしました!」
ここまでどれだけ急いで来たのか
アイリスの息は弾んでいた。
「そんなに急がなくても私は逃げたり
しないわ。さぁ、息を整えて!」
半分呆れたように笑いながら私が言うと
アイリスは小さく頷いてから数回深呼吸
をした。
「アイリス、昨日あなたには話さな
かったのだけど、私、いつも一緒に
昼食をとっている方がいるの。」
アイリスの息が整ったのを見計らって
私は切り出した。
「その方も一緒で構わないかしら?」
嫌とは言わないってわかってるけど
一応お伺いを立てないとね。
「もちろんです!セセリア様のお友達
なら大歓迎ですよ!」
アイリスは嫌な顔一つせず、瞳を
輝かせて言った。
「友達という訳ではないのだけど…。」
改めて考えると、私とアンセル殿下の
関係ってなんだろう?
殿下は、弟の婚約者である私を身内
だと言ってくれてるけど…。
「セセリア様、もしかしてそれって
後ろにいらっしゃる方ですか?」
アイリスの言葉に後ろを振り返ると、
そこにはアンセル殿下と側近の二人が
立っていた。
「殿下!いらしてたんですか!?」
驚きのあまり、思わず声をあげてし
まった私は、周りの視線に気づいて
あわてて声のトーンを落とした。
「ええと、アイリス、紹介するわね。
こちらはアンセル殿下よ。」
「知ってます。」
突然の殿下の登場に動揺もせず
アイリスは笑顔で答えた。
「こんにちは、アンセル殿下。」
「アイリス、こんにちは。」
あら、この二人面識あったのね。
「殿下、アイリスとは初対面じゃ
なかったんですね。」
「うん、僕は生徒会長だからね。
アイリスが転入した時に一度だけ
会ってるよ。」
それなら話が早いわ。
「殿下、今日からアイリスも一緒に
昼食をとってもよろしいですか?」
「もちろん。にぎやかな昼食になり
そうだね。」
殿下はにこにこ笑っていたが、後ろの
ギルバートとレオンは微妙な表情を
していた。
第一王子の昼食に、貴族じゃない子を
誘うなんて、非常識だとでも思われた
のだろうか。
まぁいいや。殿下がいいって言ってる
んだし。
「とりあえず、カフェへ行こうか。」
殿下に促され、私たちは移動する
ことにした。
それにしても、この煌びやかな集団
なんなの…。
アンセル殿下と側近二人だけでも
アイドルグループのように華やか
だというのに、アイリスが加わると
もうどこの神々なのってくらい
眩しいわ。
私、ここに混ざってていいのかしら。
いやでも、元々セセリアはヒロイン
を引き立てるための悪役令嬢だし
今更気にしても仕方がない。
「セセリア様、どうかしました?」
「あ、えっと、今日はなにを食べよう
かな~って考えてたの。」
まったく別の事を考えていた私は
急いでメニューに視線を落とした。
「こんなにメニューがあると迷い
ますよね。アンセル殿下、おススメ
はありますか?」
あら、この子なんて自然に殿下に
話を振るのかしら。
やっぱりただ者じゃないわ。
第一王子という地位はもちろんのこと、
直視を憚られるほど美丈夫な殿下に
貴族の令嬢でもここまで気軽に話し
かけることは出来ないだろう。
「そうだね、日替わりランチもいいけど
バンガーズ アンド マッシュかプラウ
マンズランチがおススメだよ。」
この二人、予想以上にお似合いだわ。
こりゃセセリアがどんなに頑張った
ってダメでしょ。
「そういえば、セセリアの手作り
お菓子をご馳走してくれるって話、
忘れてないよね?」
会話が弾む二人をぼんやり見ていた私に
殿下が話しかけた。
「まさか!忘れてませんよ!」
ウソです。忘れてました…。
そんな話してましたね。
「セセリア様、お菓子を作られるん
ですか?」
新しい話題に興味深々といった表情で
アイリスが私を見た。
「セセリアはお菓子作りの名人だよ。
僕はまだ食べたことないけど、弟の
カインに何度自慢されたことか。」
私が答えるより先に殿下が語り出した。
「あら、どうしてアンセル殿下は
セセリア様の手作りお菓子を食べた
ことがないのですか?」
「カインが独り占めして、僕には絶対
くれなかったんだよ。」
「そうなんですね。私もセセリア様の
手作りお菓子、食べてみたいなぁ。」
二人の視線が痛い…。
アンセル殿下には約束しちゃったし
いつかは作ってあげないとって思って
いたのよね。
この際だから二人一緒にご馳走して
しまおうか…。
どうしようか考えていた私は、この時
ひらめいた。
そうよ!二人の距離を縮めるいい機会
だわ!
「じゃぁ私、お菓子を焼くから今度
みんなでお茶会をしましょう!」
「それはいい考えだね。生徒会専用の
サロンがあるから、場所はそこでいい
よね?」
殿下もすっかり乗り気だ。
「あの…そのお茶会、私も参加して
いいのですか?」
アイリスが不安げに私を見た。
「もちろんよ!私の作ったお菓子、
ぜひ食べてね!」
お茶会は口実で、あなたと殿下を
くっつけるための会ですからね。
むしろいてくれないと困るわ。
「わぁ!楽しみです!私もお手伝い
しますね!」
「ええ、よろしくね!」
さぁ役者は揃ったわ。
私はアイリスとアンセル殿下の仲を
取り持つキューピッドになるわよ!
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