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9、隣国の王子は語ります
しおりを挟む「昨日はご案内の途中で失礼しました。婚約者が他の男と居たのでついカッとなってしまって。彼が私の婚約者であるレダです。」
「レダです…。昨日は大変失礼致しました…。」
「いや、別に、構わない…」
というか目の前に現れた昨日の青年の憔悴っぷりがやばいんだが。
大丈夫か?
私がチリクをちらりと確認すると、チリクも可哀想なものを見る目で青年を見つめている。
しかし、とんでもなく綺麗な青年だな。
ミルクティー色の髪と大きな瞳に、本当に騎士かと疑いたくなる程染み一つ無い綺麗な肌をしている。
これ、普通に抱けるな。
化粧臭い令嬢よりよっぽど良い。
私が青年をじっと観察していると、ロギルダ王子に気付かれ冷ややかな笑顔で牽制された。
怖っ!
「はは。もしかしてエルウィン王子は男色であられます?今、私のレダに色目を使っておられた気がしますが…」
「とんでもない!私は、断じて、男色などではありません!それに、レダ殿も私の好みとは真逆のタイプゆえ一切琴線に触れませんな!」
私の言葉に地味に傷付いたらしい青年は少し涙目になっていたが、ここで誤解だ!と叫べば更なる誤解を招くだろう。
私はグッと口を引き結ぶと心の中で「すまん…!」と青年に謝りつつ、青年の腰を撫で回すロギルダ王子に視線を戻した。
「おや、そうですか。私はてっきり…」
「てっきり…何です?」
ロギルダ王子がチリクと私を交互に見ながらふっと意味有りげに笑うので、私は嫌な予感がしながらも眉を寄せて言葉の続きを促す。
「いえね、先日から街でエルウィン王子とそちらの従者殿とのお忍びデートが話題になっていたものですから。てっきりお仲間だと思ったまでです。」
「「!!??」」
ま、まさか、あの書店での一部始終が原因じゃあるまいな…!?
何なんだこの国は!男二人で出歩いただけであらぬ疑惑を掛けられるのか!?
私とチルクが青褪めていると、今度はレダと言う青年が私達を憐れみの篭った瞳で見詰めてきた。
いや、私達はこの国を出れば何とかなるが…君は人の事を心配している場合じゃないだろう!
しかし後日、私達が立寄った書店に新たなカップルの艶本が並べられる事となる。
それを聞いた私とチルクは極秘裏にその艶本を入手し、二人揃って見開き二秒で倒れた。
私はこんな恐ろしい国に訪問するのはこれきりでお願いしたい。
欲しいものの為には外堀どころか国ごとガッチリ埋めに掛かるロギルダ王子の手腕にゾッとしながら、私はあのレダという青年が心穏やかに暮らしていけるよう願うばかりであった。
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