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第十五章 王都で貴族のお仕事。そして・・・。
第327話 オーガって、意外と・・・。
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皆を引き連れて、中央山脈を抜ける山道を登っていると、いきなり赤い光点が現れると、山道の上から体長五メートルはある、ワニのような、トカゲの大きいのが二体現れた。
「〈鑑定〉。」
(鑑定結果・名称ロックアーマーリザード。身体レベル十八。雑食。背中が岩の様に硬く、斬撃・打撃に対して強いが代わりに魔法に弱い。得効、氷属性。有効水属性。)
「ロックアーマーリザードだって。武器による攻撃はあの背中の為か効きにくいみたいだね。氷属性か水属性が有効だって。レナードとセイラは私と共に敵をちかずけさせないように、ソニアとアイリスは魔法で攻撃ね。アルメイダは私の後ろにいるように。シーラは皆のフォローをして。ディートリンデは任せる。」
指示を出した途端に魔物達は意外と素早い動きでこちらへと近付いてくる。
「うにゃ!気持ち悪いのが近付いて来るにゃ。」
「アルメイダ、これをアイツ等に投げ付けてやりな。」
そう言って〈エンチャント・ウィンド〉をかけて切れ味を増した、投擲用の短剣をわたす。
「味方に当てないように。気を付けるんだぞ。」
「わかったにゃ。」
渡された短剣を三本持って此方へ突っ込んで来ようとするトカゲを盾や剣で引き留めているレナードとセイラの二人の横に回りこんで短剣を投げつける。
「エイにゃ!」
一本は外れたが。二本は何とか二体に傷を付けられたようだ。慌てて戻ってきて、私の後ろに隠れる。
アルメイダが戻ってくるのと同じくして、魔法の詠唱が始まる。
「セレス頼むわ?」
「お呼びかしら。アイリス。」
「こんな感じで、アイスランスをお願い。」
「そうね、魔力四十五かかるけどヤル?」
「ええ、お願い。〈アイスランス〉!」
セイラが押さえ込んでいるトカゲに真上から氷の槍が三本突き立つ。
「グゥエゲゲー!」
背中に三本の氷の槍が刺さったまま、のたうち回るトカゲ。その横で、レナードが食い止めているトカゲに向かって、ソニアの魔法が発動する。
「アイスキューブ!」
トカゲの頭上五メートル程から直径一メートルの氷の塊が落ちてくる。
ドガッと音を立てて、トカゲの背に当たる。氷は当たって割れるが、当たった部分からトカゲの背中が凍りついていく。次第に胴体全てが凍りつくと、トカゲは動かなくなった。
アイスランスの刺さったトカゲには、さらに三本のアイスランスが刺さっており、心臓を貫いたのかこちらも息絶えている。
「うにゃあ!」
私の後ろで、アルメイダが一声上げると、崩れ落ちていく。
どうやら急なレベルアップで酔ったようだ。ぐったりしたアルメイダを抱き起こして抱える。
気を失っているのか、目を冷まさない。
「〈キュア〉、〈リフレッシュ〉、〈リジェネレーション〉。」
どれか効くかなと、回復系の魔法を立て続けにかける。〈リジェネレーション〉で、意識を回復した様で、目を覚ます。
「うにゃ。どうしたのかにゃ・・・兄ちゃん、抱っこしてくれてありがとにゃ。」
「どういたしまして。もう気持ち悪くはないかい?」
「うん、大丈夫にゃ。前よりも、体が軽くなった気がするにゃ。」
そう言って、回りを見てから地面におりる。
「皆も体調は大丈夫かな?」
「ええ、問題ありませんわ。ショウ様。」
「私も大丈夫です、コーチ。」
「大丈夫よ、ショウさん。」
「勿論です閣下。」
既に息絶えている、トカゲの死体をインベントリィにしまい、再び山道を登り始める。
「伯爵殿、先程の魔物にしろ、皆落ち着いて対応してましたが、何故なのでしょう。」
「簡単なことです。何回も自分よりも強いモノと戦っていると、誰もが何をすると効率良く戦えるのか分かってくるのですよ。勿論、自分よりも強い相手ですから、細心の注意がいりますがね。」
