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第3章 ユーマ・アイスフィールド
第21話 難しい話
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「…内容が、あまり頭に入らなかった…」
「え? そんなに難しい話じゃなかったと思うけど」
映画を観た後は、ショッピングモールのフードコートでお昼。カルボナーラが当たりでとってもおいしい。前島さんの…えっと、たこ焼きだけでいいの?
「ちょっと、食べ物があまり喉に通らなくて…」
「そ、そう…やっぱり、あまり気分が良くならない映画だったから…」
難しかったというより、内容が合わなかったのかな。実際、故郷の星が汚染で住めなくなった侵略者達による、地球人類のスプラッタやら大量殺戮やらのシーンは凄惨だった。ラストに向かって仲間が次々と死んでいく展開も、観ていてあまり爽快なものではなかった。ついには、地球人類だけでなく侵略者達までもが全て滅亡し、ひとり生き残った主人公が、廃墟の山々と僅かな自然環境の中で呆然と佇み涙を流す姿は、見ていて辛いものがあった。
「いや、最後の数分は良かったじゃない。一連の出来事は実は全て神様が見せた夢で、こういう失敗をしないよう気をつけてっていう。夢から覚めた侵略者達と地球人類が、主人公を中心に手を取り合って仲良く生きていくことを決めたシーンは感動モノだったよ? ここはちゃんと観たよ!」
「そ、そう…」
そっか、前島さん、原作知らないか。あのラストは映画オリジナルだ。あまりに救いようのないオチに映画会社が強く注文を出して、脚本家と監督が渋々追加したという。
おかげで、原作ファンには袋叩きである。興業的には…とりあえず封切後一週間の現在はそこそこらしい。圧倒的なまでの映像美が評価されているようだ。
「私としては、最後のシーンこそが、神様に見せられた主人公の夢なんじゃないかって解釈しちゃうかな。『胡蝶の夢』というか」
「あ、それ、学校の授業でも出てきたよね。夢から目が覚めたのか、それとも、今まさに夢を見始めたのかっていう」
「そう…だね…」
ふと、思ったことがある。
仮想世界へのフルダイブ装置は、実は、夢の中で夢から覚めるためのもので、VRゲームの世界の方が現実なのではないかと。その世界は、神様によって厳重に管理されていて、だからこそ、希望や意志の力でいくらでも奇跡が起きる。むしろ、人間が見る夢の集合体の方が想像力に乏しく、希望も奇跡も成し遂げられない辛い場所なのではないか―――
「ミナ、また、難しい顔をしている」
「…うん、そうかも」
そんな考えは、この間ユリシーズさんが言っていた、リアリティの過剰認識によって生まれたんじゃないかとも思うようになった。そうすれば、辻褄が合う…。
「…やめやめ。さて、これからどうする? あ、そっか、用事があるんだっけ」
「い、いや、家で用事があるのは、か、家族の方なんだ。だから、もう少しミナと一緒に回れればって思ってるんだけど」
ふむ。
「それなら…ウチに来る?」
「…え?」
「え? そんなに難しい話じゃなかったと思うけど」
映画を観た後は、ショッピングモールのフードコートでお昼。カルボナーラが当たりでとってもおいしい。前島さんの…えっと、たこ焼きだけでいいの?
「ちょっと、食べ物があまり喉に通らなくて…」
「そ、そう…やっぱり、あまり気分が良くならない映画だったから…」
難しかったというより、内容が合わなかったのかな。実際、故郷の星が汚染で住めなくなった侵略者達による、地球人類のスプラッタやら大量殺戮やらのシーンは凄惨だった。ラストに向かって仲間が次々と死んでいく展開も、観ていてあまり爽快なものではなかった。ついには、地球人類だけでなく侵略者達までもが全て滅亡し、ひとり生き残った主人公が、廃墟の山々と僅かな自然環境の中で呆然と佇み涙を流す姿は、見ていて辛いものがあった。
「いや、最後の数分は良かったじゃない。一連の出来事は実は全て神様が見せた夢で、こういう失敗をしないよう気をつけてっていう。夢から覚めた侵略者達と地球人類が、主人公を中心に手を取り合って仲良く生きていくことを決めたシーンは感動モノだったよ? ここはちゃんと観たよ!」
「そ、そう…」
そっか、前島さん、原作知らないか。あのラストは映画オリジナルだ。あまりに救いようのないオチに映画会社が強く注文を出して、脚本家と監督が渋々追加したという。
おかげで、原作ファンには袋叩きである。興業的には…とりあえず封切後一週間の現在はそこそこらしい。圧倒的なまでの映像美が評価されているようだ。
「私としては、最後のシーンこそが、神様に見せられた主人公の夢なんじゃないかって解釈しちゃうかな。『胡蝶の夢』というか」
「あ、それ、学校の授業でも出てきたよね。夢から目が覚めたのか、それとも、今まさに夢を見始めたのかっていう」
「そう…だね…」
ふと、思ったことがある。
仮想世界へのフルダイブ装置は、実は、夢の中で夢から覚めるためのもので、VRゲームの世界の方が現実なのではないかと。その世界は、神様によって厳重に管理されていて、だからこそ、希望や意志の力でいくらでも奇跡が起きる。むしろ、人間が見る夢の集合体の方が想像力に乏しく、希望も奇跡も成し遂げられない辛い場所なのではないか―――
「ミナ、また、難しい顔をしている」
「…うん、そうかも」
そんな考えは、この間ユリシーズさんが言っていた、リアリティの過剰認識によって生まれたんじゃないかとも思うようになった。そうすれば、辻褄が合う…。
「…やめやめ。さて、これからどうする? あ、そっか、用事があるんだっけ」
「い、いや、家で用事があるのは、か、家族の方なんだ。だから、もう少しミナと一緒に回れればって思ってるんだけど」
ふむ。
「それなら…ウチに来る?」
「…え?」
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