死んだ母からの贈り物は超不良執事。女垂らしで妖艶な彼と一つ屋根の下で同棲生活

出会い お互いの私生活

episode2 常軌を逸した願い

『俺は！執事よりひつじの方がなるならマシだ！』
『ふふ。君は面白い子ね。』
『なんだよ‥おばさん誰？』
『おばさんってねぇ‥東雲波よ。
執事より羊の方がマシな君に素晴らしい提案をしにきたの。』

天上院家–自分でいうのは気が引けるがかなり名門財閥。
そこに生まれた俺。
幼い頃から何不自由なく暮らしていた。
執事養成所‥『聖ウリエル学園』にぶち込まれるまでは。

『聖ウリエル学園』
表沙汰は選ばれた人間しか通えない超名門校‥
実際は財閥御曹司が執事になり、
どこぞの財閥令嬢を捕まえ結婚し、
財閥を更に繁栄させる。
純粋無垢な学生は知らないだろうが
頭が回る彼は学園の構図に気がついた。

–馬鹿げた構図‥
嫌気がさした俺は
当時かなり荒れていた。

そんな時‥
突如現れたおばさん–東雲波。
茶髪でウェーブがかった長い髪と端正な顔立ち。かわいらしい雰囲気の美女。
‥ふわふわしてるのが財閥っぽくないが‥
東雲財閥–この国では5本の指には入る名門財閥‥知らない奴はいない。

彼女は優しく微笑みながら話を続ける。
『私には娘がいるの。あなた達の誰かが執事に就くことになるわ。』
『で？どこがいい提案なんだ？
結局、執事になるのは変わらないじゃん？』
『まぁまぁ、怒らないで聞いてよ。
うちの子、20歳まで生きられないの。
君みたいにやる気のない執事はうってつけなの。』

‥あほなのか？この女。
自分の娘が死ぬ前提で適当に執事やってくれる奴を探してるって‥
俺にとっては途中で死なれたら好きにできる。確かに都合はいい‥
–話に乗ってやる事にした。

『へぇ‥それはいいかも。』
『悪くないでしょ？
執事ってお嬢様の身の回りの世話もあるじゃない？うちの娘には一切しなくていいわ！なんでも好きな事をしてくれていい。』

‥おもしろいじゃねぇの。
『分かった。じゃあ、形だけお嬢さんの執事やるよ。』
『ありがとう！ただ１つだけお願いがあるの。』
『うちの娘が気に入らなければそれでもいい。ただ、あの子のお友達になってやってほしい。』

かなり真剣な顔つきな女に
知らぬ間に頷いてしまった。
名門財閥は嘘じゃない‥覇気はあるなと感じた。

程なくして
東雲波が亡くなったという訃報と共に
天上家に東雲波の遺産全てが届いたのだ。
家族からも愛想を尽かされていた俺は初めてこの時、家族から感謝されることになった。
流石の俺も彼女の覚悟に驚いた。

おばさん‥あんたの娘に会う日が来た。
契約は‥果たしてやる。