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第十六章 サウスラーニは面倒臭い。

第343話 組織作りは大変です。

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    翌日の夕食後、いつもの白仮面を着けた変装をしてから、レナードを伴いセイトの宿屋〈レッドベアー〉に〈テレポート〉で移動した。今回はいつもと異なり、直接メーガンの部屋に移動した。

    突然部屋に現れた我々に、部屋にいる者達は一瞬ギョッとしたのか身構えたが、奥にいたメーガンが現れたのが私と判り、緊張を解いた。

「皆、安心しろ。こちらの方が前から説明していた閣下とその部下の方だ。一同座ってくれ。閣下もどうぞこちらに。」

    座っている者達と対面する形で用意されている空いていた椅子に座るために向かう。

    「閣下、今日は遅くの時間に有難うございます。ココに集まっている者達が以前にお話しした役人候補の方々です。現在三十名集まってくれました。都合が悪くて今日は来れない者があと十名程います。その者達には、ここに来た者から説明をさせます。」
「成る程。では早速始めようか?私に何が聞きたいのかな?質問者は挙手の上指名されたら名前を名乗ってから質問をしてくれ。」

    前に並んだ椅子に座っている者達に顔を向けて尋ねる。前列中央に座っている見た目三十台の頭の切れそうな目に知性の光を宿す男が手を挙げた。

「正面の貴方、どうぞ。」
「私はカーマンです。元財政部交易管理局局長でした。質問します。我々は、メーガン将軍からの計画を聞いて、この決起に参加する事を一応決めましたが、将軍の言うように貴方に帝国軍を倒すだけの力が有るのですか?また、成功した後はある意味、我々と貴方は一蓮托生の関係になります。なのに、その仮面で顔を隠している。そんな人物を信用しろと言っても、出来るものではないでしょう。信用して欲しくばまず、仮面を外して素顔を見せるのが礼儀では?」
「ふ、この仮面は帝国に私の素性を知られない為にしている物。実際にイーストンのヒラド解放に於いては、帝国に知られる事なく作戦を遂行出来たし、援軍として送られた帝国兵を殲滅した後も、私の存在は知られずに済んでいる。君達が我々の味方と確定したなら、仮面を外すことも吝かやぶさかではないが、勿論他言は禁止だがね。だが、今はダメだ。君達から情報が漏れない可能性を否定できないからね。私の故郷の昔のことわざに『蟻の一穴』と言う言葉が有るが、どんなに強固なつつみであっても、蟻の開けた小さな穴一つで堤防が決壊する原因となるってね。そうしたら、私が今度は動き難くなるからね。理解してもらいたいな。それと、作戦を成功させるだけの力が有るのかについてだ。私はこれでも現在大陸一の魔法使いでね。属性魔法のレベルはマックスの七レベルさ。それも全ての属性でね。しかも対多数の戦闘に特化していてね。相手が三万だろうが十万以上だろうが、関係なく全滅させることが出来る。対象がどの位いようが関係なく私一人で勝つことが出来るのさ。極端な事を言えば、このセイトが私に街ごと敵対するとなれば、ここに住んでいる者は残らず私の魔法で始末することが出来る程度の力は有るつもりさ。だいたい、この部屋に現れた私を見ても分かるだろう。私は〈テレポート〉の魔法でここに現れたわけだ。その事ひとつとっても、私の魔法の力がただ事ではない証明だな。ご理解頂いたかな?」
「成る程。確かに魔法の力は凄まじい事は理解しました。将軍からは作戦の概要しか聞いておりませんので、改めて貴方から説明して頂きたい。」
「いいでしょう。まず、皆さんに知っておいて貰いたいのは、セイト攻略作戦に於いては、基本戦闘は有りません。なぜなら私の魔法で敵兵力は全て麻痺して動けない状態になるからです。我々の用意した兵力は彼らを捕縛する事が主な仕事となります。何万何十万いようが、動けないのなら只の人形と変わりないですからね。当日はセイトの役人等の政府関係者全ても同じく捕縛します。その後は、各人の身の振り方を判断します。役人なら袖の下を受け取ったことが有るか無いかで判断します。因みに私は権力を持っている側の者が不正をする事は人殺しよりも嫌いなのでね。相応の罰になると覚えておいて下さい。街の人の税金で生活させて貰っているのに、権力を振りかざして不正をするなど、生かしておくり理由を認めませんからねフフフ。
話が少し横に逸れましたね。ま、捕まえた後は、そんな感じで判断します。帝国の奴隷兵については、まず隷属魔法を解呪してやり、我々の兵士として参加を募ります。勿論故郷に帰りたい人は、その場で解放しますが、多分大勢の参加を見込めますね。なぜなら、故郷に戻ってもまた奴隷狩りにあって、帝国兵にされるのがオチだからね。実際の話、帝国が分裂または消滅しない限り、奴隷兵士達には安住の地は無いのだから。ここまでは良いかな君?」
「成る程。貴方のおっしゃりたい事は分かりました。イーストンでの成功した実績がおありだと聞いています。その貴方に言われるなら納得いたします。」

