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第5章 ユリシーズ・フォークロア
第39話 国家システム
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ユリシーズさんの言った通り、3日後に大型アップデートが行われた。ミリアナとしての私にとっては、最終クエストをクリアした後のゲーム攻略方針を決める、重要なアップデートだ。
「やっぱり『国家』システムが導入されたね。エリア23の湖畔沿いの街がいいかなあ」
「姉ちゃん、そこの領主になりたいのか?」
「そういうわけじゃないけど、ミリアナの次の方針が『一騎当千・専守防衛』なのよ」
「なんだ、それ?」
「文字通りの意味だよ。国の戦力は、ミリアナひとり。それで、国を守り、維持する」
国家システムは、ゲームとしては、領地間の勢力争いを前面に出したものだ。今までは運営が直轄管理していた街や村を、ユーザに委ねる。具体的には、門番や衛兵を含む警察権限、店舗や農地の設置を許認可する行政権限などを含む内政権が獲得できる。罰金や税収はそのままユーザに入り、勢力争いは、宣戦布告から始まるPvPで内政権をかけて戦うことによって行われる。
領主は、ユーザひとりでもいいし、パーティやギルドでもいい。また、警察権限や行政権限を執行するのも、ユーザがやってもいいし、NPCにやらせてもいい。ただし、NPCの場合はお金を払って雇わなければならない上に、AIゆえに決まりきった役割しか果たさない。ギルド単位で国家運営するなら、何から何までユーザアバターがやった方がいいだろう。
「街や村の単位とはいえ、それを全部ひとりでやるってのか…」
「内政は私がやるけどね。これまでの鍛冶・調合支援通り、表には公表しないけど」
はい、嘘です。ミリアナ・レインフォール=コナミ・サキ=霧雨美奈子なのだから、やっぱり全部ひとりである。ギルマスの拓也=ヘラルドを含むギルド『神々の黄昏』、ギルマスの前島さん=ユーマを含むギルド『新緑の騎士団』にだけ話を合わせておけばいいだけである。
そういう意味では、もういい加減、ミリアナ・レインフォールが私であることを明かしてしまった方が話は早いのである。VRゲームとしての『ファラウェイ・ワールド・オンライン』だけを考えるのであれば。
「まあ、ミリアナは現実世界での『緊急クエスト』が活動のメインになっちまったけどな。たまには俺達も手伝うとはいえ」
一時期ほどではないが、今でもよく緊急クエストが舞い込んでくる。この間は、某国首相の暗殺を未然に防ぐとか、それ私じゃなくてもいいんじゃないって最初思ったのがあった。核兵器弾頭の持ち込みで都市ごと殲滅する計画が発覚したと聞いて引き受けたけど。あ、爆発はちゃんと『シャイニー・レイン』で防いだよ?
今は運営以外リアルを知らないからいいけど、実は私が『ミリアナ・レインフォール』の中の人でしたとか広まったら、非常に面倒なことになる。こんなちびっ娘JKが『人類最後の希望』みたいな役割を担っていると知ったら…うん、いろんな人が不安になるだろう。そう考えると、運営会社、特にユリシーズさんは、よく私に任せてくれるよね。ミリアナとしての実績を知っているからだろうか。
「そういうこと。だから、こじんまりした綺麗な街がいいんだよ」
「それでも、その街が勢力争いのラスボス扱いになりそうだけどな。一度やってみたいぜ、立ち塞がる『魔剣レインフォール』有するミリアナに、『天空城ミストライブラ』の咆哮がうなる!」
「2回咆哮しておしまいじゃあねえ。ギルド総出でかかってきなさい」
「虎の威を借りてるぞ、姉ちゃん」
「いいのよ、拓也にしか言わないから」
「おい」
クスクスクス。
「…本当は、姉ちゃんには『神々の黄昏』に入ってほしいんだけどな」
「イヤよ、なんであのメイドさん達と一緒に活動しなきゃならないのよ? 絶対、イヤ」
「だから、あいつらはただのNPCだって言ってるじゃねえか」
「イヤだから、イヤなの」
つーん
「『神々の黄昏』の国家運営方針はミストライブラ中心だからな。戦闘メイドは、内政でもPvPでも役立つだろうし」
「戦闘でもNPC雇えるしね。良かったね、タダで頼もしい戦闘集団げっとできて。ミリアナが23人を蹂躙する姿が今から楽しみだな」
つーん
「姉ちゃん…ひさしぶりに、いい感じだったのに…」
「やっぱり『国家』システムが導入されたね。エリア23の湖畔沿いの街がいいかなあ」
「姉ちゃん、そこの領主になりたいのか?」
「そういうわけじゃないけど、ミリアナの次の方針が『一騎当千・専守防衛』なのよ」
「なんだ、それ?」
「文字通りの意味だよ。国の戦力は、ミリアナひとり。それで、国を守り、維持する」
国家システムは、ゲームとしては、領地間の勢力争いを前面に出したものだ。今までは運営が直轄管理していた街や村を、ユーザに委ねる。具体的には、門番や衛兵を含む警察権限、店舗や農地の設置を許認可する行政権限などを含む内政権が獲得できる。罰金や税収はそのままユーザに入り、勢力争いは、宣戦布告から始まるPvPで内政権をかけて戦うことによって行われる。
領主は、ユーザひとりでもいいし、パーティやギルドでもいい。また、警察権限や行政権限を執行するのも、ユーザがやってもいいし、NPCにやらせてもいい。ただし、NPCの場合はお金を払って雇わなければならない上に、AIゆえに決まりきった役割しか果たさない。ギルド単位で国家運営するなら、何から何までユーザアバターがやった方がいいだろう。
「街や村の単位とはいえ、それを全部ひとりでやるってのか…」
「内政は私がやるけどね。これまでの鍛冶・調合支援通り、表には公表しないけど」
はい、嘘です。ミリアナ・レインフォール=コナミ・サキ=霧雨美奈子なのだから、やっぱり全部ひとりである。ギルマスの拓也=ヘラルドを含むギルド『神々の黄昏』、ギルマスの前島さん=ユーマを含むギルド『新緑の騎士団』にだけ話を合わせておけばいいだけである。
そういう意味では、もういい加減、ミリアナ・レインフォールが私であることを明かしてしまった方が話は早いのである。VRゲームとしての『ファラウェイ・ワールド・オンライン』だけを考えるのであれば。
「まあ、ミリアナは現実世界での『緊急クエスト』が活動のメインになっちまったけどな。たまには俺達も手伝うとはいえ」
一時期ほどではないが、今でもよく緊急クエストが舞い込んでくる。この間は、某国首相の暗殺を未然に防ぐとか、それ私じゃなくてもいいんじゃないって最初思ったのがあった。核兵器弾頭の持ち込みで都市ごと殲滅する計画が発覚したと聞いて引き受けたけど。あ、爆発はちゃんと『シャイニー・レイン』で防いだよ?
今は運営以外リアルを知らないからいいけど、実は私が『ミリアナ・レインフォール』の中の人でしたとか広まったら、非常に面倒なことになる。こんなちびっ娘JKが『人類最後の希望』みたいな役割を担っていると知ったら…うん、いろんな人が不安になるだろう。そう考えると、運営会社、特にユリシーズさんは、よく私に任せてくれるよね。ミリアナとしての実績を知っているからだろうか。
「そういうこと。だから、こじんまりした綺麗な街がいいんだよ」
「それでも、その街が勢力争いのラスボス扱いになりそうだけどな。一度やってみたいぜ、立ち塞がる『魔剣レインフォール』有するミリアナに、『天空城ミストライブラ』の咆哮がうなる!」
「2回咆哮しておしまいじゃあねえ。ギルド総出でかかってきなさい」
「虎の威を借りてるぞ、姉ちゃん」
「いいのよ、拓也にしか言わないから」
「おい」
クスクスクス。
「…本当は、姉ちゃんには『神々の黄昏』に入ってほしいんだけどな」
「イヤよ、なんであのメイドさん達と一緒に活動しなきゃならないのよ? 絶対、イヤ」
「だから、あいつらはただのNPCだって言ってるじゃねえか」
「イヤだから、イヤなの」
つーん
「『神々の黄昏』の国家運営方針はミストライブラ中心だからな。戦闘メイドは、内政でもPvPでも役立つだろうし」
「戦闘でもNPC雇えるしね。良かったね、タダで頼もしい戦闘集団げっとできて。ミリアナが23人を蹂躙する姿が今から楽しみだな」
つーん
「姉ちゃん…ひさしぶりに、いい感じだったのに…」
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