上 下
62 / 106
第1章 ライナ・アセトアルカナ

第2話 予想外

しおりを挟む
 翌日。運動会当日の日曜日。

 両親は朝から普通に仕事で出勤し、拓也も平日と同じ時間に登校した。
 ちなみに、拓也の通う中学は、市内の自宅最寄りなので、歩いて15分と近い。

 そして、運動会自体は準備の関係で始まるのが10時過ぎと遅く、外来関係者が参加するなら、開始時刻に間に合うように到着すればいい。

「用は足した、ストレッチはした、部屋の温度湿度も問題なし、鍵もかけた。よし、準備おっけー!」

 というわけで、土曜日午前恒例の『現実世界でアバター生活』を、今回もお昼を挟んで数時間ほどこなすことにしたわけだ。とにかく便利なのよ。特に、転移とアイテムボックス。今回は張り切って作ったからね、重箱が重いよ!

 フルダイブ装置を付け、ベッドに横たわる。

「では、あらためて。受諾せよアクセプト遥かなる大地への旅路をファラウェイ・ワールド

 ぶおんっ

「よし、ログイン成功。このままマイホームで、外見を『コナミ・サキ』に切り替えて、現実世界の自宅の自室に転移っと。慣れたものよねえ」

 ほとんど毎週やっているので、すっかりルーチンワークだ。『フォークロア・コーポレーション』での打合せも含めて。昨日は、早く帰って今日のお昼作りたかったから、超特急で資料に目を通したよ! 緊急クエストが入らなかったのは僥倖である。

 ピッピッ

現実世界Real Worldの『自宅・自室』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】

 〔はい〕を、押す。

 ひゅんっ

「はい、今日の私の本体もベッドでぐっすり眠ってるね。って、さっさとアイテムボックスにお弁当詰め込まなきゃ」

 がちゃっ

 たったったった

「よいしょっと…」

 ピッピッ

 …ふっ

「詰め込み完了っと。そういえば、異世界モノよろしく、このアイテムボックスも時間停止してくれるのよね。どんな原理なんだか…」

 ピンポーン

「えっ、こんな時に誰か訪ねてきたの? 早く出かけたいのに…」

 ぱたぱた

「はい、どちらさまで…」
「やあ、ミナ」
「ま、前島まえじまさん!?」

 玄関の扉を開けると、クラスメートの前島まえじま優希ゆうきさんが立っていた。

「えっと、何か御用? 昨日、学校でも言ったけど、私、これから…」
「うん、拓也くんの学校の運動会に参加するんだよね。ボクも行くよ」
「えええっ!?」

 なんで?

「「「、私達も参加するわ!」」」

 え、本当に、なんで?

 約束もしていない前島さんもそうだけど、前島さんがマスターのギルド『新緑の騎士団』メンバーである三人娘のみなさまがここにいるのは、どうにも理解不能である。

「あのう、もしかして、またストー…」
「ち、違うよ!? そんなのだったら、こうして目の前に出ないでしょ!」
「け、決して、ギルマスの様子が変だったから縛り上げて便乗しようかとか決して」
「そうそう! 重箱が何段重ねか楽しみだなあなんて、そんなことこれっぽっちも!」

 うん、とりあえず、なぜ重箱のこと知ってるか、教えてくれないかなあ?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...