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空の雲
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「1年ー!外周ーー!」
部長からの声がかかり、1年の俺達は、外周へと一斉に駆け出した。
校門をくぐり、木々の茂る歩道をリズミカルに走り始める。
日陰と太陽が交互になる歩道は、平坦で意外と走りやすい。
息を弾ませ手足を動かしていると、前方を走るバスケ部のユニフォームが目に入った。
一際背が高く、フォームの整った足立を見つけた。さすが、元陸上部だと思う、走る姿が決まってる。
俺は、スピードをグンと上げた。
追いつき、足立と横並びになって走ると、息継ぎの音が、どちらのか分からない程に混ざった。
いつ気付くかな……って、ドキドキしながら、チラと横を向く。
足立の驚きの顔は、すぐに、美麗な笑顔へと変わる。
「七瀬も、外周?」
「そだよっ!やっぱり、足立だけ走りが違うから、すぐ分かったよ、さすが!元陸部だな!」
「何言ってんだよ!」
照れた足立は、肘で俺を小突いた。
足立が少しだけ触れた腕の場所から、自分の体温が上がり、それが広がって行く感覚になったのが分かった。
なん…でだ?
その時、後ろから追いついて来た、同じ部の榊原が俺に絡んでくる
「あれぇ?七瀬って、足立と仲良かったかぁ?」
腕を肩に乗せてきた。
途端、俺の体温はスルッと下がる。
そう、いつもは…こんな風だ。
別に友達と触れ合う事なんて、慣れてるし、何でも無いコミュニケーションだ。
それなのに、足立が少し…そう、ほんの少しだけ俺に触れただけなのに…異常な程に意識がソコに向いた。
それは、榊原が腕を回してきた事で、如実な程の差を…気付いてしまった。
え?何で?疑問符は消えないが、俺は、足立が美形だから…もしくは、まだ慣れてない間柄だから…って事で、自分を何となく納得させた。
誰でも、綺麗な人には、ドキドキするもんだ!そうそう!ソレソレ!
「コォラ~!1年ー!ちゃんと走れーー!」
鬼部長の叱責の声が、フェンス越しの校庭から響いた。
やっべ、見てたのかよ!
「じゃな!」
俺は、脚に力を入れると、スピードを上げた。
後ろに感じる熱い視線は、俺の思い過ごしだと自分に言い聞かせながら、更にスピードを上げた。
午前中、ガッツリと走り込みをし、やっと休憩が告げられ、俺は校庭の影に腰を下ろした。
スポーツドリンクをガブガブ飲んでから、俯いて下に落ちる汗を眺めていたら、そこに影が落ちる。
顔を上げると、足立が居た。
「横いい?」
笑顔で聞かれて、コクリと頷くと、彼は隣に座った。
「体育館と外、どっちもアチ~よなぁ…蒸し暑いか、普通に陽射しが暑いかの差(笑)!」
「まぁな…言えてる」
何でもない事を話してると、この間の2人で行ったマックが思い出される。
楽しかったなぁ~なんて思って、スッと空を見上げると、雲の形が…
「あっ!あれ!日本列島に見えん?」
指を差したら、クスクスと笑われた。
「いや、北海道どこよ?」
「えー、あの、ちょっと横のさぁ」
俺が、足立の方に身体を傾けて、更に横を指差すと、足立の腕とピタリとくっ付いてしまった。
一瞬ビクッとされた気もしたけど、足立が避ける事も無くて、逆に離すのも変な気がして…
しっとりとした素肌の腕と腕が重なった。
「見えん?」
「え?あ、まぁ…な、見えた」
俺は腕を下ろしたけど、磁石でくっ付いたみたいな、肌が触れ合ったままの2人の腕は…そのままだった。
彼からは、薄い汗の匂いに混じって借りたタオルと同じ、シトラスの香りがした。
