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第十七章 転げ落ちていく帝国
幕間96話 ルーナの剣。⑥
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部屋にルーナが落ち着いた所で、扉をノックする音がした。
「はい、どうぞ。」
返事をすると、扉が開き見知らぬ、いえ、知ってはいるが話したことの無い女が三人いた。
「こんにちは新人さん。とは言えあたし達も昨日来たばかりなんだけどね(笑)。ちょっとお茶でも、飲みながらお話ししない?今日はする事無いでしょ?」
「そうね。じゃ、付き合うわ。」
三人と共に階下に降りて、食堂で適当な場所に座り、厨房にお茶を頼んでから話し始める。
「あたしはボニー、でこっちの虎人族の人はルージュ。で、こっちのエルフの子はエリアルよ。大会に出ていた貴方なら顔は見たことあるでしょ?」
「そうね。全員決勝トーナメントに出た人ですもの。三人とも見たことあるわ。あたしはルーナ。狼人族のルーナよ。宜しくね、ご同僚さん達。しかし、それにしても女性の騎士自体珍しいのに、こうも種族がバラバラとは。何が基準かしら?」
「あら、分からない?簡単なことよ。強くて、更に将来強くなれる者よ。あのレナード団長が伯爵からそう言う人を集めろと言われたって言っていたわ。」
「今強くて、将来更に強くなれる人って、数いるのかしら?」
「さあ?団長は伯爵から十人から十五人集めてくれって頼まれているそうよ。なので、今回の大会に出た人を対象に勧誘しているみたいね。」
「何でそんなに強い人ばかり、集めているのかしらね?」
「ああ、それは多分だけど、伯爵の領地はツールだから、すぐ北に魔の森があるから、そこは素人だとすぐ死んじゃうからだと思うな。」
「あたしも、そう思うよ。あと、あの辺は海賊とか多いからね。」
ボニーとルージュがそれぞれ答える。
「あー、そう言う事なんだ。それで話に出てくるその伯爵様ってどんな人か聞いてる?」
「私は正直良い人だと思うわ。」
エリアルが唐突にそう答える。
「え、何かそう言える理由があるのかい?」
「強い人とは聞いているけど、性格までは話に聞いた事がないわね。」
ルージュとルーナがエリアルに尋ねる。
「私はエルフだから精霊の姿が見えるし、上位の精霊とは会話が出来るの。この屋敷には、他のどの場所よりも多くの精霊が集まってきているし、話したことのある精霊はここの主人は優しい人で側にいて気持ち良い人だって言っていたわ。」
「はあ、気持ち良い人って何?」
「さぁ、精霊達は嬉しそうに笑って言っていたわ。精霊は嘘をつかないから、良い人というのは信じて良いと思うわ。」
「まぁ、暫くしたら顔見せとかするだろうから、その時判断するさ。何てったって帝国のザラ将軍を一騎討ちで倒した程だからね。弱いってことはないだろうさ。」
「そうだね。所で、話は変わるけど、男の騎士で勧誘されて入る奴って、誰だと思うボニーさん?」
「ああ、あたしの事はボニーで良いわよルーナ。ここでは同僚なんだから、敬語はいらないわよ。それで男の騎士の予想よね?あたしが思うに、トーナメントに出ていたメイザースやレインロード辺りは堅いと思うわ。二人ともに負けたあと凄く悔しそうにしていたから。伯爵が団長よりも強いと聞けば、話に乗ってくると思うな。」
「あたしの事はルージュと呼んでくれ。単純な力ならブルーノって人も凄かったし、槍だと、ハン・リーて人も強かったよ。他にも何人か予選でも強いと思える人はいたけど、今の所はこの辺かな。」
「私はエリアルで良いわ。そうよね、やはりトーナメントに出ていた人が有力よね。」
「話に出た人達なら、下手な貴族の騎士団よりもとんでもなく強い人の集まりだね。負けてられないや。あたしも頑張ろう。まずは、その伯爵様と一回対戦してみないとね。強いって言われているけど大したことがないなら、騎士の事考え直さないと。」
「あらルーナ、貴方も対戦を望むのね?あたしもよ。」
「ボニー、あんたもかい?あたしもさ。」
「ルージュも噂の伯爵様と対戦をしたいのね?私も一度は対戦したいと思っているわ。」
「エリアルもか?なんだい、全員か。皆強い奴と戦いたいのばかりだね。(笑)」
「そりゃ剣士たる者、強い者と聞けば試したくなるってものでしょ?」
「確かにそうよね。あたしもそう思うわボニー(笑)」