ディートリンデが不思議そうに聞いてくる。エルフの軍隊や部隊では連携とか重視しないのかな。
個人戦闘力が高いから、そういう発想が無いのかなと、話ながら道を進む。
「はーい、一旦止まってね。目標の近くになりましたので、シーラ、強化魔法を私以外にかけてやってくれるかい?」
「わかりました。」
シーラが、レナードとセイラと自身にエンチャントで強化していく。
素早さと力と防御力そして武器にエンチャント・ファイアをかけた。
ソニアとアイリス、ディートリンデには、素早さ、防御力、そして魔力の強化をする。
私はそれを確認してから、自分を強化していく。
「〈エンチャント・ファイア〉〈エンチャント・ウィンド〉〈エンチャント・アース〉〈エンチャント・ダーク〉。シーラには〈リフレッシュ〉と。皆に〈マルチロック〉〈リフレクション〉。後は必要に応じて『気』で強化すると。皆、準備はよいか?アルは、私が魔法の〈フラッシュ〉を使ったらこの投擲用の短剣を思いっきりに投げたら危ないから直ぐに後ろの方で隠れているように。分かったね?」
「分かったにゃ。兄ちゃんの魔法の後に短剣を投げたら後ろに逃げるにゃ。」
「さっきも言ったが、石斧を持っているオーガは、私の獲物だ。手を出さないように。さて、行くぞ。」
『おう!』
山道の頂上となる峠の部分は左右が切り立つ岩場で結構開けた広場の様になっている。
「〈マルチロック〉。武器の用意をしろ。よし、いくぞ。〈フラッシュ〉!」
岩影から飛び出して、先制の魔法を食らわせる。
目標のオーガ達は左手の崖側に焚き火をしながら二体は立ち、一体は座っていた。
三体ともに、目の前でいきなりカメラの強力なストロボを使われたのと同じく、痛みはないが目眩ましを食らったようで、三体ともに己の目を押さえて呻いている。
「アルやれ!」
「エイにゃ。エイにゃ。エイにゃ!」
(おお、三体に全部刺さったよ。大したもんだ。)
「〈ヘイスト〉〈エンチャント・ファイア〉。」
最後に強化をして、石斧を手に持って座っているオーガチーフに仕掛ける。
眩しさにいち早く回復したのか、近付く私に向かって立ち上がると石斧を振り下ろしてくる。鋭さは感じないが、パワーは風切り音でわかる程だ。
身をよじって、石斧を避け擦れ違いざまに石斧を持つ右腕を斬りつける。
肩の下。二の腕に大きい傷を与えたが、石斧を左手に持ちかえると、何事かを叫ぶ。
すると、オーガの前に石の礫が浮かび上がると、もう一声吠えると、石の礫が一斉に私に向かい飛んできた。
「〈ブレイクマジック〉。」
一斉に向かってきた石の礫は二人の間で、消えてしまった。
「残念だったな。投射型の魔法は私には効かないよ。」
自身の魔法を消された事に、驚きはしたが、直ぐに再び叫び声をあげる、今度は先程とは異なる叫びだった。
何か魔力の塊が飛んでくる気配を察知したので、『気』を通したバスタードソードでその存在に対して三回宙を斬りつける。
『ギン、ギャリ、ギャン』と三回魔力の塊を切り裂いた。
「おや、見えない所をみると、風属性の魔法だった様だね。残念だったね。言ったろう。投射型は効かないってね。」
別に私の言葉が伝わっている訳ではないが、自信の技だったのか、魔法が効かないことに驚いている様子だ。
「さて、ケリをつけようか長引くと面倒だ。早めに倒すとするか。」
『気』を体に巡らせ、足の一蹴りで〈舜歩〉を発動する。
突然に姿が消えた事で身構えてはいるが、既に私は背後をとっており、『気』に充ちて白く輝くバスタードソードを左から右へ払い斬る。
ゆっくりと振り返り石斧を振りかぶろうとするが、その最中に首がポロリと落ちて、体も崩れ落ちる。
(ピロ~ン♪身体レベルが上がりました。『職業・パラディン』『職業・勇者』が上がりました。『武技の極み』により、スギル〈心眼〉が上がりました。『魔導の極み』により、スギル〈魔力察知〉が上がりました。)
(おや、久方ぶりに色々と上がったな。後でチェックだ。他の皆はどうかな?)
