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第1章 ライナ・アセトアルカナ

第1話 弟の活躍

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 土曜日夕方の自宅。
 台所でいろいろと絶賛張り切り中の私である。重箱があってよかったよー。

「じゃあ、明日のお昼御飯は、拓也たくやの分も後から持っていくね。手ぶらで学校に行けるよ!」
「ああ、うん、それはありがたいけど…。美奈子みなこ姉さん、本当に来るのか?」
「行くよ? お父さんとお母さんは仕事が入っちゃってるし、私は明日は特に用事がないし」

 強いて言うなら、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』での領地防衛戦を申し込まれているが、まあ、PvP時間を夜にしてもらえばいいよね。相手のパーティ構成を見る限り、たぶん今度も瞬殺できるだろうし。うん。

「いやでも、中学の運動会に参加する家族って、ほとんどいないからさ、その…」
「えっと…私が見に行くの、イヤ?」
「うっ…。そ、そういうわけじゃ、ないんだけど…」

 イヤ…なのかな、拓也。今年はせっかく都合がつく日程なんだし、ぜひ参加したいんだけど。

「拓也、運動得意だったよね? 結構活躍できるんじゃないの?」
「べ、別に、恥ずかしいところを見られるのがイヤっていうわけじゃなくて…」
「それならいいじゃない。もうこうして、私の分も下ごしらえしちゃったんだし」
「はあ…。わかったよ。来てもらいたくないわけじゃないからさ」

 …なんて。拓也が言いたいことは、わかってるんだけどさ。つまりは、ええと…『私を学校の友達とかに見られたくない』ってことなわけだ。身内が恥ずかしいとかいう、思春期特有の理由でもなく。いや、思春期関係ありまくりか?

 でも、私がわかるって顔で話を進めるのもおかしいのよ。その…『新緑の騎士団』のあれやこれやの実態とか、偽装アバター『コナミ・サキ』の外見がリアルの私そっくりだとどんな問題があるのかとか、そういうのを私自身がよくわかってるような素振りをするのと同じで、なんというか…なんというか、なのよ。

 くっ、せめてこの、普段何も役に立たないばかりか、邪魔で邪魔でしょうがない、目立つしか能のないコレとコレをどうにかできれば…! 口には出さないよ? 口に出したら負けだから!

「そ、そういえば、拓也の参加種目は?」
「えっと…個人だと100m走、クラス対抗では体育館でバレー、かな」
「運動会っていうより、体育祭だね。そっか、中学だもんね」
「まあな。祭りと言えるほどのものじゃないけど」
「そうだけど、でも、拓也が活躍できそうなものばかりじゃない。だからさ…」

 だから、

「…私が、見たいんだよ。拓也の活躍を、さ」
「姉さん…」

 …うふふふ。ちょっと、いい雰囲気。

 うふふふふふふふ。

「…私達も、いるんだがな」
「夕食と併せて作るっていうから、こうして台所で待ってるのにねえ…」
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