2 / 16
第2話 彤史の務め
しおりを挟む
碧燿の首から真紅の鮮血が噴き上がる──ことは、なかった。小刀の切っ先は、彼女の肌から紙一重だけ離れたところで辛うじて止まっている。全力で振り下ろしたはずの腕をしっかりと捕らえたのは、藍熾の後ろに控えていた珀雅だった。
豹の疾さとしなやかさで、一瞬にして距離を詰め、碧燿の動きを封じたのだ。さすが、皇帝の護衛を務めるだけのことはある。気付けば、碧燿の眼前に端整な貴公子の顔が迫り、漆黒の目が悠然と微笑んでいる。
碧燿の手から小刀を取り上げながら、珀雅は息も乱さず、そっと囁く。
「危ないことをする。若い娘の肌に痕が残っては、いけない」
「私には無用のご心配かと思いますが……」
普通の娘なら、のぼせ上って何も言えなくなるところだったろう。けれどあいにく、碧燿は義兄の顔に慣れている。だから答えは落ち着いたものだった。可愛げのない義妹を大仰に気遣う白々しさに、珀雅に向ける眼差しはむしろ冷たかったかもしれない。
(信頼に、応えてはくださったのだけど!)
碧燿が紙を汚す暴挙に出るはずはなく、また、この義兄が、彼女に傷がつくのを見過ごすはずはないのだ。藍熾に対して啖呵を切ったのは、珀雅が忍び寄る時間稼ぎのためでもあった。芝居に付き合わされたのに気付いたのだろう、高貴なはずの皇帝が、柄悪く舌打ちをした。
「死ぬつもりなど毫もなかったのだな。珀雅の助けを見越しての長広舌か……!」
「諫言というものでございます。お聞き入れいただけましたら光栄の至り」
とはいえ、碧燿が本気だったことに変わりはない。刀を振り下ろしたのは全力だったし、述べた内容も心からのもの。横暴な命に屈して彤史の矜持を汚すなら、死んだ方がマシだと──伝わっていれば、良いのだけれど。
「……義兄様も、私に諫言を求めていらっしゃったのですよね? 陛下の思い付きを、止めさせようと……?」
そうであって欲しい。というか、違うなどとは言わせない。確認と懇願と、少々の脅迫めいた圧を込めて碧燿が問うと、けれど珀雅はあっさりと首を振った。
「いいや。私は常に陛下の御為にある。彤史に御用がおありだと伺ったから、どうせなら可愛い義妹を使っていただきたいと思ったまで」
主君を諫めずへつらうばかりか、義妹を売り込もうとしていたらしい。まったくもって悪びれるところのない、呆れた言い分だった。
「巫馬家にはほかにまともな娘がいないのか」
「主君の専横を見過ごすとは。義父様が嘆かれますよ」
呆れたのは藍熾も同じだったのだろうか。溜息混じりの声は重なり、しかも互いの悪口を含んでいたとあって、深い青と碧の目が絡み合い、睨み合った。それを見て何をどう期待したのか、珀雅の口元がふわりと微笑む。花咲くような典雅な笑みだった。
「色々と事情があるのだよ。──この娘に教えても?」
珀雅の言葉の前半は碧燿に、後半は主君に向けたものだった。そして此度も、ふたりの答えはほぼ同時、かつ内容も似たり寄ったりのものだった。
「宮官にいちいち説いて聞かせる必要がどこにある」
「何を聞いたところで不正に変わりはありません」
藍熾はどこまでも傲岸そのもの、一方の碧燿も、頷く気は欠片もない。またしても険悪な睨み合いが続くほど数秒──藍熾はふと卓上に目を逸らし、皮肉っぽく棘のある笑みを浮かべた。
「──真実を記す高潔な役、だと? そなたが書いていたこれは、嘘偽りではないのか?」
彼が取り上げたのは、碧燿が先ほどまで取り組んでいた昨日の記録の巻物だった。若い彼女は彤史としても新参の下っ端で、担当するのは侍女や女官や奴婢の動向が主なところだ。昨日、後宮を影ながら支える彼女たちの間で話題になったのは──
女官に鳳凰の飛来を見たと称する者あり。いずこより来ていずこへと去るかは知らず。羽根は残らず、ただ五彩の翼の煌めきが降ったと云う。
「……触らないでください!」
汚れや破損を恐れて手を伸ばす碧燿をあざ笑うように、藍熾は長身を活かして巻物を掲げる。わざわざ碧燿の手の届かない高みで、同じくらいの背丈の珀雅に見せるのが底意地が悪い。
「鳳凰──瑞兆ではございませんか」
「今の夏天に瑞兆が出るはずはない」
