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終章 月は見えずとも
温かな闇
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唐織は、和泉屋が谷中に構えた屋敷に落ち着いた。彼の本邸には、正妻やその子がいるのだ。札差の家族ともなると、女遊びに目くじら立てるほど狭量ではないし、すでにそれなりの年齢でもあるだろう。とはいえ、新しく買った妾と同居させるのはさすがに何かと障りがあるということらしい。
数日おきに訪れる和泉屋に応対するほかは、閉じこもるばかりの退屈な日々ではあるが──これまでの人生に置いて、昼となく夜となく客の気を惹き心を捕らえることだけを考えてきた唐織にとっては、ほど良い休息でもあった。世間の者は、女郎の暮らしなど昼夜が逆転しただけのことだと思っているようだが、客と対面していない時でも、頭を悩ませることは尽きないものだ。季節に応じた座敷や装いの趣向や手紙の文面に、妹分たちの面倒も見てやなければならない。
花魁の名に恥じぬ体裁を保つためには、何度も同じ着物を纏う訳にも行かぬことでもあるし、金策のために禿や振袖新造を質屋に走らせることもしばしばだった。そう、だからさらさに言わせたのもよくある話であって、別にあの男と会うためにどうこう、ということではまったくなかった。
身揚げに要した金以上に、情人の噂は唐織の客たちを浮き足立たせ、彼らに金を使わせる効果を発揮してくれた。あの男が気に病む必要は、何もなかったのに。
「本当に、愚かな男……」
もう何度となく呟いた言葉を、また唇に乗せながら。唐織は襟元を直し、鏡に映る自身の顔に綻びがないのを確かめた。今日は、代わり映えのない生活に変化が起きる日だ。今や彼女の唯一の客になった和泉屋が、訪ねてくるというのだ。
* * *
「おお、唐織──」
和泉屋は、唐織の姿を見るなり相好を崩した。髪には珊瑚の珠を施した簪が一本だけ、纏うのは遠目には無地にも見える細かな縞の小紋。見世にいた頃ならば部屋着にしかならなかった装いが、気に入ったらしい。
「調子はどうだね。退屈していないかね」
「いいえ、ちっとも。喜泉様のくれた着物を取り換えるのに忙しくて」
喜泉、というのは和泉屋が名乗る俳号である。十八大通と世間がもてはやす通人たちに名を連ねるほどの腕ではないのだが、付き合いとして茶だの歌の会だのに出ることが多いらしい。いずれ唐織も、そのような席に連れ出されることになるのだろう。大枚叩いて請け出した女を、自慢したいと思うのは男の性だ。
「何でも着こなすのはさすがだが、こういう趣向も、良い」
「地味じゃあありませんか? 様に幻滅されたらどうしよう」
頬を抑えて不安を装いながら、そのようなことはあり得ないのを唐織はよく知っていた。
薄化粧も地味な着物も、和泉屋は彼女の素顔だと信じているのだ。かつて着飾って崇められた花魁の気取らぬ姿は、自分しか見ることができぬものだと悦に入っているはず。その満足によって、和泉屋はますます機嫌を上向けたようだった。
「お前のそんな装いは今まで見なかったからね。かえって新鮮というものだ」
「妾も楽しいんですよ。まるで普通の夫婦のようではありんせ──ありません?」
「ああ、そうだな」
廓言葉が抜けない振りで、慌てて言い直してから舌を出す──その迂闊さも演技のうちだ。これもまた、和泉屋が気付く気配はない。釣った魚だからと捨て置かれることがないように、唐織がどれほど必死なのか。どれほど自身が信用されていないのか。この男は、想像だにしていないのだろう。
唐織は、和泉屋を庭に面した座敷に通した。この男が彼女のために散財したのは、衣装や飾りに対してだけではない。池を設け奇石を配した庭の眺めもなかなかに手が込んでいる。囲った女を退屈させぬため、また、後々は人を招いて見せびらかしたいという肚もあるだろう。
「窮屈な思いをしているだろうね。もう少しほとぼりが冷めたら、あちこち物見遊山にも連れ出してやりたいのだが」