「何れにしても、どうせなら強い男が来てほしいわね。弱い騎士なんて意味無いからね。」
初対面の女が四人集まって、和気藹々にこれから集まってくるだろう猛者達の力量に期待しながら、茶飲み話が続いた。
十日後。
「皆、良く私の勧誘に応じてくれた。改めて礼を言う。私はツール伯爵家騎士団の団長を勤める、レナード・フォン・ウインドフィールド騎士爵だ。ここにいる男女十五人はツール伯爵家騎士団の核となる事を期待して私が誘った者達だ。私が諸君に期待することは強さだ。そして人として正しくある事だ。強さを求めるあまり、目的と手段を取り違える者にはならないで欲しい。強くなるために、無闇に戦いを欲する事。分かりやすく言えば、戦闘狂、脳筋にはならないで欲しい。さて、これから五日後にツールに向けて移動する予定だ。当然君達にも同行して貰う。その為に、その日に向けて各自プロフェッショナルとして鍛練してくれ。本格的な集団訓練はツールに到着してからになる。詳細は随時知らせる。以上だ。では閣下、お言葉を。」
「皆、初めまして。私がツール伯爵のショウイチ・オオガミです。始めに私の事は伯爵とかではなく、閣下と呼んでくれ。年下に様付けは呼びにくいだろうからね。さて、今回は良く集まってくれました。私が諸君に期待することは一つだけです。誰かを守るために強くあれです。身近なところでは己の命であり、またツールの領民達です。戦う者が弱いということは、それは罪であると私は思います。是非精進してください。あと、何故か私との模擬戦の希望者が多いとレナードから聞きました。私も諸君の力量を知っておきたいので、この後希望者は私と模擬戦をしてもらいます。期待はずれと私をガッカリさせることの無いように頼むよ。私に負けたら罰ゲームを課すからね。以上だ。レナード後は頼むよ。」
「はっ!この後、閣下との模擬戦を希望する者はこの後直ぐに行うので、ここに残る様に。では一旦解散する。」
今日は、勧誘に応じて騎士となった十五人が、雇い主の伯爵様との顔合わせをした。伯爵様は笑顔の少年だった。帝国の将軍と一騎討ちする位だからもっと年上の団長位の年かと思っていたのに。見た目は成人したばかり位の若さだ。まさかあたしよりも若いとはね。団長の言う通り、強いのかな?そう思いながら顔合わせは終わった。
「はい、どうぞ。」
返事をすると、扉が開き見知らぬ、いえ、知ってはいるが話したことの無い女が三人いた。
「こんにちは新人さん。とは言えあたし達も昨日来たばかりなんだけどね(笑)。ちょっとお茶でも、飲みながらお話ししない?今日はする事無いでしょ?」
「そうね。じゃ、付き合うわ。」
三人と共に階下に降りて、食堂で適当な場所に座り、厨房にお茶を頼んでから話し始める。
「あたしはボニー、でこっちの虎人族の人はルージュ。で、こっちのエルフの子はエリアルよ。大会に出ていた貴方なら顔は見たことあるでしょ?」
「そうね。全員決勝トーナメントに出た人ですもの。三人とも見たことあるわ。あたしはルーナ。狼人族のルーナよ。宜しくね、ご同僚さん達。しかし、それにしても女性の騎士自体珍しいのに、こうも種族がバラバラとは。何が基準かしら?」
「あら、分からない?簡単なことよ。強くて、更に将来強くなれる者よ。あのレナード団長が伯爵からそう言う人を集めろと言われたって言っていたわ。」
「今強くて、将来更に強くなれる人って、数いるのかしら?」
「さあ?団長は伯爵から十人から十五人集めてくれって頼まれているそうよ。なので、今回の大会に出た人を対象に勧誘しているみたいね。」
「何でそんなに強い人ばかり、集めているのかしらね?」
「ああ、それは多分だけど、伯爵の領地はツールだから、すぐ北に魔の森があるから、そこは素人だとすぐ死んじゃうからだと思うな。」
「あたしも、そう思うよ。あと、あの辺は海賊とか多いからね。」
ボニーとルージュがそれぞれ答える。
「あー、そう言う事なんだ。それで話に出てくるその伯爵様ってどんな人か聞いてる?」
「私は正直良い人だと思うわ。」
エリアルが唐突にそう答える。
「え、何かそう言える理由があるのかい?」
「強い人とは聞いているけど、性格までは話に聞いた事がないわね。」
ルージュとルーナがエリアルに尋ねる。
「私はエルフだから精霊の姿が見えるし、上位の精霊とは会話が出来るの。この屋敷には、他のどの場所よりも多くの精霊が集まってきているし、話したことのある精霊はここの主人は優しい人で側にいて気持ち良い人だって言っていたわ。」