珀雅の感想は、藍熾の意に適うものではなかったのだろう。不機嫌そうな唸り声は、けれど碧燿には少し面白かった。
(自覚があるんだ)
夏天の国は強大だけれど、その内情は決して褒められたものではない、と彼女は思う。皇帝を間近に見て、その考えはいっそう強まった。なのに当の皇帝が、瑞兆を真っ向から否定するのだ。あるいは、彼が否定するのは碧燿の仕事ぶりだけのつもりなのかもしれないけれど。
巻物を返せ、と。手を差し出して訴えながら、碧燿は皇帝からの下問に応える。鳳凰の飛来などは夢物語であって、偽りではないのか、と。確かに、彼女も神鳥の出現など信じている訳ではない。でも──
「不可思議なこととは存じましたが、調べた上でそのように記すしかないと結論いたしました」
「調べた、だと?」
「鳳凰を見たと述べた侍女や奴婢に話を聞きました」
ようやく巻物を取り戻し、墨の擦れがないのを確かめて息を吐く。指先で文字をなぞりながら思い出すのは、それを記すまでのちょっとした苦労のことだ。
「いずれも目が衰えているということもなく、時刻も示した方向も一致しておりました。鶴の類が虹と重なれば、そう見えるかも、とも思いましたが、天候にも変事はございませんで。王婕妤様の孔雀や木美人様の鸚鵡が逃げ出したということもなく──」
「孔雀や鸚鵡を飼っている者がいるのか」
藍熾は己の妻たちのことさえろくに知らないらしい。当然、寵愛を求めての彼女たちの必死の努力や争いも、なのだろう。碧燿は相手に気付かれないように、微かに皮肉な笑みを浮かべた。
「はい。何しろおおかたの者は退屈しておりますので、気分を紛らわせる鳥獣や、金魚の類は人気がありますね。……以前、鸚鵡が逃げた時は大騒動でした。翼を広げると結構大きいのですよね。羽根も色鮮やかで、陽を浴びた姿を鳳凰と見間違えた可能性も考えたのですが、違ったようで」
大きな翼を鳥籠に押し込められる鸚鵡は哀れだし、ならば後宮という大きな籠の中、顧みられることなく朽ちていく妃嬪たちも哀れだ。声を湿らせた碧燿の感慨は、けれど藍熾の苛立った声によって吹き飛ばされる。
「回りくどい。言い訳せずに認めるが良い。そなたは鳳凰などという偽りを記した。彤史の矜持など建前に過ぎぬということではないのか。ならば妃嬪の進御の記録に携わるのは喜ぶべき名誉であろう」
「偽りではございません。鳳凰を見た者がいるということと、鳳凰が実在するということは別の話です」
「詭弁だ。そして、些事だ」
短く切り捨てられて、碧燿はそっと溜息を呑み込んだ。呆れを露にしては、この皇帝は機嫌を損ねるだけだろう。ひと通り当たり散らして諦めてくれるなら良いけれど、どうも彼女を言い負かして従わせようという気配があるから面倒くさい。
(私の性格は知ってましたよね? どうなるかも、分かってますよね?)
ちらりと義兄を睨むと、大丈夫、と言いたげな微笑が返ってきた。いったい何が大丈夫なのか分からないけれど──やりたいようにやって良いのだろう、と碧燿は理解した。という訳で、皇帝の深い青の目を遠慮なく見上げ、口を開く。
「述べたことが記録される──認められるということが肝要なのです。尊い方々は、下々の言葉には耳を傾けてくださらないことが多いですから。強制されることのない証言の蓄積は、いずれ役に立つこともあるでしょう。彤史が真実を綴るという信頼があるからこそ、真実を語ってくれる者もいるはずで──ですから、私にはその信頼を裏切ることはできません」
だからさっさと帰れ、と。言外に告げた上で、碧燿は態度でも拒絶を示すことにした。すなわち、椅子に座り直し、先ほどの騒動で乱れた卓上を整える。彼女に割り当てられた書面、これから書き写すべき記録に目を通し──
「御前を失礼いたします。急用ができました」
碧燿は、すぐさま立ち上がった。目を丸くする藍熾と、微笑みを絶やさぬ珀雅の間をすり抜けて。手に紙片をひっつかんで。下っ端|彤史に与えられた小部屋から、足早に抜け出す。
「待て。どこへ行く」
「ついて参りましょう。義妹の仕事ぶりを、見ていただけるやもしれません」
慌てた風情の藍熾はともかく、珀雅の声に面白がる響きを聞き取って、碧燿は強めに床を蹴って大きく足を踏み出した。
(もう、見せ物じゃないのに!)