丹精込めた庭を前にして、けれど和泉屋の表情は冴えない。きっと、屋敷の外に出したら唐織が攫われるのではないか、という不安のゆえだ。彼女の身請けの日のあの騒動を、この男はまだ忘れられていないのだ。一応、無理のないことではある。
何しろ、行列を妨げたあの男は、山谷堀に飛び込んでから行方が知れない。そもそも手ひどく殴られた後だったし、あの日、水面を覆っていた船に妨げられて息継ぎできずに溺れ死んだのかもしれない。けれどその割には死体も見つかっていない。ならば首尾よく逃げのびているのかといえば、見かけたという者が現れないのも不可解なのだが。濡れそぼった傷だらけの男など、たいそう目立ちそうなものなのに。
生きているのか死んでいるのか──それさえ、分からない。だから和泉屋は恐れ続けるし、唐織はほのかな期待を抱き続ける。来るなと言っても何度も顔を見せたあの男のこと、いつかまた彼女の前に現れるのではないか、と。
「妾は構いませんよ。でも──そうですね、もう少し庭に彩りがあると気分も晴れるでしょうねえ」
「では、紅葉を植えてやろう。ふたりだけの紅葉狩りだ」
無論、愚かな夢だとは知っている。あの男と唐織の間には何もなかった。縁のように見えるものがあるとしたら、彼女が強引に絡め取ったというだけ、あの男は女郎蜘蛛の巣にかかった哀れな羽虫でしかないだろう。もしも運良く逃れることができたなら、二度と関わり合いになろうとはしないだろう。
あの男は、唐織に勝手な言葉を投げつけて、そして勝手に消えていった。それだけのことだ。
だから、唐織のやることは変わらない。吉原の大見世で御職を張って、いた時も。今、たったひとりの男のために全力で媚態を演じる時も。嘘で自身を繕って、相手を手玉に取る。そうして金を搾り取る。それだけだ。
「まあ、素敵……!」
自身の耳には虚しく響く嬌声も、和泉屋には心からの感嘆の声に聞こえるようだった。あまりにも扱いやすいものだから、張り合いがないとさえ思う。たぶん、鷹揚な男に身請けされたのを幸運と喜ぶべきなのだろうけれど。優しいとか気前が良いとは思っても、やはり唐織はこの男のことを想ってはいない。
「その時は夜に来るのも良いかもしれんな。月の光に紅葉が映えるのも──と、お前は月は嫌いだったか」
辛うじて彼女の好みを思い出したのは、無粋なこの男にしては上出来だっただろう。それで嬉しいということもなく、かといってわざわざ憤るほどのことでもない──なんとも生ぬるい想いを隠して、唐織は和泉屋にしなだれかかった。
「ええ。でも、もう構いませんよ。喜泉様と見るなら月だって──」
この男は、何も知らない。何も気付いていない。唐織が月を好かない──好かなかった、その理由を。
月を見るたび、彼女は思い知らされていたのだ。鏡のような欠けることのない望月だろうと、雲居に滲んだ光を放つ朧月だろうと、きっと紛い物でしかない。姉花魁が好いた男と眺めたみそかの月は、絶対に、喩えようもないほど、ずっともっと美しかった。
けれど、彼女にはそれが見えない。姉たちが貫いたほどの強さと重さと真っ直ぐさで彼女を想う男はいない。嘘で塗り固めて、己を誰にも見せぬようにしていたのだから当たり前ではあるのだけれど。
それが悔しくて虚しくて面白くなくて──だから、月は見たくなかった。でも、今は少し違う。
「妾は月よりきれいでしょう。ね、喜泉様?」
「おお、もちろんだ。月どころか星を全部集めても、お天道様だってお前には敵わない」
盛大に惚気られたのだと知らぬ和泉屋は、陳腐なことを言いながら唐織を抱き寄せた。あの日、あの時、あの男が囁いたのを聞いた者は、彼女しかいない。
『あんたは月よりきれいだ』
あの言葉は、彼女だけのものだ。ずっとずっと、胸の奥にしまっていくのだ。
嘘ばかりでも、愛もまことも何もなくとも。手ひどく騙して想いを踏み躙りさえしたのに。それでもなお──あるいはだからこそ──認めずにはいられないほど、美しいと言われたのだとしたら。だとしたら、あの男は──
(本当に、愚か。馬鹿な男……!)