「はあ、気持ち良い人って何?」
「さぁ、精霊達は嬉しそうに笑って言っていたわ。精霊は嘘をつかないから、良い人というのは信じて良いと思うわ。」
「まぁ、暫くしたら顔見せとかするだろうから、その時判断するさ。何てったって帝国のザラ将軍を一騎討ちで倒した程だからね。弱いってことはないだろうさ。」
「そうだね。所で、話は変わるけど、男の騎士で勧誘されて入る奴って、誰だと思うボニーさん?」
「ああ、あたしの事はボニーで良いわよルーナ。ここでは同僚なんだから、敬語はいらないわよ。それで男の騎士の予想よね?あたしが思うに、トーナメントに出ていたメイザースやレインロード辺りは堅いと思うわ。二人ともに負けたあと凄く悔しそうにしていたから。伯爵が団長よりも強いと聞けば、話に乗ってくると思うな。」
「あたしの事はルージュと呼んでくれ。単純な力ならブルーノって人も凄かったし、槍だと、ハン・リーて人も強かったよ。他にも何人か予選でも強いと思える人はいたけど、今の所はこの辺かな。」
「私はエリアルで良いわ。そうよね、やはりトーナメントに出ていた人が有力よね。」
「話に出た人達なら、下手な貴族の騎士団よりもとんでもなく強い人の集まりだね。負けてられないや。あたしも頑張ろう。まずは、その伯爵様と一回対戦してみないとね。強いって言われているけど大したことがないなら、騎士の事考え直さないと。」
「あらルーナ、貴方も対戦を望むのね?あたしもよ。」
「ボニー、あんたもかい?あたしもさ。」
「ルージュも噂の伯爵様と対戦をしたいのね?私も一度は対戦したいと思っているわ。」
「エリアルもか?なんだい、全員か。皆強い奴と戦いたいのばかりだね。(笑)」
「そりゃ剣士たる者、強い者と聞けば試したくなるってものでしょ?」
「確かにそうよね。あたしもそう思うわボニー(笑)」
「何れにしても、どうせなら強い男が来てほしいわね。弱い騎士なんて意味無いからね。」
初対面の女が四人集まって、和気藹々にこれから集まってくるだろう猛者達の力量に期待しながら、茶飲み話が続いた。
十日後。
「皆、良く私の勧誘に応じてくれた。改めて礼を言う。私はツール伯爵家騎士団の団長を勤める、レナード・フォン・ウインドフィールド騎士爵だ。ここにいる男女十五人はツール伯爵家騎士団の核となる事を期待して私が誘った者達だ。私が諸君に期待することは強さだ。そして人として正しくある事だ。強さを求めるあまり、目的と手段を取り違える者にはならないで欲しい。強くなるために、無闇に戦いを欲する事。分かりやすく言えば、戦闘狂、脳筋にはならないで欲しい。さて、これから五日後にツールに向けて移動する予定だ。当然君達にも同行して貰う。その為に、その日に向けて各自プロフェッショナルとして鍛練してくれ。本格的な集団訓練はツールに到着してからになる。詳細は随時知らせる。以上だ。では閣下、お言葉を。」
「皆、初めまして。私がツール伯爵のショウイチ・オオガミです。始めに私の事は伯爵とかではなく、閣下と呼んでくれ。年下に様付けは呼びにくいだろうからね。さて、今回は良く集まってくれました。私が諸君に期待することは一つだけです。誰かを守るために強くあれです。身近なところでは己の命であり、またツールの領民達です。戦う者が弱いということは、それは罪であると私は思います。是非精進してください。あと、何故か私との模擬戦の希望者が多いとレナードから聞きました。私も諸君の力量を知っておきたいので、この後希望者は私と模擬戦をしてもらいます。期待はずれと私をガッカリさせることの無いように頼むよ。私に負けたら罰ゲームを課すからね。以上だ。レナード後は頼むよ。」
「はっ!この後、閣下との模擬戦を希望する者はこの後直ぐに行うので、ここに残る様に。では一旦解散する。」
今日は、勧誘に応じて騎士となった十五人が、雇い主の伯爵様との顔合わせをした。伯爵様は笑顔の少年だった。帝国の将軍と一騎討ちする位だからもっと年上の団長位の年かと思っていたのに。見た目は成人したばかり位の若さだ。まさかあたしよりも若いとはね。団長の言う通り、強いのかな?そう思いながら顔合わせは終わった。
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