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第十九章 ケルン掌握。

第391話 平和への戦い。③

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 次の報告は『エチゴヤ』のビルさんからの物だ。

 内容をざっと読み進めると、既存の商品の売れ行きに問題はなく、以前に造った冷凍冷蔵庫は気温が高くなるにつれて売れ行きも好調になっているとの報告だった。夏本番に向けて、増産体制に入るらしいとのこと。

 次は、ツール本店の『カフェエチゴヤ』で出すようになった、冷したエールの増産と販売の許可と各支店への展開の許可を求める内容が書かれていた。今、カフェエチゴヤではアルコールも販売を始めていて、ワインやこの冷したエールを取り扱っている。お陰でドワーフの固定客が付いており、安定の売上を弾き出しているらしい。わかる話だな。

 またドワーフ達からのリクエストで、扱う店を増やして欲しいとの事で、実際エールを冷すサーバー自体は、差程難しい作りではなく、またドワーフのジンテツの親方なら簡単に作ることが出来ることから、これは拡大の判断を任せてしまっても問題ないだろう。実際サーバーに使う魔石もオークから取れるサイズの物で十分だしね。
まあ、増産を考えているのなら、職人の募集の相談かもしれないが。人事については直接会って要相談とするかな。

 あと、夏に向けて新作のスイーツの作成依頼があった。
クッキー、シュークリーム、プリンと続いて、今度は何を作ろうかな。六の月までにとあったので、これも何にするのか、考えないとね。

 その報告書には以上の内容が書かれていた。
まだ月が変わらないので、他の報告書は来ていなかったが、あと二~三日すれば他からの今月の報告書も揃うだろう。

 最後にサウルからの報告書に目を通すと、屋敷に新たに三人の見習いメイドを雇いたい旨の報告とそれに伴う身元確認と掛かる経費の報告書だった。
三人共に親の代からのツールの出身で身元は実家はそれぞれ装飾品店と衣料品店と食料品店の娘とある。潜入の恐れは、まぁ大丈夫だろう。念の為に日を置いて自分が調べても良いしね。


 二人からの報告書には以上の内容が書いてあった。内容の確認が一通り出来たので、既読した印としてサインを書き込んで、既読済みのファイルに納めておいた。

 その時に丁度お昼の時間となったようで、再びサウルが扉から昼の用意が整ったと伝えに現れたのと同時だった。



 『頂きます(にゃ)。』

 久し振りの椅子に座っての食事だ。同席するのは、許嫁達三人と年少組の二人の国から来ているディートリンデの三人とサウルの七人が大人しく席に着いていた。

 アイリスもアルメイダも戦場に連れて行ってほしいと初めはいっていたが、さすがに戦いの場に子供は連れてはいけないからな。遠征にはツールに残す事にした訳だ。期間中は念の為に世界樹の元に事が終わるまで避難してもらったほうが私も安心が出来るので、祭りが無ければイーストンに行くかどうか検討した程だ。

 祭りの事でついでに思い出したが、明日の予定はどうなっていたっけな?毎日細々と忙しくて、前に聴いたが、すっかりとスケジュールはサウルに任せっきりにしていたからな。再びサウルに始まる時間くらいは、聞いておくとしようかね。

「ところでサウル?明日はスケジュールどうだったかな?今一度確認しておこうか。」
「明日でございますか?明日は、朝の食事後の九時にお祭が開催されます。その時、開催のお言葉を述べたあと、夜の六時にぉ祭り終了となります。明日は以上となります。」
「明日は開催の挨拶だけで良いのかな?」
「はい。挨拶以外は家の者が祭りの手伝いを致しますので、旦那様は開催の挨拶を宜しくお願いします。」
「分かったよ。明日は手伝い宜しく頼むね。」

 どうやら明日は、朝から一仕事の様だ。今日の内に、ハザル達にお目でとうのお祝いと役所の近況を確認しておく事とする。


 昼のメニューは、白身魚のフリットだ。地球で言うフライに似た料理だね。
 前回失敗してから、料理人達の気を引き締めたのか、今回は料理で失敗することはなかったよ。仕事に馴れが出なくなったようで安心だ。
前回でかなり料理長を脅したからね。サブでやっている者に対しても、気を配ったようだ。
この調子なら今暫くは大丈夫だろう。

『頂きました(にや)。』

 色々と考えながら食事を済ますと、食後の挨拶をしてしめた。


 午後は予定通り、役所にむかう。

 一階は民政部で各種手続きの窓口の為に、カウンターには多くの人が並んでいて受付を待っている。
私は、その奥にある階段を上へ向かい、さらに三階に続く階段をのぼっていく。
 三階の一番奥にある、行政長官の執務室に向かうと、ノックをしてから扉を開けた。

「失礼するよ。」

 その男は、声に反応したのか、読み込んでいた書類から顔を上げて、私を確認した。

「これは閣下。何かご用でしょうか?お呼び下されば、伺いましたものを。」
「それには及ばないさ。仕事中にお邪魔するよ。」

 椅子から立ち上がると執務机の前のソファーに座る様に招くと、私の対面に座った。

 一度立ち上がると、机の上の呼び鈴をならして、控えの間に居る従者をよぶ。隣の部屋で待機していたのか秘書なのかがやって来て一礼すると、その者にお茶を客人分を用意するようにと、ついでに階下にいるレオパルド卿とオルソン卿を呼んでくるように頼んだ。

 従者がお茶を用意をしてから、他の二人を呼びに行き、戻ってきたのは二人を連れて十分ほど経ってからだ。

「失礼します。」
「お邪魔します。」

二人してノックしてから部屋にはいってくる。

「これは閣下。」
「何か急なご用でしょうか?」
「入って座ってくれ。」

二人して私がこの部屋に居ることに、驚きの声をあげていた。

「実はね。三人が准男爵に昇爵したと知ってお祝いの言葉を贈ろうと思ってね。三人とも准男爵の昇爵おめでとう。」
「わざわざ有り難うございます。」
「有難うございます。」
「有難うございます。」
「三人とも、今後もツールの街のことを宜しく頼むよ。」
『はい。お任せください。』
「うん。それで、詳しくは報告書にも書いて欲しいが、最近のツールの街での問題点で浮かぶ事はないかな?」
「問題点ですか?」
「または、要望希望でもよいが、身近な改善点でも何でも良いよ。」

 3人共に質問に考え込んでしまう。腕を組んで考えたり、顔に右手を当てて考え込んだりと上を向いて天井を見ながらと三者三様にして考えこんでいたが、ハザルがボツりと話しだした。

「そうですな。強いて言えば、塩田の拡張工事を行いたいので、費用の助成と労働者の増員をお願いしたいですね。あと港の整備を閣下にお願いしたい所です。大分手狭になったようなので、こちらも拡張工事が必要かと思われます。」

ハザルは、思いついた要望を遠慮なく私に述べた。

「成程。他には?」
「私の管轄範囲では急ぎの問題は特にありませんね。」

レオパルドはそう言って黙り込んだ。

「オルソン卿は何か思いつかないかな?」
「そうですね。人手の増員については、先日既に手を打って頂きました。ですので今は取り立てて急ぎの問題はないかと。」
「そうか分かったよ。追加でも良いので、思い付いたらで報告書に記載してくれ。」
『承知しました。』

 こうして、役所との打ち合わせも無事に終わり、明日の祭りの本番を待つだけになった。











  
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