それを嗅いでしまい、発熱してしまいそうな程の熱さを感じて、クラクラしてきた俺は、バッと立ち上がる。
「ま、またさ、マックとかさ…行かね?」
足立の方を見ずに…言う。
少しの沈黙が落ちて、やっぱりダメかぁ…なんて思っていたら、彼から
「マックもいいけど…あー、えっと…俺ん家来る?今度さ、良かったらなんだけど」
「え、マジで?!良いんか?行きたい!」
思い切り振り返ると、足立と目が合った。俺の勢いにプッと吹き出された。
「そんなに喜んで貰えて、俺も嬉しいわ」
笑いを抑えながらも、ニヤつく足立に
「だってさ、嬉しいじゃん!友達ん家行くのってさ!しかも、初めてってさ、ワクワクするじゃんかぁ!」
むくれつつも、答えた。
「 じゃ、またLINEするな!」
校庭へと向かう脚は、めちゃくちゃ軽やかだった。
その夜、足立に初めてメッセージを送った。
【初LINEするぞ!おつかれ!】
マックで連絡先交換してて良かったと思った。
すぐに既読が付いたが、返信は無くて、数分待って諦めて携帯を置いた時、メッセージの通知音が鳴った。
【なんか、夢かと思って…七瀬だよな?】
【なんそれ(笑)】
俺って証拠に、ピースサインの写メを送った。
【家宝に致します】
【しなくて良いので、早く遊びに行かせろや(笑)】
【じゃ、今すぐ会いたいな】
ドキッとするLINEを平気で送ってくる。いや待て!友達だろ?変な勘違いするな俺!
どうも、足立とだと、調子が狂う。
ポチポチと文字を打つ。
【いや、もう…寝るし、ほら、俺の写メ、パジャマだったろ?】
【ん?オレの家宝の写メの事かなぁ?】
なんか、こそばゆいやり取りが楽しくて仕方ないんだけど。
終わらないメッセージが続いた。
結局、今週の日曜日にお互い部活が休みだと分かって、その日に決めた。
なんか、友達の家に行くのが、こんな楽しみな事、今まで無かったなぁ…って思いながら、ニヤニヤするのを止められなかった。
部長からの声がかかり、1年の俺達は、外周へと一斉に駆け出した。
校門をくぐり、木々の茂る歩道をリズミカルに走り始める。
日陰と太陽が交互になる歩道は、平坦で意外と走りやすい。
息を弾ませ手足を動かしていると、前方を走るバスケ部のユニフォームが目に入った。
一際背が高く、フォームの整った足立を見つけた。さすが、元陸上部だと思う、走る姿が決まってる。
俺は、スピードをグンと上げた。
追いつき、足立と横並びになって走ると、息継ぎの音が、どちらのか分からない程に混ざった。
いつ気付くかな……って、ドキドキしながら、チラと横を向く。
足立の驚きの顔は、すぐに、美麗な笑顔へと変わる。
「七瀬も、外周?」
「そだよっ!やっぱり、足立だけ走りが違うから、すぐ分かったよ、さすが!元陸部だな!」
「何言ってんだよ!」
照れた足立は、肘で俺を小突いた。
足立が少しだけ触れた腕の場所から、自分の体温が上がり、それが広がって行く感覚になったのが分かった。
なん…でだ?
その時、後ろから追いついて来た、同じ部の榊原が俺に絡んでくる
「あれぇ?七瀬って、足立と仲良かったかぁ?」
腕を肩に乗せてきた。
途端、俺の体温はスルッと下がる。
そう、いつもは…こんな風だ。
別に友達と触れ合う事なんて、慣れてるし、何でも無いコミュニケーションだ。
それなのに、足立が少し…そう、ほんの少しだけ俺に触れただけなのに…異常な程に意識がソコに向いた。
それは、榊原が腕を回してきた事で、如実な程の差を…気付いてしまった。
え?何で?疑問符は消えないが、俺は、足立が美形だから…もしくは、まだ慣れてない間柄だから…って事で、自分を何となく納得させた。
誰でも、綺麗な人には、ドキドキするもんだ!そうそう!ソレソレ!
