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第1章 ミリアナ・レインフォール

第5話 運営アバター

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 とりあえず、もう一度ゲーム内に『転移』して、運営に連絡をとった。私の素性は知っているわけだし、現実世界の家に押しかけられても困るので、こちらからコンタクトをとったわけだ。

 すぐに運営アバターが飛んできた。イベント会場で対応した技術スタッフが中の人らしい。私にコンタクトを取る前にシステム解析を優先したらしく、なんかヘロヘロな状態だ。

「未だ、解明できていません。糸口すら見つかっていない状況です」
「世間ではどんな扱いなんですか? TVとか見てみましたけど、イベント会場の映像を繰り返し引用して報道しているだけで、半信半疑という感じですけど」
「まさしくその通りです。あれから人前では『現界』していないのでしょう?」
「ええ、まあ」
「当然、科学技術的には大変興味深いところなのですが、そもそもこれが科学技術として扱うことができる事象なのかさえわかりません…」

 うーん。このまま、なかったことにしようかなあ。現実世界で剣と魔法をレベルカンストで使う機会ってなさそうだもん。あ、アイテムボックスは便利そうだから日常生活でも使うかもだけど。

 といった感じで伝えたら。

「それは、羨ましいですねえ。システムを維持しているのは私達なのに…」
「あはは…」

 実際、アバターとして現実世界に『現界』しないと、そのアイテムボックスとかも使えない。ずっと『ミリアナ・レインフォール』として現実世界に存在できるならともかく、いつまでもログインしてたら本体の肉体が衰弱してきて、セーフティ機能で強制ログアウトしてしまう。ていうか、いつまでもログインしていたくないし。

 あれ? それほど便利でもない? むう。

「とりあえず、様子見としましょう。いずれ直接当社にお越しいただくことになると思いますが。政府関係機関からも、内密に連絡が届いています」

 うえ、実験モルモットにされちゃう? それなら逆に、大々的に正体を明かした方がいいかな? まあ、そうなりそうだったらそうしよう。

 ぽーん

「…ん? 失礼、現実世界から連絡が…。あ、社長。はい、今、仮想空間内で一緒に…はい…はい…え、まさか…!?」

 それまで手元のモニタを見ながら話していたのに、急に私の方に顔を向ける。こっち見んな。嫌な予感しかしない。

「はい…わかりました、とりあえず現状を確認した上で、本人に頼んでみます。はい、ではまた」

 ぷつん

「な、何かあったんですか…」
「霧雨さん…いえ、『魔法剣士ミリアナ・レインフォール』への緊急クエストです。舞台は、現実世界の空の上です」

 …はい?
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