ich rede nichts 赤い皇女は語らない
一九六一年、ウィーン郊外に住まう老婦人をひとりの記者が訪ねる。
老婦人の名はエリザベート・マリー・ペツネック。
オーストリア=ハンガリー帝国の実質的な最後の皇帝、フランツ・ヨーゼフの孫娘であり、後に社会民主主義者と結婚したため「赤い皇女」とも呼ばれる女性だった。
取材に対して「私は何も語らない(ich rede nichts)」、すべては終わったことだと言いながら、彼女は過ぎた時代に思いを馳せる──
表紙画像はぱくたそより。
老婦人の名はエリザベート・マリー・ペツネック。
オーストリア=ハンガリー帝国の実質的な最後の皇帝、フランツ・ヨーゼフの孫娘であり、後に社会民主主義者と結婚したため「赤い皇女」とも呼ばれる女性だった。
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まだ拝読途中ですが、興味深いお話です。
ただ、最初の夫との顛末に関しては「飼い犬に手を噛まれた」というか、実際のところは皇女の権力で元いた恋人とも別れさせてまで結婚した挙句、利用して捨てるつもりでいた相手からしっぺ返しを食らったように見えますね。
そもそもこのヒロインが全く夫を愛しておらず最初から利用して別れるつもりで不倫までしているのだから、夫から病気になっても自分より遺産の心配をされる展開になっても全くの自業自得で、むしろ彼女の利己的で打算的な本質が相手も相応の人間に変えた話に思えました。
貴人情薄しというかこのヒロインのプライドなのでしょうが、
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というスタンスが読んでいていじましく、
「心から愛情を持っていたのに裏切られました」
と直情に語るより却って愚かしくすら思えました。
こんにちは。以前、資料本のお話をさせていただいた石川です。
『赤い皇女は語らない』読ませていただきました。悠井さまがこちらの作品を書かれていた頃からずっと読みたいと待望しておりまして、WEBご連載をどうもありがとうございますっ。お疲れさまでした。
ルドルフの娘さんの話〜〜〜! それだけで垂涎のテーマでございました。錚々たる名前と時代背景の醍醐味を大いに堪能させていただきました。Elisabethってほんとうに波瀾万丈で物語として魅力的な人生を持った方だったのですね。語りの形式の意図も素敵でしたが、角度を変えてまた別の解像度の高い形式の作品としても読んでみたい!と思いました。特に最初の夫の別の女性とのあれこれを……(昼ドラ的な笑)
オーストリア近代史としても勉強になりました。複雑に込み入った時代ですけれども、さらりと頭に入ってきて読みやすい筆致、さすがです。
そしてまさかラスボス(?)が彼とは!! なるほど!
ぜひぜひ今後もまた悠井さまの格調高い文体でウィーン・オーストリア近代の物語を楽しませていただきとうございます。期待させてくださいませ♪
素晴らしい物語の発掘とご提供をどうもありがとうございました。
ご感想ありがとうございました。
2020年度の集英社ノベル大賞の選評に対して、歴史ものを書く難しさ・心構えについて呟いた際に資料をご紹介いただいたのですよね。その節も、誠にありがとうございました……!
祖母や父が有名な方ですが、調べるにつれて、こちらのElisabethこそ自らの意志で自らの人生を生きた方だったと思い、本作の執筆に挑戦しました。語り形式も好んで書くものだったこともあり、絶対に好き好んで語らなさそうなこの方に、いかに語ってもらうかを工夫したつもりです。ハプスブルク帝国・一族の行く末とオーストリアの歴史の一端と、お楽しみいただけたら幸いです。
本作ではElisabethの人生の概観に留まってしまった感もあり、機会があれば、いずれかの時期に焦点を当ててこの方をさらに掘り下げたいと思っております。ご縁がありましたら、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
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