そう答えて、椅子に座る。

「他には?」
「私からも質問させて下さい。」
「どうぞ。」

今度は若手なのか。二十歳半ばの男からの質問だ。

「テールズと申します。元国務部民事局の主任をしていました。我々が貴方を手伝い、役人として働くとして、この国をどの様な形で治めるお積もりですか?貴方が新たな王となり、王国を治めるのですか?どうですか?」
「まず皆には先にこれだけは知っておいて欲しい。個人的に私は王となることを欲しない。と言うよりもなりたくなど無い。理由として、君は王になりたいかい?あんな面倒臭いばかりで、自分の時間も取れず、常に民の事を考えて国を富まし治安を正す。そんな毎日を送ることに楽しみが有るかね?素性の一端を明かすが、私は他国の地方領主をしている。」

話した途端、目の前に座る者達がざわめき始める。

「それでは、貴方の力で独立しても、今度は帝国の代わりに貴方の所属する国の属領となるのですか?それでは今と何ら変わらないではないか!」

質問していた若い役人候補が思わず激昂して叫んだ。

「静まれ!」

押さえていた、覇気と殺気をほんの少し解放して、静かにしろと嗜めた。途端にその場にいた役人候補達は青ざめ黙り込む。中には青ざめるだけでなく、ガタガタと身を震わせている者もいた。

「おっと、失礼したね。まぁ、人の話しは良く聞くように。いいね?先程も言っておいたが、私は独立後にサウスラーニの王座に着く気は全くない。また、私が所属している国もサウスラーニ独立後に深く交易はしたいとは思っても、支配下に置きたいとは思っていない。安心しろ。私がメーガンから請け負った依頼は、帝国からの独立であって、独立後の面倒までは見るつもりはない。独立後は君達の責任で国は維持すること。誰が王になろうと私は関知しない。勿論私の所属する国もだ。理解したかな?」
「私としては、是非に閣下に統治して頂きたいですがね。」
「メーガン、無茶を言うなよ。この人数でさえ反対する者が出るのに、それらを黙らせて統治するなど、面倒な限りだね。旧サウスラーニの全土独立するまでは力を貸すが、以後は関与はしないから。独立後は自力で頼むよ。もともと独立とはそう言う意味なんだからね。反対する以上、その責任は君達に在るからね。まあ、話を戻すが。セイトを取り戻したら、近場の二つの街のどちらかから制圧していくことになる。お勧めは西のローランかな。セイトの背後になるし、帝国からは狙われ難いからね。そうして、兵を募り少しずつ国力を上げていく事になるかな。方針としてはこんなところかな。皆わかったかな?」

    言いたい事を伝えて、周りを見回してから皆に聞くと何故か皆黙ってコクコクと首を縦に振るのだった。
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