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第8章 美奈子と拓也

第39話 インスタンスダンジョン

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 ギギギギ…

 パタン

【イベントが開始されました。アバター『ミリアナ・レインフォール』の攻撃装備が『双剣ヒュギエイア』に、『ヘラルド・ミストライブラ』の攻撃装備が『長杖アスクレピオス』に変更されました】

「装備の名前が分かりづれえ。双剣とロッドでいいよな」
「せっかく運営スタッフが苦労して考えたのに…」
「そうなのか?」

 せめて、後で検索してあげてね、拓也くん。

 インスタンスダンジョンのようで、他のアバターはいない。とりあえず、私はフードを脱ぎ、ヘラルドは仮面を取る。

 きゅいっ

「なんだ、ホーンラビットか」
「かわいいねー」
「当たれば痛いツノがなあ。『ファイヤーボール』!」
「いきなりヒドい!」
「まあ、見てみな」

 ぼうっ…しゅんっ

 きゅきゅい!

「あれ、炎が消えた…わわっ、ツノを突きつけてきた!」
「姉さん、双剣で切り刻んでみてくれよ」
「かわいいけど…えいっ」

 しゅっ
 ざっ

 きゅい?
 きゅ!

「あっと…! 当てても傷ひとつ付かないね」
「同時発動って、どういうタイミングなんかな」
「私が前衛で、ヘラルドが後衛?」
「なのかね。まあ、やってみるか。姉さん、とりあえずもう一度攻撃よろしく」
「わかった!」

 タッタッタッ…
 しゅばっ

「『氷結アブソリュート』!!」

 ひゅっ…
 カチン

「固まった…えいっ」

 パリンッ

「ん、倒せたな。ソロ討伐ができないってだけか?」
「でも、凍ったウサギさんは私が剣でつついたら割れちゃったよ。南無」
「よくわからん…。とりあえず、ふたりで連続攻撃していくか」
「そだね」

 てくてくてく

「あ、ゴブリン」
「『ファイヤーボール』!!」

 ごうっ

「相変わらず容赦ないね。ふんっ!」

 しゅばっ
 ざくっ

 くぎゃー!

「姉さんもな」
「オークよりはマシなんだけどねえ」
「フラグ立てんなよ。ほら、早速オークが」
「エルフの敵! はあっ!」

 ひゅっ!
 すぱっ

「で、すかさず…『氷槍アイススピア』!!」

 ぶすっ
 がすっ

 ぴぎゃー!

「やっぱり、連続攻撃でいいみたい」
「剣士と魔導士の組合せだから、やりやすいのかもな」
「だね。鍛冶スキルや付与魔石が使えないのは残念だけど。生産職のみだと、どうなるんだろ?」
「そもそも、こんなイベント参加しねえ」
「あー、偏見だー」
「姉さんは別。そもそもエルフじゃねえか」
「ドワーフだって、戦っていいと思うんだー」
「姉さん、間違っても『コナミ・サキ』の姿で本格的に戦うのはやめてくれよ?」
「しないよ。アレが邪魔だもん」
「相変わらず、わかってるようでわかってないな…」



 順調に魔物を倒していく私達。確かにカップル限定っぽいイベントだけど、難易度は高くないみたいだ。

「また、マッドハニービーの大群…」
「このゲームのハニービーって、なんで少女型なんだろね?」
「運営の趣味だろ。なんか、並木なみきに似てるし」
「いや、さすがにそこまで公私混同は…しそうだなあ、あの会社なら」
「だろ?」

 リナちゃん本人が見たら喜びそうなんだよね、なぜか。

「じゃあ、また私が避けながら次々と切っていくから、その順番で攻撃魔法をお願い」
「おう」

 さくっ
 ひょいっ
 ぼっ

 ぴぎゃー!

 しゅっ

 …
 ……
 ………

「お、終わった…。何度、特級魔法陣発動したかったことか…」
「私も、『シャイニー・レイン』でまとめて吸収したかった…。それか、暴発エンチャントの魔石の投下」
「ヌルすぎても辛いってことか。怪獣捕獲の方がよっぽど楽だったぜ。さて…」

 いかにもな大きな扉の間に到着した私達。おそらく、ラスボス部屋に通じるのだろう。

「でかいな。一緒に開けようぜ」
「そだね。んしょっと…」

 ギギギギギギ…

「よし、開いた。ん、アレがラスボス…え?」
「うわあ、そう来たかあ」

 そこには、私達にそっくりなNPCがふたり。しかも、『ミリアナ・レインフォール』と『ヘラルド・ミストライブラ』にそっくりなわけではない。

 『霧雨美奈子』と『霧雨拓也』にそっくりなふたりなのだ。
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