死んだ母からの贈り物は超不良執事。女垂らしで妖艶な彼と一つ屋根の下で同棲生活

近づく距離 執事お嬢様に興味を持つ

episode10 毎夜届く贈り物 前編

「あの執事がきてから大忙しねー」
と話しかけてくる義妹‥
事実そうなのだ。
義妹の言う事は全く間違っていない。

最近、私の日常に増えた
"夜食作り"
今も朝の食事が一段落して
キッチンを借りている。
（今日はおにぎりにして
パウンドケーキは焼いて寝かせとこ）
シェフに夜の献立を聞くと
和食だというので、
ご飯を少し残してもらうよう頼んだ。
隣で話す義妹に適当に相槌を打ちつつ
パウンドケーキの材料を計量していく

「まぁ‥私は尽くしてくれる人を選ぶわ。
女遊びで不潔じゃない執事。
第一あなたは選ぶことすら
できなかったのよね‥」
それは仕方ないわ。

相手にしないのが面白くないのか
そう言い残し
キッチンを後にした。

ーー毎晩帰ってくるかも分からないのに‥
よくやるわ。
病気といい今までの境遇といい
可哀想な人‥

確かに側から見るとそうかもしれない。
だとしても‥
（ちゃんと食べてくれてるんだもん）

帰りが遅い執事。
外でご飯を食べているかもしれないけど
もしお腹が空いていたら‥
（要らなかったら食べないよね。）
部屋の前にサイドテーブルを設置し
何気なく置いた珈琲とパン。
朝、回収しに行ってみれば
（あ、なくなってる）
テーブルには綺麗に完食された食器が返却されていた。

その日から
おにぎりとお味噌汁
珈琲とパウンドケーキ
シフォンケーキと紅茶
マドレーヌと珈琲
etc...
夜食を置いてみれば
毎朝、必ず食器が返却された。

（今日も食べてくれたんだ‥）
空になってる食器を
石鹸で洗う度、嬉しくなった。

お嬢様のルーティンに
"不良執事の夜食のお世話"
が加わった。

今日は帰ってくるのかな？
女の子と遊んでるとか‥
色々評判の悪いけど

（私は正直‥20歳まで生きられないし。
恋愛対象とかそう言うのは全くないもん。
帰ってきてくれるだけでも嬉しい。）

毎日飽きが来ないように夜食も考える。
1カ月ほど続けるとレパートリーも
増やす必要があって

慣れないパン作りも挑戦した。
（あんまり上手くできてないかもだけど
それでも食べてくれる‥）
彼の存在が温かかった。

ーー今日もいつも通り夜食を置こう
と考えていた。

思いもよらなかった事になるなんて
この時の彼女はまだ知らない。