胸の裡では罵り嘲りながら、唐織の口元は緩んでいた。きっと、穏やかに満ち足りた笑みになっているはずだ。どんな客に見せたよりも艶やかで美しい──そんな表情を、手管で浮かべることができたら何かと楽だったろうに。
唐織の目に映る空は、やはり暗いままだ。昼だろうと夜だろうと、雲があろうとなかろうと。みそかの月は、彼女には見えない。
けれど胸の底の何かが温かい。だからそれで良いのだと思うことにした。
数日おきに訪れる和泉屋に応対するほかは、閉じこもるばかりの退屈な日々ではあるが──これまでの人生に置いて、昼となく夜となく客の気を惹き心を捕らえることだけを考えてきた唐織にとっては、ほど良い休息でもあった。世間の者は、女郎の暮らしなど昼夜が逆転しただけのことだと思っているようだが、客と対面していない時でも、頭を悩ませることは尽きないものだ。季節に応じた座敷や装いの趣向や手紙の文面に、妹分たちの面倒も見てやなければならない。
花魁の名に恥じぬ体裁を保つためには、何度も同じ着物を纏う訳にも行かぬことでもあるし、金策のために禿や振袖新造を質屋に走らせることもしばしばだった。そう、だからさらさに言わせたのもよくある話であって、別にあの男と会うためにどうこう、ということではまったくなかった。
身揚げに要した金以上に、情人の噂は唐織の客たちを浮き足立たせ、彼らに金を使わせる効果を発揮してくれた。あの男が気に病む必要は、何もなかったのに。
「本当に、愚かな男……」
もう何度となく呟いた言葉を、また唇に乗せながら。唐織は襟元を直し、鏡に映る自身の顔に綻びがないのを確かめた。今日は、代わり映えのない生活に変化が起きる日だ。今や彼女の唯一の客になった和泉屋が、訪ねてくるというのだ。
* * *
「おお、唐織──」
和泉屋は、唐織の姿を見るなり相好を崩した。髪には珊瑚の珠を施した簪が一本だけ、纏うのは遠目には無地にも見える細かな縞の小紋。見世にいた頃ならば部屋着にしかならなかった装いが、気に入ったらしい。
「調子はどうだね。退屈していないかね」
「いいえ、ちっとも。喜泉様のくれた着物を取り換えるのに忙しくて」
喜泉、というのは和泉屋が名乗る俳号である。十八大通と世間がもてはやす通人たちに名を連ねるほどの腕ではないのだが、付き合いとして茶だの歌の会だのに出ることが多いらしい。いずれ唐織も、そのような席に連れ出されることになるのだろう。大枚叩いて請け出した女を、自慢したいと思うのは男の性だ。
「何でも着こなすのはさすがだが、こういう趣向も、良い」
「地味じゃあありませんか? 様に幻滅されたらどうしよう」
頬を抑えて不安を装いながら、そのようなことはあり得ないのを唐織はよく知っていた。
薄化粧も地味な着物も、和泉屋は彼女の素顔だと信じているのだ。かつて着飾って崇められた花魁の気取らぬ姿は、自分しか見ることができぬものだと悦に入っているはず。その満足によって、和泉屋はますます機嫌を上向けたようだった。
「お前のそんな装いは今まで見なかったからね。かえって新鮮というものだ」
「妾も楽しいんですよ。まるで普通の夫婦のようではありんせ──ありません?」
「ああ、そうだな」
廓言葉が抜けない振りで、慌てて言い直してから舌を出す──その迂闊さも演技のうちだ。これもまた、和泉屋が気付く気配はない。釣った魚だからと捨て置かれることがないように、唐織がどれほど必死なのか。どれほど自身が信用されていないのか。この男は、想像だにしていないのだろう。
唐織は、和泉屋を庭に面した座敷に通した。この男が彼女のために散財したのは、衣装や飾りに対してだけではない。池を設け奇石を配した庭の眺めもなかなかに手が込んでいる。囲った女を退屈させぬため、また、後々は人を招いて見せびらかしたいという肚もあるだろう。
「窮屈な思いをしているだろうね。もう少しほとぼりが冷めたら、あちこち物見遊山にも連れ出してやりたいのだが」
丹精込めた庭を前にして、けれど和泉屋の表情は冴えない。きっと、屋敷の外に出したら唐織が攫われるのではないか、という不安のゆえだ。彼女の身請けの日のあの騒動を、この男はまだ忘れられていないのだ。一応、無理のないことではある。