「コォラ~!1年ー!ちゃんと走れーー!」
鬼部長の叱責の声が、フェンス越しの校庭から響いた。
やっべ、見てたのかよ!
「じゃな!」
俺は、脚に力を入れると、スピードを上げた。
後ろに感じる熱い視線は、俺の思い過ごしだと自分に言い聞かせながら、更にスピードを上げた。
午前中、ガッツリと走り込みをし、やっと休憩が告げられ、俺は校庭の影に腰を下ろした。
スポーツドリンクをガブガブ飲んでから、俯いて下に落ちる汗を眺めていたら、そこに影が落ちる。
顔を上げると、足立が居た。
「横いい?」
笑顔で聞かれて、コクリと頷くと、彼は隣に座った。
「体育館と外、どっちもアチ~よなぁ…蒸し暑いか、普通に陽射しが暑いかの差(笑)!」
「まぁな…言えてる」
何でもない事を話してると、この間の2人で行ったマックが思い出される。
楽しかったなぁ~なんて思って、スッと空を見上げると、雲の形が…
「あっ!あれ!日本列島に見えん?」
指を差したら、クスクスと笑われた。
「いや、北海道どこよ?」
「えー、あの、ちょっと横のさぁ」
俺が、足立の方に身体を傾けて、更に横を指差すと、足立の腕とピタリとくっ付いてしまった。
一瞬ビクッとされた気もしたけど、足立が避ける事も無くて、逆に離すのも変な気がして…
しっとりとした素肌の腕と腕が重なった。
「見えん?」
「え?あ、まぁ…な、見えた」
俺は腕を下ろしたけど、磁石でくっ付いたみたいな、肌が触れ合ったままの2人の腕は…そのままだった。
彼からは、薄い汗の匂いに混じって借りたタオルと同じ、シトラスの香りがした。
それを嗅いでしまい、発熱してしまいそうな程の熱さを感じて、クラクラしてきた俺は、バッと立ち上がる。
「ま、またさ、マックとかさ…行かね?」
足立の方を見ずに…言う。
少しの沈黙が落ちて、やっぱりダメかぁ…なんて思っていたら、彼から
「マックもいいけど…あー、えっと…俺ん家来る?今度さ、良かったらなんだけど」
「え、マジで?!良いんか?行きたい!」
思い切り振り返ると、足立と目が合った。俺の勢いにプッと吹き出された。
「そんなに喜んで貰えて、俺も嬉しいわ」
笑いを抑えながらも、ニヤつく足立に
「だってさ、嬉しいじゃん!友達ん家行くのってさ!しかも、初めてってさ、ワクワクするじゃんかぁ!」
むくれつつも、答えた。
「 じゃ、またLINEするな!」
校庭へと向かう脚は、めちゃくちゃ軽やかだった。
その夜、足立に初めてメッセージを送った。
【初LINEするぞ!おつかれ!】
マックで連絡先交換してて良かったと思った。
すぐに既読が付いたが、返信は無くて、数分待って諦めて携帯を置いた時、メッセージの通知音が鳴った。
【なんか、夢かと思って…七瀬だよな?】
【なんそれ(笑)】
俺って証拠に、ピースサインの写メを送った。
【家宝に致します】
【しなくて良いので、早く遊びに行かせろや(笑)】
【じゃ、今すぐ会いたいな】
ドキッとするLINEを平気で送ってくる。いや待て!友達だろ?変な勘違いするな俺!
どうも、足立とだと、調子が狂う。
ポチポチと文字を打つ。
【いや、もう…寝るし、ほら、俺の写メ、パジャマだったろ?】
【ん?オレの家宝の写メの事かなぁ?】
なんか、こそばゆいやり取りが楽しくて仕方ないんだけど。
終わらないメッセージが続いた。
結局、今週の日曜日にお互い部活が休みだと分かって、その日に決めた。
なんか、友達の家に行くのが、こんな楽しみな事、今まで無かったなぁ…って思いながら、ニヤニヤするのを止められなかった。
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