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27、冷気が凄い
しおりを挟む「嫌…?何故?」
ポロリと溢れた僕の本音のせいで、ゴォッ音が鳴る程魔力による冷気が吹き付けて来る。
チラッと後ろを確認すればランバは既に気絶して地面に倒れていた。
「そういえば、レンファは竜に付き纏われてるそうだな?今は姿が無いが…どれ、私が探して息の根を止めてこよう。何、竜など所詮獣。狩りのようなものだ。」
ハハハと笑うシュゲルク王子だが、目が笑っていない。
いや、これだいぶ拗らせてるぞ…!
こんな危険人物野放しにしたら僕のベルが危ない!
「せ、せっかく会えたのに、何処かに行っちゃうんですか?まだ側に居てほしいな…なんて?」
顔が引きつるのを俯き加減で誤魔化しながら上目遣いでシュゲルク王子を確認すると、先程とは打って変わり蕩けるような笑みを浮かべている。
「あぁ、すまない…そうだな、私達は久しぶりの逢瀬だ。それなのに、私ときたらレンファの気持ちを考えず…許しておくれ。」
「え…あ、はい。」
ぐいっと腰を抱かれ、ンチュッ、ンチュッと額や頬にキスされ、最後に唇にもキスされた。
あぁ…ベル以外にキスされてしまった…!
と心の中で嘆いていると、シュゲルク王子にペロリと唇を舐められる。
思わずピクリと肩が跳ねると、キュッと抱き締められ耳を柔く噛まれた。
「ん…!」
「相変わらずレンファの唇は柔らかくて気持ち良いな。昔より少し厚くなったか?ずっと口付けていたくなる唇だ…。」
うっとりしながら僕の唇を指でなぞるシュゲルク王子をどうにかせねばと焦っていると、ふとシュゲルク王子の動きが止まり魔力の放流が止まった。
「シュルク。こんな所に居たのかい?探したじゃないか。」
声のした方を向けば、シュゲルク王子と一緒にいた隣国のヴァイツェ王子とやらがファビアン王子を連れてこちらに歩いて来る。
僕がシュゲルク王子から慌てて距離を取ろうとするも、シュゲルク王子は逆に僕の腰を抱き直しそのままヴァイツェ王子の側に歩き出した。
「長くお側を離れて申し訳ありません、殿下。」
「いや、私が許可した事だからいいんだ。ただこれから移動するからそろそろ声を掛けようと思ってね。あれ、もしかしてその騎士は…」
「ええ!私の幼馴染で、婚約者のレンファです。長年遠距離恋愛となっていたのですが、再会した事でお互いもう離れたくないと想いを確認し合っていた所なのです。良い機会なので、このまま帰国の際に連れ帰ろうかと思っております。」
「あぁ、前に話してくれた子ね!シュルクはその子に夢中で国の令嬢たちには目もくれなかったもんねぇ。」
え!?何その設定!?
嘘盛過ぎだよ!!
ここから王子相手にどうやって訂正すりゃいい訳!?
シュゲルク王子の言葉にヴァイツェ王子は一緒になって喜んでいるが、隣のファビアン王子の纏うオーラがどんどんおどろおどろしく変わっていく。
「ファビアン王子、こういう事ですので、彼は我が国に連れ帰っても宜しいでしょうか。」
「…宜しい訳無いでしょう。彼はかなりの実力者で、この国で将来を見込まれているんです。未来の有力騎士をそう簡単に引き抜かれては困りますよ。」
「え?しかし、彼らは婚約者同士なのですから、いずれは結ばれるのですよ?そうなれば、彼は遅かれ早かれ夫であるシュルクのいる我が国へ来る事になる。それとも、ファビアン王子は国の都合で若い二人を引き裂くおつもりで?」
「いいえ、引き裂くなど…。そもそも私は彼からその近衛騎士の話など一度も聞いたことがありません。私達はヴァイツェ王子とその近衛騎士以上に深い関係を築いて居る筈なのですが…何故でしょうね?」
あ、あれ。
なんかヴァイツェ王子とファビアン王子が勝手にバチバチし出しだぞ…?
どうしよ。なんか下手に口出したら墓穴掘りそうだ…。
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