一息吐いた所で、回りを見ると、レナードとシーラ、ソニアが組んで一体を、セイラとアイリス、ディートリンデが組んでもう一体を相手に戦っていた。
「戦いながら聞けよ。オーガは体に多少傷をつけても時間と共に回復する。あまり意味はない。倒すには心臓を突き刺すか首を斬り飛ばすかの二択しかない。出来れば首を跳ねる方をお勧めする。心臓は胸の筋肉によって防がれてしまう危険性があるからね。注意してくれよ。」
注意をした後に、後ろで再びレベルアップ酔いでぐったりしているアルメイダを見に行く。
「〈リフレッシュ〉〈リジェネレーション〉、」
治癒魔法によってアルメイダは目を覚まし、頭をブンブン振って気を確かにする。その時背後で『ドゴン!』『ゴキッ!』と結構大きな音が立て続けにしたので、慌てて振り返ると、シーラのウォーハンマーがオーガの右膝にクリーンヒットし更にオーガが膝を押さえて、前屈みにしゃがむ。その胸には大きな丸い焼け焦げた跡があった。その隙を逃さずにオーガの右側に回り込み剣を振り下ろした。剣はオーガの首を斬り飛ばして見事にオーガを倒したのだ。
「にゃ!」
叫ぶアルメイダを見ると、ビクッと体を震わせて、尻尾の毛を逆立てていた。どうやらレベルアップしたようだね。慣れたのか、今回は酔わなかったようで倒れる事はなかった。
一方、セイラ達の方はというと、こちらは中々苦戦中だ。
傷自体は多く与えているが、オーガの防御力というか皮膚の堅さというか、どの傷も浅いようで精々エンチャントで焼かれた為に傷が再生しないのが慰めだ。
「手を貸そうか?」
私が尋ねると、即座に『結構ですわ』とお断りをされる。
(まぁ、体力もまだ大丈夫の様だし、もう少し様子をみるか。)
手は出さないで、今しばらく様子見することにする。この間に、始末したオーガ二体はインベントリィに収納しておく。
「アイリス!炎属性魔法の槍を背中に向かって頼むわ。」
「分かったわ。」
セイラの後方にいたアイリスがディートリンデを従えてオーガの右手側に回り込み、呪文を唱える。
「お願いサラマンドラ!このイメージでオーガの背中に四本お願い。こんな感じで。」
「魔力百だが?」
「了解よ。〈ファイア・ランス〉!」
アイリスの目前に、ショートランスサイズの炎の槍が四本現れ、オーガに向かってかなりのスピードで飛んでいき、背中に次々と突き刺さる。
「グワガャァァァ!」
痛さに仰け反ったのか、大きな隙を見せる。
その隙を逃さずに。大きく踏み込んで、平突きを決め、抜く時に横に払う。そして返す剣で両手持ちにして、左へと首をはね飛ばした。
『パチパチパチ。』
思わず称賛の拍手をした。
「よい連携だったな。どちらか片方だけでは難しかったかもね。良く倒した。」
そう言って、倒したオーガを収納する。
「はーい、皆ご苦労様でした。依頼にあったオーガ達は無事に討伐できました。協力頂き有難うございました。この後の事ですが、夕方まで狩りを続けるか、早めに帰るか。どっちにしますか?」
結局、その日は夕方近くまで、魔物狩りをして、お嬢様達のストレスを抜くこととなった。
(時にはガス抜きしないと、怖いわ~。)
「〈鑑定〉。」
(鑑定結果・名称ロックアーマーリザード。身体レベル十八。雑食。背中が岩の様に硬く、斬撃・打撃に対して強いが代わりに魔法に弱い。得効、氷属性。有効水属性。)
「ロックアーマーリザードだって。武器による攻撃はあの背中の為か効きにくいみたいだね。氷属性か水属性が有効だって。レナードとセイラは私と共に敵をちかずけさせないように、ソニアとアイリスは魔法で攻撃ね。アルメイダは私の後ろにいるように。シーラは皆のフォローをして。ディートリンデは任せる。」
指示を出した途端に魔物達は意外と素早い動きでこちらへと近付いてくる。
「うにゃ!気持ち悪いのが近付いて来るにゃ。」
「アルメイダ、これをアイツ等に投げ付けてやりな。」
そう言って〈エンチャント・ウィンド〉をかけて切れ味を増した、投擲用の短剣をわたす。
「味方に当てないように。気を付けるんだぞ。」
「わかったにゃ。」
渡された短剣を三本持って此方へ突っ込んで来ようとするトカゲを盾や剣で引き留めているレナードとセイラの二人の横に回りこんで短剣を投げつける。
「エイにゃ!」