手元に届いた書き付けの中に、碧燿は真実でないこと、隠されたものがある気配を読み取ってしまったのだ。彼女なりに経緯を糺しておかないと、正式な巻物に残せはしない。それ自体はいつものことだから良いけれど──
あからさまに目立つ、見た目の良い男ふたりを引き連れては、調査が捗らないであろうことが気懸りだった。
豹の疾さとしなやかさで、一瞬にして距離を詰め、碧燿の動きを封じたのだ。さすが、皇帝の護衛を務めるだけのことはある。気付けば、碧燿の眼前に端整な貴公子の顔が迫り、漆黒の目が悠然と微笑んでいる。
碧燿の手から小刀を取り上げながら、珀雅は息も乱さず、そっと囁く。
「危ないことをする。若い娘の肌に痕が残っては、いけない」
「私には無用のご心配かと思いますが……」
普通の娘なら、のぼせ上って何も言えなくなるところだったろう。けれどあいにく、碧燿は義兄の顔に慣れている。だから答えは落ち着いたものだった。可愛げのない義妹を大仰に気遣う白々しさに、珀雅に向ける眼差しはむしろ冷たかったかもしれない。
(信頼に、応えてはくださったのだけど!)
碧燿が紙を汚す暴挙に出るはずはなく、また、この義兄が、彼女に傷がつくのを見過ごすはずはないのだ。藍熾に対して啖呵を切ったのは、珀雅が忍び寄る時間稼ぎのためでもあった。芝居に付き合わされたのに気付いたのだろう、高貴なはずの皇帝が、柄悪く舌打ちをした。
「死ぬつもりなど毫もなかったのだな。珀雅の助けを見越しての長広舌か……!」
「諫言というものでございます。お聞き入れいただけましたら光栄の至り」
とはいえ、碧燿が本気だったことに変わりはない。刀を振り下ろしたのは全力だったし、述べた内容も心からのもの。横暴な命に屈して彤史の矜持を汚すなら、死んだ方がマシだと──伝わっていれば、良いのだけれど。
「……義兄様も、私に諫言を求めていらっしゃったのですよね? 陛下の思い付きを、止めさせようと……?」
そうであって欲しい。というか、違うなどとは言わせない。確認と懇願と、少々の脅迫めいた圧を込めて碧燿が問うと、けれど珀雅はあっさりと首を振った。
「いいや。私は常に陛下の御為にある。彤史に御用がおありだと伺ったから、どうせなら可愛い義妹を使っていただきたいと思ったまで」
主君を諫めずへつらうばかりか、義妹を売り込もうとしていたらしい。まったくもって悪びれるところのない、呆れた言い分だった。
「巫馬家にはほかにまともな娘がいないのか」
「主君の専横を見過ごすとは。義父様が嘆かれますよ」
呆れたのは藍熾も同じだったのだろうか。溜息混じりの声は重なり、しかも互いの悪口を含んでいたとあって、深い青と碧の目が絡み合い、睨み合った。それを見て何をどう期待したのか、珀雅の口元がふわりと微笑む。花咲くような典雅な笑みだった。
「色々と事情があるのだよ。──この娘に教えても?」
珀雅の言葉の前半は碧燿に、後半は主君に向けたものだった。そして此度も、ふたりの答えはほぼ同時、かつ内容も似たり寄ったりのものだった。
「宮官にいちいち説いて聞かせる必要がどこにある」
「何を聞いたところで不正に変わりはありません」
藍熾はどこまでも傲岸そのもの、一方の碧燿も、頷く気は欠片もない。またしても険悪な睨み合いが続くほど数秒──藍熾はふと卓上に目を逸らし、皮肉っぽく棘のある笑みを浮かべた。
「──真実を記す高潔な役、だと? そなたが書いていたこれは、嘘偽りではないのか?」
