上 下
9 / 12

9、隣国の王子は語ります

しおりを挟む

「昨日はご案内の途中で失礼しました。婚約者が他の男と居たのでついカッとなってしまって。彼が私の婚約者であるレダです。」

「レダです…。昨日は大変失礼致しました…。」

「いや、別に、構わない…」

というか目の前に現れた昨日の青年の憔悴っぷりがやばいんだが。
大丈夫か?

私がチリクをちらりと確認すると、チリクも可哀想なものを見る目で青年を見つめている。

しかし、とんでもなく綺麗な青年だな。
ミルクティー色の髪と大きな瞳に、本当に騎士かと疑いたくなる程染み一つ無い綺麗な肌をしている。

これ、普通に抱けるな。
化粧臭い令嬢よりよっぽど良い。

私が青年をじっと観察していると、ロギルダ王子に気付かれ冷ややかな笑顔で牽制された。

怖っ!

「はは。もしかしてエルウィン王子は男色であられます?今、私のレダに色目を使っておられた気がしますが…」

「とんでもない!私は、断じて、男色などではありません!それに、レダ殿も私の好みとは真逆のタイプゆえ一切琴線に触れませんな!」

私の言葉に地味に傷付いたらしい青年は少し涙目になっていたが、ここで誤解だ!と叫べば更なる誤解を招くだろう。

私はグッと口を引き結ぶと心の中で「すまん…!」と青年に謝りつつ、青年の腰を撫で回すロギルダ王子に視線を戻した。

「おや、そうですか。私はてっきり…」

「てっきり…何です?」

ロギルダ王子がチリクと私を交互に見ながらふっと意味有りげに笑うので、私は嫌な予感がしながらも眉を寄せて言葉の続きを促す。

「いえね、先日から街でエルウィン王子とそちらの従者殿とのお忍びデートが話題になっていたものですから。てっきりお仲間だと思ったまでです。」

「「!!??」」

ま、まさか、あの書店での一部始終が原因じゃあるまいな…!?
何なんだこの国は!男二人で出歩いただけであらぬ疑惑を掛けられるのか!?

私とチルクが青褪めていると、今度はレダと言う青年が私達を憐れみの篭った瞳で見詰めてきた。

いや、私達はこの国を出れば何とかなるが…君は人の事を心配している場合じゃないだろう!

しかし後日、私達が立寄った書店に新たなカップルの艶本が並べられる事となる。
それを聞いた私とチルクは極秘裏にその艶本を入手し、二人揃って見開き二秒で倒れた。

私はこんな恐ろしい国に訪問するのはこれきりでお願いしたい。

欲しいものの為には外堀どころか国ごとガッチリ埋めに掛かるロギルダ王子の手腕にゾッとしながら、私はあのレダという青年が心穏やかに暮らしていけるよう願うばかりであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤリチン無口な親友がとにかくすごい

A奈
BL
 【無口ノンケ×わんこ系ゲイ】  ゲイである翔太は、生まれてこの方彼氏のいない寂しさをディルドで紛らわしていたが、遂にそれも限界がきた。  どうしても生身の男とセックスしたい──そんな思いでゲイ専用のデリヘルで働き始めることになったが、最初の客はまさかのノンケの親友で…… ※R18手慣らし短編です。エロはぬるい上に短いです。 ※デリヘルについては詳しくないので設定緩めです。 ※受けが関西弁ですが、作者は関東出身なので間違いがあれば教えて頂けると助かります。 ⭐︎2023/10/10 番外編追加しました!

言ってはいけない言葉だったと理解するには遅すぎた。

海里
BL
クラスの人気者×平凡 クラスの人気者である大塚が疲れてルームメイトの落合の腰に抱き着いていた。 落合からある言葉を掛けられるのを期待して――……。 もしも高一まで時間が巻き戻せるのなら、絶対にあんな言葉を言わないのに。 ※エロしかないような感じ。 現代高校生の書いてないなぁと思って、チャレンジしました。 途中で大塚視点になります。 ※ムーンライトノベルズ様にも投稿しました。

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

ご主人様に幸せにされた奴隷

よしゆき
BL
産まれたときから奴隷だったエミルは主人に散々体を使われて飽きられて奴隷商館に売られた。そんな中古のエミルをある日やって来た綺麗な青年が購入した。新しい主人のノルベルトはエミルを奴隷のように扱わず甘やかしどろどろに可愛がってくれた。突然やって来た主人の婚約者を名乗る女性に唆され逃げ出そうとするが連れ戻され、ノルベルトにどろどろに愛される話。 穏やかS攻め×健気受け。

男とラブホに入ろうとしてるのがわんこ属性の親友に見つかった件

水瀬かずか
BL
一夜限りの相手とホテルに入ろうとしていたら、後からきた男女がケンカを始め、その場でその男はふられた。 殴られてこっち向いた男と、うっかりそれをじっと見ていた俺の目が合った。 それは、ずっと好きだけど、忘れなきゃと思っていた親友だった。 俺は親友に、ゲイだと、バレてしまった。 イラストは、すぎちよさまからいただきました。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

愛がないと子供ができない世界で、何故あなたと子供ができたんでしょうか?

飛鷹
BL
愛情がない夫婦(夫夫)の間には子供は授かれない世界で、政略結婚をしたマグとキラ。 学生の頃からマグを嫌う様子を見せるキラに、マグはこの政略結婚は長くは続かないと覚悟を決める。 いつも何故が睨んで、まともに会話をしようとしないキラを、マグは嫌いになれなくて……。 子供を授かれないまま3年が経つと離婚ができる。 大切な人がいるらしいキラは、きっと離婚を希望する。その時はちゃんと応じよう。例え、どんなに辛くても………。 両片思いの2人が幸せになるまでのお話。

処理中です...