何しろ、行列を妨げたあの男は、山谷堀に飛び込んでから行方が知れない。そもそも手ひどく殴られた後だったし、あの日、水面を覆っていた船に妨げられて息継ぎできずに溺れ死んだのかもしれない。けれどその割には死体も見つかっていない。ならば首尾よく逃げのびているのかといえば、見かけたという者が現れないのも不可解なのだが。濡れそぼった傷だらけの男など、たいそう目立ちそうなものなのに。
生きているのか死んでいるのか──それさえ、分からない。だから和泉屋は恐れ続けるし、唐織はほのかな期待を抱き続ける。来るなと言っても何度も顔を見せたあの男のこと、いつかまた彼女の前に現れるのではないか、と。
「妾は構いませんよ。でも──そうですね、もう少し庭に彩りがあると気分も晴れるでしょうねえ」
「では、紅葉を植えてやろう。ふたりだけの紅葉狩りだ」
無論、愚かな夢だとは知っている。あの男と唐織の間には何もなかった。縁のように見えるものがあるとしたら、彼女が強引に絡め取ったというだけ、あの男は女郎蜘蛛の巣にかかった哀れな羽虫でしかないだろう。もしも運良く逃れることができたなら、二度と関わり合いになろうとはしないだろう。
あの男は、唐織に勝手な言葉を投げつけて、そして勝手に消えていった。それだけのことだ。
だから、唐織のやることは変わらない。吉原の大見世で御職を張って、いた時も。今、たったひとりの男のために全力で媚態を演じる時も。嘘で自身を繕って、相手を手玉に取る。そうして金を搾り取る。それだけだ。
「まあ、素敵……!」
自身の耳には虚しく響く嬌声も、和泉屋には心からの感嘆の声に聞こえるようだった。あまりにも扱いやすいものだから、張り合いがないとさえ思う。たぶん、鷹揚な男に身請けされたのを幸運と喜ぶべきなのだろうけれど。優しいとか気前が良いとは思っても、やはり唐織はこの男のことを想ってはいない。
「その時は夜に来るのも良いかもしれんな。月の光に紅葉が映えるのも──と、お前は月は嫌いだったか」
辛うじて彼女の好みを思い出したのは、無粋なこの男にしては上出来だっただろう。それで嬉しいということもなく、かといってわざわざ憤るほどのことでもない──なんとも生ぬるい想いを隠して、唐織は和泉屋にしなだれかかった。
「ええ。でも、もう構いませんよ。喜泉様と見るなら月だって──」
この男は、何も知らない。何も気付いていない。唐織が月を好かない──好かなかった、その理由を。
月を見るたび、彼女は思い知らされていたのだ。鏡のような欠けることのない望月だろうと、雲居に滲んだ光を放つ朧月だろうと、きっと紛い物でしかない。姉花魁が好いた男と眺めたみそかの月は、絶対に、喩えようもないほど、ずっともっと美しかった。
けれど、彼女にはそれが見えない。姉たちが貫いたほどの強さと重さと真っ直ぐさで彼女を想う男はいない。嘘で塗り固めて、己を誰にも見せぬようにしていたのだから当たり前ではあるのだけれど。
それが悔しくて虚しくて面白くなくて──だから、月は見たくなかった。でも、今は少し違う。
「妾は月よりきれいでしょう。ね、喜泉様?」
「おお、もちろんだ。月どころか星を全部集めても、お天道様だってお前には敵わない」
盛大に惚気られたのだと知らぬ和泉屋は、陳腐なことを言いながら唐織を抱き寄せた。あの日、あの時、あの男が囁いたのを聞いた者は、彼女しかいない。
『あんたは月よりきれいだ』
あの言葉は、彼女だけのものだ。ずっとずっと、胸の奥にしまっていくのだ。
嘘ばかりでも、愛もまことも何もなくとも。手ひどく騙して想いを踏み躙りさえしたのに。それでもなお──あるいはだからこそ──認めずにはいられないほど、美しいと言われたのだとしたら。だとしたら、あの男は──
(本当に、愚か。馬鹿な男……!)
胸の裡では罵り嘲りながら、唐織の口元は緩んでいた。きっと、穏やかに満ち足りた笑みになっているはずだ。どんな客に見せたよりも艶やかで美しい──そんな表情を、手管で浮かべることができたら何かと楽だったろうに。
唐織の目に映る空は、やはり暗いままだ。昼だろうと夜だろうと、雲があろうとなかろうと。みそかの月は、彼女には見えない。
けれど胸の底の何かが温かい。だからそれで良いのだと思うことにした。
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