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28、思わぬライバル?
しおりを挟むなんとも言えない空気が漂う中、そこへ「お兄様!シュルク!」と甲高い声が響く。
フワッフワッのレースたっぷりのドレスに、人形みたいな金髪の長い髪。
歳は僕と同じくらいに見えるその少女は、ヴァイツェ王子そっくりな顔でシュゲルク王子の腕に飛び付いた。
「もうっ、わたくしを置いて行くなんて酷いですわ!」
「ええ?リンディは王妃様とお茶会だって言ってたじゃない。まさか途中で抜けて来たんじゃないだろうね?」
「嫌ですわ、王妃様とのお茶会を途中で退席なんて致しません!ちゃんと御開きなってから追い掛けて来ましたわ!」
「ならいいけど…。」
リンディと呼ばれた少女はヴァイツェ王子と話しながらもグイグイと胸をシュゲルク王子に押し付けている。
いや、シュゲルク王子の顔めっちゃ怖いんだけど…この子気付いてないのかな?凄…
僕が呆然としていると、リンディ王女は僕を見て一瞬目を見開くと、次の瞬間シュゲルク王子の腕を引き僕から引き剥がした。
「貴方、どなた?わたくしの騎士に随分馴れ馴れしいわね。名を名乗りなさい。」
「は、私はこの国の見習い騎士をしております、レンファと申します。」
「ふぅん。ただの見習い騎士がなぜわたくしの騎士に纏わりついているの?目障りだからどこかに行ってくれるかしら。」
えぇッ!?
僕この子が救世主に見えるよ!
どっか行っていいの!?
王女らしいし、ここは言うこと聞いて下がっていいよね!?
僕が内心嬉々として下がろうとすると、その手をシュゲルク王子が掴む。
そのままチュッと手の甲にキスされると、それを見ていたリンディ王女がクワッと毛を逆立てた。
「シュルク!!なにをしているの!」
「リンディ、よしなさい。彼らは婚約者なのだよ。お前も散々シュルクに聞かされていただろう?」
「なんですって!?そいつは平民でしょう!?シュルクは貴族ですよ、なんて身の程知らずな!!」
リンディ王女はシュゲルク王子が背を向けている為見えないだろうが、僕を見つめるシュゲルク王子はこめかみにガッツリ青筋が浮いている。
やめなよ~…ちょっと怒らせ過ぎだよ~…
ビクビクしながらシュゲルク王子の怒りを宥めようとこめかみを撫でた僕に一瞬シュゲルク王子の目元が緩んだものの、そこへリンディ王女が僕の手を思いっ切り叩き落とした。
「無礼者!!わたくしの騎士に汚い手で触らないで頂戴!」
「リンディ!!」
か、苛烈~…。
でも魔界のご令嬢もこんな感じだったなぁ…
すっごい既視感。
どうしようか迷いながら目を彷徨わせていると、はたっとファビアン王子と目が合う。
どうも静かだと思ったら護衛に指示してランバを回収していたらしい。
そう言えばすっかり忘れてたわ、すまん。
「ヴァイツェ王子、この様な場所で騒ぎを起こすのは良くないのでは。私達は戻りますので、ヴァイツェ王子も姫が落ち着かれたらお部屋にお戻り下さい。」
そう言って僕に目配せするファビアン王子に近付けば、少し後ろにアーバインが居て「おバカ!」と口パクで僕を罵っている。
うぅーもうこの場で僕の味方はアーバインだけだよー。
無意識にフラフラとアーバインに向かって歩いていると、凝りもせずシュゲルク王子が僕の頬にキスし耳元で囁いた。
「夜会いに行くからな。寝ないで待ってるんだぞ?」
その行動にまたもやリンディ王女が怒りを顕に騒いでいたが、シュゲルク王子はそんな王女を無視して冷めた表情でヴァイツェ王子と話している。
「ちょっと!何よあのイケメン!アンタあの目つき悪い奴が恋人なんじゃなかったの!?」
「そうだよ…僕の愛してるのはベルだけ。うぅ…アーバイン…身分的に断るのが難しい相手の夜の誘いを躱すのってどうしたらいいの…!?」
思わずアーバインに泣き言を漏らすと、ガッと後ろからファビアン王子に肩を掴まれた。
「夜の誘い?レンファ、それはどういう事かな?詳しく話してくれる?」
僕はファビアン王子の圧に思わず顔を引き攣らせながら、コクコクと頷くのだった。
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