彼が取り上げたのは、碧燿が先ほどまで取り組んでいた昨日の記録の巻物だった。若い彼女は彤史としても新参の下っ端で、担当するのは侍女や女官や奴婢の動向が主なところだ。昨日、後宮を影ながら支える彼女たちの間で話題になったのは──
女官に鳳凰の飛来を見たと称する者あり。いずこより来ていずこへと去るかは知らず。羽根は残らず、ただ五彩の翼の煌めきが降ったと云う。
「……触らないでください!」
汚れや破損を恐れて手を伸ばす碧燿をあざ笑うように、藍熾は長身を活かして巻物を掲げる。わざわざ碧燿の手の届かない高みで、同じくらいの背丈の珀雅に見せるのが底意地が悪い。
「鳳凰──瑞兆ではございませんか」
「今の夏天に瑞兆が出るはずはない」
珀雅の感想は、藍熾の意に適うものではなかったのだろう。不機嫌そうな唸り声は、けれど碧燿には少し面白かった。
(自覚があるんだ)
夏天の国は強大だけれど、その内情は決して褒められたものではない、と彼女は思う。皇帝を間近に見て、その考えはいっそう強まった。なのに当の皇帝が、瑞兆を真っ向から否定するのだ。あるいは、彼が否定するのは碧燿の仕事ぶりだけのつもりなのかもしれないけれど。
巻物を返せ、と。手を差し出して訴えながら、碧燿は皇帝からの下問に応える。鳳凰の飛来などは夢物語であって、偽りではないのか、と。確かに、彼女も神鳥の出現など信じている訳ではない。でも──
「不可思議なこととは存じましたが、調べた上でそのように記すしかないと結論いたしました」
「調べた、だと?」
「鳳凰を見たと述べた侍女や奴婢に話を聞きました」
ようやく巻物を取り戻し、墨の擦れがないのを確かめて息を吐く。指先で文字をなぞりながら思い出すのは、それを記すまでのちょっとした苦労のことだ。
「いずれも目が衰えているということもなく、時刻も示した方向も一致しておりました。鶴の類が虹と重なれば、そう見えるかも、とも思いましたが、天候にも変事はございませんで。王婕妤様の孔雀や木美人様の鸚鵡が逃げ出したということもなく──」
「孔雀や鸚鵡を飼っている者がいるのか」
藍熾は己の妻たちのことさえろくに知らないらしい。当然、寵愛を求めての彼女たちの必死の努力や争いも、なのだろう。碧燿は相手に気付かれないように、微かに皮肉な笑みを浮かべた。
「はい。何しろおおかたの者は退屈しておりますので、気分を紛らわせる鳥獣や、金魚の類は人気がありますね。……以前、鸚鵡が逃げた時は大騒動でした。翼を広げると結構大きいのですよね。羽根も色鮮やかで、陽を浴びた姿を鳳凰と見間違えた可能性も考えたのですが、違ったようで」
大きな翼を鳥籠に押し込められる鸚鵡は哀れだし、ならば後宮という大きな籠の中、顧みられることなく朽ちていく妃嬪たちも哀れだ。声を湿らせた碧燿の感慨は、けれど藍熾の苛立った声によって吹き飛ばされる。
「回りくどい。言い訳せずに認めるが良い。そなたは鳳凰などという偽りを記した。彤史の矜持など建前に過ぎぬということではないのか。ならば妃嬪の進御の記録に携わるのは喜ぶべき名誉であろう」
「偽りではございません。鳳凰を見た者がいるということと、鳳凰が実在するということは別の話です」
「詭弁だ。そして、些事だ」
短く切り捨てられて、碧燿はそっと溜息を呑み込んだ。呆れを露にしては、この皇帝は機嫌を損ねるだけだろう。ひと通り当たり散らして諦めてくれるなら良いけれど、どうも彼女を言い負かして従わせようという気配があるから面倒くさい。
(私の性格は知ってましたよね? どうなるかも、分かってますよね?)
