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第3章 ユーマ・アイスフィールド

第19話 デート?

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 自宅最寄の駅に到着。地区は大きく違うが、前島さんも同じ市内に住んでいる。ちょうど中間の地点である駅を待合せ場所にしたのだ。

「ミナ、こっちこっち!」
「おまたせ。待ったかな?」
「ボクも今来たとこだよ。さ、行こっか」

 ふたり並んで、駅に入る。電車で何駅か行った先のショッピングモールの中にある映画館が、今日の主要目的地だ。

 改札からホームに入り、やってくる電車に乗る。通学時ほど混んではいないけど、席はだいぶ埋まっている感じだ。

「立ったままでいい?」
「いいよ、何十分もかかるわけじゃないし」

 ガタンゴトン、ガタンゴトン

 …なんか、話した方がいいよね。教室だと、前島さんがずっと喋ってるって感じだけど、こんな時くらいは。

「…」
「…何?」
「前島さん、背が高くていいなあって」

 180cm近くはあるよね? 顔はもちろんスタイルもいいから、読モ映えしそう。ミリアナとしての私なら、並ぶと釣り合いがとれそうだけど…。

「高くてもいいことばかりじゃないよ。ボクは、ミナくらいの背に憧れるけど」
「あはは、弟には『女ドワーフの基本造形』って言われているけど」
「ああうん、かわいいよね、アレ」
「えっ」
「えっ」

 いやまあ、アバターの基本造形って、可もなく不可もなくな容姿だけど。

「でも、前島さんのアバター…『ユーマ』だっけ。やっぱり背が高いよね?」
「ああ、あれは初期設定がよくわからなくて、リアルのデータをそのまま入れちゃったんだよ」
「それで、青年ヒューマンなんだ」
「体格とか顔とかは、剣士を意識してあれこれいじったんだけど」
「でも、身長もいつでも変更できるよ?」
「えっ」
「えっ」

 前島さん、もしかしてコンピュータオンチ?

 などと喋っていたら、あっという間に目的の駅に到着した。うん、これくらい話しながら歩けると楽しいよね。



 ショッピングモールにも順調に到着。順調過ぎて、映画が始まるまでまだだいぶ時間がある。

「あ、電器店、見に行ってもいいかな? フルダイブ装置の新製品を確認しておきたいんだ」
「いいけど…新しくするの?」
「値段によるけど、できればそうしたいんだよね。今の装置、古いせいか、なんか反応速度がおかしい感じで」
「反応速度?」
「魔物に斬りつけられた時は痛くないのに、しばらくしたら痛くなったりするんだよね」
「それって…痛覚設定ペイン・アブソーバーの調整がおかしいだけなんじゃ」
「えっ」
「えっ」

 今日はこの会話パターンが多いな。

「でも、とりあえず見に行こうか。新品が手に入るならそれに越したことないし」
「うん」

 店頭のデモ機で設定方法を教えることができるかもだし。

 電器店のエリアに近づいた時。

『【なお、最終クエストをクリアしたアバターは、ボーナス特典として現実世界に転移できるようになりました】』

 うおわ、いつか聞いたアナウンスっ。どうやら、最終クエスト攻略時の様子をキャプチャしていた映像を、宣伝のために流しているらしい。内容が内容だから、公式サイトでは当時の記録映像を公開していないんだよね。

「あれ、これって、あの時の…」
「前島さんも、見てたの?」
「見てたっていうか、あの時、公会堂のイベント会場にいたから。リアルのパーティ仲間と一緒に」
「そうなの!?」

 き、気づかなかった…。いやまあ、あの時は転移したばかりでパニクってたから、社長さんとユリシーズさんしかはっきり覚えてないけど。

『【これより、クリア記念祝賀パーティの主役として、『ミリアナ・レインフォール』がイベント会場に現界いたします。みなさま、盛大な拍手をお送り下さい!】』

「拍手なんて送れる雰囲気じゃなかったなあ。何がどうしてこうなるって困惑ばかりで」
「あはは…」

 お互い様って感じだよね。

 …ん? …?

「すぐいなくなっちゃったし、公式ではあれから何も言及しないし。だから、ボクの内輪では、あのミリアナは役者さんか何かがコスプレしたものだったんだろってことに…ミナ? どうしたの?」

 あの『現界』は、能力発現元と思われる私はもちろん、運営関係者にもその他のユーザにも、思いもよらない出来事だった。それなら―――

「あのアナウンスは、誰の言葉なの…?」
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