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すれ違い…

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足立と心も身体も…繋がれた!
と思っていたのに。
遠目に彼を見る俺は今、項垂れていた。
最近、どうも足立が遠い気がする。
物理的にも心理的にもだ。
俺のファンを公言してしばらくは、俺の側に居てくれたのに…
この頃、全然隣に来てくれない。
更に、綺麗な女の子達と、なんだか楽しげに話してる…
もしかしたら、俺とのエッチが、全く良くなかったのかなぁ…
経験ゼロの俺は、恥ずかしい行為にも合わせようと必死に応えたのにな。
もしくは、一度やれば満足するタイプなのか…それは無いと思いたいけど。
それとも、やっぱり男だから…ダメだったのかな…
あんなに笑顔で朝を迎えてくれたのは、これで終わりだからっていう義務的な優しさから?
悪い方へとドンドン考えが進んでいく。

「七瀬くん、明日の文化祭、頑張ろうね!」
伊藤さんが声をかけてくれる。
告白と突然のキスには困ったが、最近は、すっかり友達のように接してくれていて、気の置けない感じが助かる。
明日かぁ、俺ちゃんと頑張れるかなぁ…


朝早く登校し、どのクラスもみんなせわしなく動いている。
うちの文化祭は、外の学校からも人が来るので、結構な一大イベントだ。
俺は制服の白シャツの上に裁縫担当の女の子が作ってくれた黒のベストを着込む。ちょっとした、正装になった所へ…
「はい、コレ、ハロウィンだから」
って、猫耳と鈴の首輪に、モフモフのシッポまで渡される。
「え?これ?着けるの?マジ?」
と言ったが、なんか文句あんのか?みたいな女子の笑顔の圧力に負けて、しぶしぶ着ける。
チラリと足立を見ると、首輪のみを着けていた…ズルい、絶対、猫耳は拒否ったんだ。
黒のベストをサラッと着て、髪の毛を片方だけ上げるようにセットして…
とんでもないモデルオーラを解き放ちたる彼は、すでに、人だかりに囲まれ、撮影会が始まっていた。
伊藤さんと数人の女子が、七瀬くん凄く可愛いよ!萌え萌えだね!って言ってくれたが、そんなの全然嬉しく無いしなっ!

文化祭が始まって早々、ウチのクラスの前には長蛇の列が…
足立目当ての女子の群れと熱気がやばい。
喧嘩でも怒りそうな程の、足立をご指名し、なんと順番待ちの女子が50人は居るのでは無いかと…
指名制のカフェでは無かったのに、テーブルに目当ての足立が、来なかった女の子がまた並ぶので、指名制を急遽導入したのだ。

俺は、何故だか…外部の男子やうちの学校の男子から、一緒に写真を!なんて、お願いされる事が多く、無表情のままで、流れ作業のように次々と撮る。
とにかく忙しかった。
メニューは、フルーツサンドとコーヒーと紅茶しか無いから簡単なのに、それでも次々入るオーダーに汗が出てくる。
女子に囲まれながらも、汗一つ無くスマートな対応をする足立を見て…
なんだかめちゃくちゃイライラしていた。

その時、ペロンと…俺のケツを撫でてきたヤツが居た。
「可愛いねぇ~そんな、怖い顔しないでよ、ちょっとシッポ触っただけだよ?」
なんて言うのは、ニヤニヤとゲスい笑みを浮かべる髪色がかなり明るい、ガラの悪そうな2人組だった。
ムカッときたが、ここで言い合いになると、場を悪くする上に、変に他の女子に絡まれても困ると思い、グッと堪えた。
「失礼致します」
と、コーヒーとフルーツサンドを置いて、サッサと退散した。
裏に引くと、伊藤さんが慌てて駆けてきた。

「ごめんねっ!私達がふざけて、シッポとか着けて貰ったから…ホントにごめんっ!」
全力で謝る彼女に
「いいって、俺は男だから…」
大丈夫って言い終わらない内に…
手首をグイっと引かれた。
そのまま…何処かへと連れていかれる。
掴まれた手の先からその人物に目を移すと、足立だった。
は?なんで?

家庭科室を通り抜け、準備室に連れ込まれると、ガチャリと鍵をかける音がした。
「なっ、どして?」 
振り向いた足立は、痛みを抑える様な酷く辛そうな顔だった。 

そういえば、ここは…俺が告白した場所だということが思い出され、一気に顔が赤くなり、俯いてしまう。

「なんで…いつもいつも、オレは間に合わないんだ」
足立から悔しそうな声がして、顔を上げた。
なんだ、俺が触られた事についてか…と、ホッとした。
やっぱり女の子が良いから別れよう…とか言われるんじゃないかって、頭の片隅に引っかかっていたから

「俺はオトコだから、気にしてないよ、ケツ触られたくらいさぁ~」

「オレが気にするんだよっ!!」
強く言われてビクッとなった。
ギュッと抱きしめられ
「ここに触れるのは、オレだけだと思ったのに…」
とイキナリ両尻を撫でられる。
俺は、驚いて彼を押し返すと、なんで?って顔をされた。
あんなに女子に囲まれ嬉しそうだった癖に…なんで、触ったりすんだよ。
俺のなんか、触ってもツマンナイ癖にって、急にイラッとして、プイと横を向く。

「なんか、怒ってる?」
「怒ってない!」
本当は、色々言いたい事があるのに虚勢を張る。
そう…って冷えた目をしたと思うと、俺の両手首を掴み、そのままテーブルに俺を抑え付けた。
前傾姿勢のまま、顔と胸はテーブルに押され、高くなるお尻をわざと魅せつけるみたいな格好になる。

「こんな可愛いお尻にシッポなんか着けるから…」
やめろって!言う前に、ゆっくりと撫で上げられた臀部がヒクと揺れた。
足立の指が首筋から背中を這うと…
そのまま、俺の後ろの窪みに達した。
クルクルとそこばかりを執拗に撫でらる。
「やめろって!」
抗議の声を上げても、聞き入れて貰えず 、執拗さが増しただけ。
一気に…脳裏には、あの晩の事が思い出された。足立に抱かれ、喘ぐ自分を思い出し、ゾクゾクとする下腹。
途端に羞恥心に駆られる。

「犯そうかな」
耳元で囁かれた言葉は、俺が告白した時言われた事とリンクする。
真に迫る本気な声音が、結構怖い。
思ったよりも強いチカラで抑えられているから、抵抗もできない代わりに、動くと前部分が刺激され、途端に甘い声が出てしまう。
「んぁっ、ヤダって」
ここは、廊下側から入ってこられたら、お終いなので…
頭の片隅の冷静な自分が危険だと声を上げる。
俺は止めて欲しくて、ついに本音を吐露する。

「足立さぁ、最近…全然、俺のとこ…来てくれないしっ!女子に囲まれて嬉しそうだしっ…もう、用無しだと思った…ホントは、俺とのエッチなんか、全然良くなかったんだろ?」
途中からは、泣いてしまい、グズグズな言葉が溢れる。

「何言ってんの?七瀬…分かってないなぁ」
歪んで見える彼の蠱惑的な笑みに、身を縮めると、俺の首の鈴が鳴った。
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