ちらりと義兄を睨むと、大丈夫、と言いたげな微笑が返ってきた。いったい何が大丈夫なのか分からないけれど──やりたいようにやって良いのだろう、と碧燿は理解した。という訳で、皇帝の深い青の目を遠慮なく見上げ、口を開く。
「述べたことが記録される──認められるということが肝要なのです。尊い方々は、下々の言葉には耳を傾けてくださらないことが多いですから。強制されることのない証言の蓄積は、いずれ役に立つこともあるでしょう。彤史が真実を綴るという信頼があるからこそ、真実を語ってくれる者もいるはずで──ですから、私にはその信頼を裏切ることはできません」
だからさっさと帰れ、と。言外に告げた上で、碧燿は態度でも拒絶を示すことにした。すなわち、椅子に座り直し、先ほどの騒動で乱れた卓上を整える。彼女に割り当てられた書面、これから書き写すべき記録に目を通し──
「御前を失礼いたします。急用ができました」
碧燿は、すぐさま立ち上がった。目を丸くする藍熾と、微笑みを絶やさぬ珀雅の間をすり抜けて。手に紙片をひっつかんで。下っ端|彤史に与えられた小部屋から、足早に抜け出す。
「待て。どこへ行く」
「ついて参りましょう。義妹の仕事ぶりを、見ていただけるやもしれません」
慌てた風情の藍熾はともかく、珀雅の声に面白がる響きを聞き取って、碧燿は強めに床を蹴って大きく足を踏み出した。
(もう、見せ物じゃないのに!)
手元に届いた書き付けの中に、碧燿は真実でないこと、隠されたものがある気配を読み取ってしまったのだ。彼女なりに経緯を糺しておかないと、正式な巻物に残せはしない。それ自体はいつものことだから良いけれど──
あからさまに目立つ、見た目の良い男ふたりを引き連れては、調査が捗らないであろうことが気懸りだった。
1
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
想い出は珈琲の薫りとともに
玻璃美月
恋愛
第7回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞をいただきました。応援くださり、ありがとうございました。
――珈琲が織りなす、家族の物語
バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。
ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。
亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。
旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。
大正石華恋蕾物語
響 蒼華
キャラ文芸
■一:贄の乙女は愛を知る
旧題:大正石華戀奇譚<一> 桜の章
――私は待つ、いつか訪れるその時を。
時は大正。処は日の本、華やぐ帝都。
珂祥伯爵家の長女・菫子(とうこ)は家族や使用人から疎まれ屋敷内で孤立し、女学校においても友もなく独り。
それもこれも、菫子を取り巻くある噂のせい。
『不幸の菫子様』と呼ばれるに至った過去の出来事の数々から、菫子は誰かと共に在る事、そして己の将来に対して諦観を以て生きていた。
心許せる者は、自分付の女中と、噂畏れぬただ一人の求婚者。
求婚者との縁組が正式に定まろうとしたその矢先、歯車は回り始める。
命の危機にさらされた菫子を救ったのは、どこか懐かしく美しい灰色の髪のあやかしで――。
そして、菫子を取り巻く運命は動き始める、真実へと至る悲哀の終焉へと。
■二:あやかしの花嫁は運命の愛に祈る
旧題:大正石華戀奇譚<二> 椿の章
――あたしは、平穏を愛している
大正の時代、華の帝都はある怪事件に揺れていた。
其の名も「血花事件」。
体中の血を抜き取られ、全身に血の様に紅い花を咲かせた遺体が相次いで見つかり大騒ぎとなっていた。
警察の捜査は後手に回り、人々は怯えながら日々を過ごしていた。
そんな帝都の一角にある見城診療所で働く看護婦の歌那(かな)は、優しい女医と先輩看護婦と、忙しくも充実した日々を送っていた。
目新しい事も、特別な事も必要ない。得る事が出来た穏やかで変わらぬ日常をこそ愛する日々。
けれど、歌那は思わぬ形で「血花事件」に関わる事になってしまう。
運命の夜、出会ったのは紅の髪と琥珀の瞳を持つ美しい青年。
それを契機に、歌那の日常は変わり始める。
美しいあやかし達との出会いを経て、帝都を揺るがす大事件へと繋がる運命の糸車は静かに回り始める――。
※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。
追放から始まる新婚生活 【追放された2人が出会って結婚したら大陸有数の有名人夫婦になっていきました】
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
役に立たないと言われて、血盟を追放された男性アベル。
同じく役に立たないと言われて、血盟を解雇された女性ルナ。
そんな2人が出会って結婚をする。
結婚した事で、役に立たないスキルだと思っていた、家事手伝いと、錬金術師。
実は、トンデモなく便利なスキルでした。
最底辺、大陸商業組合ライセンス所持者から。
一転して、大陸有数の有名人に。
これは、不幸な2人が出会って幸せになっていく物語。
極度の、ざまぁ展開はありません。
異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜
カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。
その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。
落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
隣の古道具屋さん
雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。
幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。
そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。
修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。
後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる