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第7章 霧雨拓也
第55話 鑑定
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正直に言おう。今の私は、とんでもなく混乱している。
そりゃあそうだろう。真偽はともかく、私自身の素性が根本から揺らいでいると言われているのだ。それも、弟である拓也に。こんなことを、冗談か何かで他人に喋る性格ではない。それは、私がよく知っている。
あとは、あの両親と血がつながっていないってのも、それはそれでショックである。もちろん、私にとっての両親が、あの両親であることに変わりはないのだが。
…実のところ、もうひとつ、動揺しまくっていることがある。これまでの話から類推して言えることについてというかなんというか…。いや、これはある意味、問題の本質ではない。いろんなことがはっきりしてから考えることにしよう。うん。
「で、どうなんだ? さっき言った、現実世界の人間を『鑑定』するってやつ。それで、こっそり姉さんを…ミリアナ?」
…
「…おい、ミリアナ!」
「…ふえ? あ、ああ、そ、そうね、そうそう…」
私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、…
「…ごめんなさい。えっと、なんだっけ…ああ、そうそう、『鑑定』ね、うん」
「大丈夫か? いやまあ、こんな変な話を聞かされて、しかもそれが知り合いのことって言われたからな、びっくりして当然か」
「…というか、ヘラルド…あなたは、ずいぶん落ち着いているのね」
「両親に初めて聞いた時は、当然びっくりしたさ。でも、いろいろ考えて、思い切って元の両親の住んでいたところに行って、いろいろ確認して…今は、状況として客観的に受け止めている。そして…姉さんのことを、考えている」
…そっか、中学に入ってからの拓也の変化って、今回のことも関係しているのかな。
「えっと、『鑑定』よね。…まずは、試してみる? ヘラルド…拓也くんに対して」
「…え?」
◇
「…ログアウト、できた?」
「あ、ああ。…確かに、俺の部屋だな。アンタが目の前にいることに、ものすごい違和感があるけど」
「じゃあ、フルダイブ中だったけど、あなたの『鑑定』結果見る?」
「ああ」
ふっ
【氏名】霧雨拓也
【生年月日】2XXX年XX月XX日
【HP】120/128
【MP】0/0
【スキル】なし
「…これだけ? ていうか、HPとかMPとかって」
「現実の本体は、魔法も何も使えないからね。HPとMPはRPGの基礎データだから」
「むう…。じゃあ、早速、姉さんを…あ、今、姉さんもフルダイブしてるんだ。自室で鍵かけて」
「私は転移できるから関係ないけどね。一緒に行く?」
「…行く。姉さんには内緒な」
「はいはい」
ピッピッ
ふわっ
「はい、到着」
「お、おう。あ、姉さん…」
「…イタズラしちゃダメだよ?」
「しねーよ! 早くやってくれよ」
「おっけー。『鑑定』」
ぶんっ
「…あっ」
「なんだ? 俺にも見えるようにしろよ!」
「えっと…ごめん、見せられない」
「なんでだよ! さっき俺自身のは見せてくれたじゃねえか!」
「そ、そうなんだけど…えっと、本人に許可をもらってからにしたいんだけど」
「…わかった。後で姉さんに聞くよ。あ、『試しにやってみた』ってことにしろよ?」
「わかってるよ。じゃあ、私はゲーム内に戻るね。コナミに伝えるから」
「ああ。あ、俺は外に出るから、中から鍵かけてから戻ってくれ」
「そうだね、内緒だもんね」
「うっ…。じゃ、じゃあ」
とてとてとて
がちゃ
ばたん
…かちゃっ
「…何が表示されたんだ?」
◇
…よし、ログアウト完了っと。
あまり長引いてもあやしまれるからね、さっさと拓也を訪ねよう。
がちゃ
とてとてとて
コンコン
「…姉さん?」
「うん。ミリアナから聞いたよ。入っていい?」
「あ、ああ」
がちゃっ
「もー、急にミリアナが私のマイホームに来るから、何事かと思ったよ」
「あ、ああ、悪いな。俺が頼んだんだ」
「聞いてるよ。ミリアナの魔法の『現界』について調べてるんだって?」
「ま、まあな。…で、姉さんの『鑑定』の結果はどうだったんだ?」
「スクリーンショットをもらったよ。携帯端末で上からスクロール表示させるね」
ぴっぴっ
【氏名】霧雨美奈子
「…名前だな」
「そうだね」
【生年月日】2XXY年ZZ月YZ日
「…普通だな」
「うん」
【HP】131/153
【MP】0/0
「え、俺よりHP多いの?」
「みたい。どういうわけかわからないけど」
「ふーむ…。MPは同じく0だな」
「じゃあ、次。これを見て、ミリアナは私の許可が必要って思ったみたい」
【BWH】…
「うわああああ!? いい! それは見せなくていいから!」
「そう? 鑑定レベルが上位だと、女性アバター間でわかるらしいんだけど」
「そ、そうなのか…。つ、次! 次を見せろよ!」
「これで終わりだよ」
「へ?」
「おしまいだよ」
「そうか…。なんだよ、結局意味なかったのかよ…」
「なんだったの?」
「いや、なんでもない。じゃあ、もういいから」
「ふーん…。あ、今日のお昼は拓也が当番だよ?」
「ああ、わかってる」
「それじゃ、またね」
パタン
とてとてとて
がちゃ
バタン
「…ステータス偽造ででっち上げたけど、これは見せられないわあ…」
【氏名】ミリアナ・レインフォール
【生年月日】(鑑定対象外)
【HP】22009070/22100000
【MP】331149098/342049000
【スキル】現界、火炎魔法、氷結魔法、…
【装備】魔剣レインフォール、…
「なんで、アバターの方なの…?」
そりゃあそうだろう。真偽はともかく、私自身の素性が根本から揺らいでいると言われているのだ。それも、弟である拓也に。こんなことを、冗談か何かで他人に喋る性格ではない。それは、私がよく知っている。
あとは、あの両親と血がつながっていないってのも、それはそれでショックである。もちろん、私にとっての両親が、あの両親であることに変わりはないのだが。
…実のところ、もうひとつ、動揺しまくっていることがある。これまでの話から類推して言えることについてというかなんというか…。いや、これはある意味、問題の本質ではない。いろんなことがはっきりしてから考えることにしよう。うん。
「で、どうなんだ? さっき言った、現実世界の人間を『鑑定』するってやつ。それで、こっそり姉さんを…ミリアナ?」
…
「…おい、ミリアナ!」
「…ふえ? あ、ああ、そ、そうね、そうそう…」
私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、私はミリアナ・レインフォール、…
「…ごめんなさい。えっと、なんだっけ…ああ、そうそう、『鑑定』ね、うん」
「大丈夫か? いやまあ、こんな変な話を聞かされて、しかもそれが知り合いのことって言われたからな、びっくりして当然か」
「…というか、ヘラルド…あなたは、ずいぶん落ち着いているのね」
「両親に初めて聞いた時は、当然びっくりしたさ。でも、いろいろ考えて、思い切って元の両親の住んでいたところに行って、いろいろ確認して…今は、状況として客観的に受け止めている。そして…姉さんのことを、考えている」
…そっか、中学に入ってからの拓也の変化って、今回のことも関係しているのかな。
「えっと、『鑑定』よね。…まずは、試してみる? ヘラルド…拓也くんに対して」
「…え?」
◇
「…ログアウト、できた?」
「あ、ああ。…確かに、俺の部屋だな。アンタが目の前にいることに、ものすごい違和感があるけど」
「じゃあ、フルダイブ中だったけど、あなたの『鑑定』結果見る?」
「ああ」
ふっ
【氏名】霧雨拓也
【生年月日】2XXX年XX月XX日
【HP】120/128
【MP】0/0
【スキル】なし
「…これだけ? ていうか、HPとかMPとかって」
「現実の本体は、魔法も何も使えないからね。HPとMPはRPGの基礎データだから」
「むう…。じゃあ、早速、姉さんを…あ、今、姉さんもフルダイブしてるんだ。自室で鍵かけて」
「私は転移できるから関係ないけどね。一緒に行く?」
「…行く。姉さんには内緒な」
「はいはい」
ピッピッ
ふわっ
「はい、到着」
「お、おう。あ、姉さん…」
「…イタズラしちゃダメだよ?」
「しねーよ! 早くやってくれよ」
「おっけー。『鑑定』」
ぶんっ
「…あっ」
「なんだ? 俺にも見えるようにしろよ!」
「えっと…ごめん、見せられない」
「なんでだよ! さっき俺自身のは見せてくれたじゃねえか!」
「そ、そうなんだけど…えっと、本人に許可をもらってからにしたいんだけど」
「…わかった。後で姉さんに聞くよ。あ、『試しにやってみた』ってことにしろよ?」
「わかってるよ。じゃあ、私はゲーム内に戻るね。コナミに伝えるから」
「ああ。あ、俺は外に出るから、中から鍵かけてから戻ってくれ」
「そうだね、内緒だもんね」
「うっ…。じゃ、じゃあ」
とてとてとて
がちゃ
ばたん
…かちゃっ
「…何が表示されたんだ?」
◇
…よし、ログアウト完了っと。
あまり長引いてもあやしまれるからね、さっさと拓也を訪ねよう。
がちゃ
とてとてとて
コンコン
「…姉さん?」
「うん。ミリアナから聞いたよ。入っていい?」
「あ、ああ」
がちゃっ
「もー、急にミリアナが私のマイホームに来るから、何事かと思ったよ」
「あ、ああ、悪いな。俺が頼んだんだ」
「聞いてるよ。ミリアナの魔法の『現界』について調べてるんだって?」
「ま、まあな。…で、姉さんの『鑑定』の結果はどうだったんだ?」
「スクリーンショットをもらったよ。携帯端末で上からスクロール表示させるね」
ぴっぴっ
【氏名】霧雨美奈子
「…名前だな」
「そうだね」
【生年月日】2XXY年ZZ月YZ日
「…普通だな」
「うん」
【HP】131/153
【MP】0/0
「え、俺よりHP多いの?」
「みたい。どういうわけかわからないけど」
「ふーむ…。MPは同じく0だな」
「じゃあ、次。これを見て、ミリアナは私の許可が必要って思ったみたい」
【BWH】…
「うわああああ!? いい! それは見せなくていいから!」
「そう? 鑑定レベルが上位だと、女性アバター間でわかるらしいんだけど」
「そ、そうなのか…。つ、次! 次を見せろよ!」
「これで終わりだよ」
「へ?」
「おしまいだよ」
「そうか…。なんだよ、結局意味なかったのかよ…」
「なんだったの?」
「いや、なんでもない。じゃあ、もういいから」
「ふーん…。あ、今日のお昼は拓也が当番だよ?」
「ああ、わかってる」
「それじゃ、またね」
パタン
とてとてとて
がちゃ
バタン
「…ステータス偽造ででっち上げたけど、これは見せられないわあ…」
【氏名】ミリアナ・レインフォール
【生年月日】(鑑定対象外)
【HP】22009070/22100000
【MP】331149098/342049000
【スキル】現界、火炎魔法、氷結魔法、…
【装備】魔剣レインフォール、…
「なんで、アバターの方なの…?」
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