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第6章 並木リナ
第30話 ゲームを続ける理由
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土曜日午後の、フォークロア・コーポレーション本社。
「ということで、美奈子さん、休みましょう!」
「り、リナちゃん!? え、えっと、これからミーティングなんだけど…」
「私がユリシーズさんに言って、キャンセルさせました!」
「えええ…」
何言ってるのこの娘? 頭大丈夫? みたいな顔をされた。確かに、いきなりこんなことを言ったら当たり前かもだけど、ちょっとショック。
しかたがないので、事前に打ち合わせたユリシーズさんを召喚する。
「リナさんの言うとおり、今日は休みにしましょう。この間の連続『出動』の際に、いろいろと情報交換しましたし。例の懸念事項は急ぐものではありませんし、またの機会に」
「ユリシーズさんが、そう言うなら…」
あー、あーあーあー、今度はワーカホリックの顔だー。きっと『だったら、ここでフルダイブ装置を借りて、いざという時のための「暴発」エンチャントの魔石を大量生産して…』なーんて、考えているに違いない!
「…なーんて、考えてませんよね?」
「え、な、なに?」
「ミリアナの防衛戦なんて、『魔剣レインフォール』と通常スキル付与だけでいけますよね? 『暴発』エンチャントの魔石なんて、私との戦闘を除けば、それこそ『緊急クエスト』くらいにしか使いませんよ?」
「…」
図星だったようだ。本当に、もう。
「美奈子さん、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』は緊急クエストのためだけのシステムじゃないですよ? もともとなんのために始めたか、忘れちゃいました?」
「そ、それは、拓也くんと、一緒に…」
「また、すれ違っちゃってもいいんですか?」
「え…」
あ、悲しい顔に…って、絶望的なまでの顔になっていく!? は、話を、話を穏便な方向にしていかないと!
「み、美奈子さんは、なぜ最終クエストをクリアしようと思ったんですか?」
「…え? えっと、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』の最大の目的だったから…」
「でも、美奈子さんは、クリアした後も楽しんでますよね? 『現界』を抜きにしても」
「そう…だね…」
腑に落ちたような顔をする美奈子さん。よし、もうちょっと!
「美奈子さんって、最終クエストをクリアしたら、霧雨くんにミリアナの正体を明かすつもりだったんじゃないんですか?」
「…うん、そう、だったと思う。というか、『ミリアナ』に作り変えたのも、拓也くんに合流するためだったから…」
で、たまたま『魔剣レインフォール』を獲得してワールドアナウンスで変に有名になって、霧雨くんに言い出せなくなっちゃったと。悪循環だなあ。
「そして今度は『現界』能力のせいで言えなくなったと。美奈子さんが、『緊急クエスト』にハマっているのも…」
「…かもね。クエストクリアをひたすら進めば、その先に、拓也くんがいるような気がして」
「拓也くんも『緊急クエスト』に関わるようになっていますから、あながち間違いでもないですけど」
「ユリシーズさんは黙ってて」
「はい」
霧雨くんまでワーカホリックにさせてどーすんの。
「でも、今日は拓也くん、ギルメンと領地開発を進めるって言ってたけど。リナちゃんはいいの?」
「私は、戦闘メイドと同じく前衛ですから。そういう意味では、霧雨くん…ヘラルドもですけど」
「ああ…」
そういえば、クラスメートのふたりも美奈子さんに話したって言ってたよね。覚えていたようだ。
「じゃあ、どうしようかな。家に戻って、拓也くんが好きなお菓子でも作ろっかな…」
「それもいいですけど…。『いつかミリアナの正体を明かす』ためのその1、を進めてみてもいいと思うんですよ」
「たとえば?」
「たとえばですね、私が美奈子さんの代わりに『緊急クエスト』をバンバンこなすとか!」
「…はい?」
バンバンこなすんだからね!
「ということで、美奈子さん、休みましょう!」
「り、リナちゃん!? え、えっと、これからミーティングなんだけど…」
「私がユリシーズさんに言って、キャンセルさせました!」
「えええ…」
何言ってるのこの娘? 頭大丈夫? みたいな顔をされた。確かに、いきなりこんなことを言ったら当たり前かもだけど、ちょっとショック。
しかたがないので、事前に打ち合わせたユリシーズさんを召喚する。
「リナさんの言うとおり、今日は休みにしましょう。この間の連続『出動』の際に、いろいろと情報交換しましたし。例の懸念事項は急ぐものではありませんし、またの機会に」
「ユリシーズさんが、そう言うなら…」
あー、あーあーあー、今度はワーカホリックの顔だー。きっと『だったら、ここでフルダイブ装置を借りて、いざという時のための「暴発」エンチャントの魔石を大量生産して…』なーんて、考えているに違いない!
「…なーんて、考えてませんよね?」
「え、な、なに?」
「ミリアナの防衛戦なんて、『魔剣レインフォール』と通常スキル付与だけでいけますよね? 『暴発』エンチャントの魔石なんて、私との戦闘を除けば、それこそ『緊急クエスト』くらいにしか使いませんよ?」
「…」
図星だったようだ。本当に、もう。
「美奈子さん、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』は緊急クエストのためだけのシステムじゃないですよ? もともとなんのために始めたか、忘れちゃいました?」
「そ、それは、拓也くんと、一緒に…」
「また、すれ違っちゃってもいいんですか?」
「え…」
あ、悲しい顔に…って、絶望的なまでの顔になっていく!? は、話を、話を穏便な方向にしていかないと!
「み、美奈子さんは、なぜ最終クエストをクリアしようと思ったんですか?」
「…え? えっと、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』の最大の目的だったから…」
「でも、美奈子さんは、クリアした後も楽しんでますよね? 『現界』を抜きにしても」
「そう…だね…」
腑に落ちたような顔をする美奈子さん。よし、もうちょっと!
「美奈子さんって、最終クエストをクリアしたら、霧雨くんにミリアナの正体を明かすつもりだったんじゃないんですか?」
「…うん、そう、だったと思う。というか、『ミリアナ』に作り変えたのも、拓也くんに合流するためだったから…」
で、たまたま『魔剣レインフォール』を獲得してワールドアナウンスで変に有名になって、霧雨くんに言い出せなくなっちゃったと。悪循環だなあ。
「そして今度は『現界』能力のせいで言えなくなったと。美奈子さんが、『緊急クエスト』にハマっているのも…」
「…かもね。クエストクリアをひたすら進めば、その先に、拓也くんがいるような気がして」
「拓也くんも『緊急クエスト』に関わるようになっていますから、あながち間違いでもないですけど」
「ユリシーズさんは黙ってて」
「はい」
霧雨くんまでワーカホリックにさせてどーすんの。
「でも、今日は拓也くん、ギルメンと領地開発を進めるって言ってたけど。リナちゃんはいいの?」
「私は、戦闘メイドと同じく前衛ですから。そういう意味では、霧雨くん…ヘラルドもですけど」
「ああ…」
そういえば、クラスメートのふたりも美奈子さんに話したって言ってたよね。覚えていたようだ。
「じゃあ、どうしようかな。家に戻って、拓也くんが好きなお菓子でも作ろっかな…」
「それもいいですけど…。『いつかミリアナの正体を明かす』ためのその1、を進めてみてもいいと思うんですよ」
「たとえば?」
「たとえばですね、私が美奈子さんの代わりに『緊急クエスト』をバンバンこなすとか!」
「…はい?」
バンバンこなすんだからね!
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