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いざ、近隣都市アルデンへ
10 新たな出会い
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ザリガニ型の上級魔獣――ロブスタスは、突然の新手にその両手にある大きな鋏を振り上げ威嚇するようなポーズを取った。周りの小さなエビ型魔獣――パシフェディアは…あっ、来るときに踏み殺しちゃってる。なんかごめんなさい。心の中で一応謝っておく。
そして、ロブストスが振り上げた鋏を見るが魔核のようなものは一つも見当たらない。サラの話では、魔核を砕くか体内から切り離せば魔獣を倒せるらしい。「――ってことは」僕は、腰から「鬼丸」を抜き放ち、その切っ先をロブストスに向かって構える。
その隙に、サラが少女を連れてその場から離れる。これで彼女を気にする必要がなくなった。よしっ!と、僕はじりじりとロブスタスとの間合いを詰める。
「今――!!」だ、と言おうとした刹那、僕の背後からロブストスに向かって一筋の雷線が走った。そしてそれは、ロブストスの右の鋏を跡形もなく貫いた。
「えっ・・・」
僕は、何が起きたのかわからなかった。ただ、ロブストスの鋏が無くなりバランスを崩して倒れたという事実を除いては…
そんな僕に追い打ちをかけるように、「今です!」とサラが叫んだ。僕の『素早さ65』にとって、片方の鋏を失って倒れている敵を倒すのは簡単だった。僕が鋏の付け根の「節」を一気に切断すると、ロブストスはきしむような音を立ててその場に崩れた。これで初めての上級種討伐は無事終了。めでたし、めでたし…というわけにはいかない。
僕は、その場を回れ右して僕に向かって――正確には、僕の向こう側にいた今は亡きロブスタスに向かって右手を大きく突き出す形で待機している少女の元へ向かった。
「はじめまして、大丈夫でしたか?」
僕の問いかけに、彼女は軽くうなずいた。
「助けてくれてありがとう。私はユナ。あなたたちは?」
ロブストスに襲われていた少女――ユナは、口早にそう言った。
「僕はケント。よろしく。」
「サラと申します。」
自己紹介を手短に済ますと、サラがいきなり核心を突いた質問をした。
「ユナ様はなぜこんなところに来られていたのですか?」
「私は、この先にある都市アルデンの商人イーリャン家の娘。私が冒険者になりたいって言ったら、反対されて、出てきたところを襲われた。あと、様はやめて。恥ずかしいから。」
やっぱり、様付けされるのって恥ずかしいよね。えっ、僕?そりゃ恥ずかしいですとも。
「失礼しました。それで、ユナさんはあのイーリャン家の方なのですか?」
「うん。」
サラの問いにユナが軽く答える。
「ケント様、聞きましたか?」
サラが目を輝かせてこちらに振る。あれ、サラってこんなキャラだっけ?
「えっと、ごめん。よくわからないんだけど…あと、僕もやっぱり様はやめてもらえるかな?今さらだけど。」
「失礼しました。口癖なもので…それで、イーリャン家というと、全世界に支店を置く大商家です。ケントさんの装備も『鬼切』を除いてはすべてイーリャン製ですよ。」
よく見ると、僕の胸には盾と、大きな翼を広げたフクロウのシルエットが入っていた。
そういえば、『始まりの村』で見た装備もほとんどこの紋章が付いていたような…
「『鬼切』って何?」
サラが不思議そうな顔で僕に聞いてくる。
「僕の使ってる刀で、秘剣の一つらしいんだけど」
僕は答えながら腰に差した『鬼切』を、鞘ごと抜いてユナに渡した。ユナは、僕から奪うようにひったくると、そのまま刀を抜いたり、陽にあてたりしてぶつぶつ言いながら見ていた。
「やはり、商人の方はすごいですね。」
それに反応するように、若干興奮気味でサラが言った。絶対に本人には言うなよ。と、心の中で思いながら、ふと先ほどの戦闘を思い返した。
そして、ロブストスが振り上げた鋏を見るが魔核のようなものは一つも見当たらない。サラの話では、魔核を砕くか体内から切り離せば魔獣を倒せるらしい。「――ってことは」僕は、腰から「鬼丸」を抜き放ち、その切っ先をロブストスに向かって構える。
その隙に、サラが少女を連れてその場から離れる。これで彼女を気にする必要がなくなった。よしっ!と、僕はじりじりとロブスタスとの間合いを詰める。
「今――!!」だ、と言おうとした刹那、僕の背後からロブストスに向かって一筋の雷線が走った。そしてそれは、ロブストスの右の鋏を跡形もなく貫いた。
「えっ・・・」
僕は、何が起きたのかわからなかった。ただ、ロブストスの鋏が無くなりバランスを崩して倒れたという事実を除いては…
そんな僕に追い打ちをかけるように、「今です!」とサラが叫んだ。僕の『素早さ65』にとって、片方の鋏を失って倒れている敵を倒すのは簡単だった。僕が鋏の付け根の「節」を一気に切断すると、ロブストスはきしむような音を立ててその場に崩れた。これで初めての上級種討伐は無事終了。めでたし、めでたし…というわけにはいかない。
僕は、その場を回れ右して僕に向かって――正確には、僕の向こう側にいた今は亡きロブスタスに向かって右手を大きく突き出す形で待機している少女の元へ向かった。
「はじめまして、大丈夫でしたか?」
僕の問いかけに、彼女は軽くうなずいた。
「助けてくれてありがとう。私はユナ。あなたたちは?」
ロブストスに襲われていた少女――ユナは、口早にそう言った。
「僕はケント。よろしく。」
「サラと申します。」
自己紹介を手短に済ますと、サラがいきなり核心を突いた質問をした。
「ユナ様はなぜこんなところに来られていたのですか?」
「私は、この先にある都市アルデンの商人イーリャン家の娘。私が冒険者になりたいって言ったら、反対されて、出てきたところを襲われた。あと、様はやめて。恥ずかしいから。」
やっぱり、様付けされるのって恥ずかしいよね。えっ、僕?そりゃ恥ずかしいですとも。
「失礼しました。それで、ユナさんはあのイーリャン家の方なのですか?」
「うん。」
サラの問いにユナが軽く答える。
「ケント様、聞きましたか?」
サラが目を輝かせてこちらに振る。あれ、サラってこんなキャラだっけ?
「えっと、ごめん。よくわからないんだけど…あと、僕もやっぱり様はやめてもらえるかな?今さらだけど。」
「失礼しました。口癖なもので…それで、イーリャン家というと、全世界に支店を置く大商家です。ケントさんの装備も『鬼切』を除いてはすべてイーリャン製ですよ。」
よく見ると、僕の胸には盾と、大きな翼を広げたフクロウのシルエットが入っていた。
そういえば、『始まりの村』で見た装備もほとんどこの紋章が付いていたような…
「『鬼切』って何?」
サラが不思議そうな顔で僕に聞いてくる。
「僕の使ってる刀で、秘剣の一つらしいんだけど」
僕は答えながら腰に差した『鬼切』を、鞘ごと抜いてユナに渡した。ユナは、僕から奪うようにひったくると、そのまま刀を抜いたり、陽にあてたりしてぶつぶつ言いながら見ていた。
「やはり、商人の方はすごいですね。」
それに反応するように、若干興奮気味でサラが言った。絶対に本人には言うなよ。と、心の中で思いながら、ふと先ほどの戦闘を思い返した。
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