一本は外れたが。二本は何とか二体に傷を付けられたようだ。慌てて戻ってきて、私の後ろに隠れる。
アルメイダが戻ってくるのと同じくして、魔法の詠唱が始まる。
「セレス頼むわ?」
「お呼びかしら。アイリス。」
「こんな感じで、アイスランスをお願い。」
「そうね、魔力四十五かかるけどヤル?」
「ええ、お願い。〈アイスランス〉!」
セイラが押さえ込んでいるトカゲに真上から氷の槍が三本突き立つ。
「グゥエゲゲー!」
背中に三本の氷の槍が刺さったまま、のたうち回るトカゲ。その横で、レナードが食い止めているトカゲに向かって、ソニアの魔法が発動する。
「アイスキューブ!」
トカゲの頭上五メートル程から直径一メートルの氷の塊が落ちてくる。
ドガッと音を立てて、トカゲの背に当たる。氷は当たって割れるが、当たった部分からトカゲの背中が凍りついていく。次第に胴体全てが凍りつくと、トカゲは動かなくなった。
アイスランスの刺さったトカゲには、さらに三本のアイスランスが刺さっており、心臓を貫いたのかこちらも息絶えている。
「うにゃあ!」
私の後ろで、アルメイダが一声上げると、崩れ落ちていく。
どうやら急なレベルアップで酔ったようだ。ぐったりしたアルメイダを抱き起こして抱える。
気を失っているのか、目を冷まさない。
「〈キュア〉、〈リフレッシュ〉、〈リジェネレーション〉。」
どれか効くかなと、回復系の魔法を立て続けにかける。〈リジェネレーション〉で、意識を回復した様で、目を覚ます。
「うにゃ。どうしたのかにゃ・・・兄ちゃん、抱っこしてくれてありがとにゃ。」
「どういたしまして。もう気持ち悪くはないかい?」
「うん、大丈夫にゃ。前よりも、体が軽くなった気がするにゃ。」
そう言って、回りを見てから地面におりる。
「皆も体調は大丈夫かな?」
「ええ、問題ありませんわ。ショウ様。」
「私も大丈夫です、コーチ。」
「大丈夫よ、ショウさん。」
「勿論です閣下。」
既に息絶えている、トカゲの死体をインベントリィにしまい、再び山道を登り始める。
「伯爵殿、先程の魔物にしろ、皆落ち着いて対応してましたが、何故なのでしょう。」
「簡単なことです。何回も自分よりも強いモノと戦っていると、誰もが何をすると効率良く戦えるのか分かってくるのですよ。勿論、自分よりも強い相手ですから、細心の注意がいりますがね。」
ディートリンデが不思議そうに聞いてくる。エルフの軍隊や部隊では連携とか重視しないのかな。
個人戦闘力が高いから、そういう発想が無いのかなと、話ながら道を進む。
「はーい、一旦止まってね。目標の近くになりましたので、シーラ、強化魔法を私以外にかけてやってくれるかい?」
「わかりました。」
シーラが、レナードとセイラと自身にエンチャントで強化していく。
素早さと力と防御力そして武器にエンチャント・ファイアをかけた。
ソニアとアイリス、ディートリンデには、素早さ、防御力、そして魔力の強化をする。
私はそれを確認してから、自分を強化していく。
「〈エンチャント・ファイア〉〈エンチャント・ウィンド〉〈エンチャント・アース〉〈エンチャント・ダーク〉。シーラには〈リフレッシュ〉と。皆に〈マルチロック〉〈リフレクション〉。後は必要に応じて『気』で強化すると。皆、準備はよいか?アルは、私が魔法の〈フラッシュ〉を使ったらこの投擲用の短剣を思いっきりに投げたら危ないから直ぐに後ろの方で隠れているように。分かったね?」
「分かったにゃ。兄ちゃんの魔法の後に短剣を投げたら後ろに逃げるにゃ。」
「さっきも言ったが、石斧を持っているオーガは、私の獲物だ。手を出さないように。さて、行くぞ。」
『おう!』
山道の頂上となる峠の部分は左右が切り立つ岩場で結構開けた広場の様になっている。
「〈マルチロック〉。武器の用意をしろ。よし、いくぞ。〈フラッシュ〉!」
岩影から飛び出して、先制の魔法を食らわせる。
目標のオーガ達は左手の崖側に焚き火をしながら二体は立ち、一体は座っていた。
三体ともに、目の前でいきなりカメラの強力なストロボを使われたのと同じく、痛みはないが目眩ましを食らったようで、三体ともに己の目を押さえて呻いている。
「アルやれ!」
「エイにゃ。エイにゃ。エイにゃ!」
(おお、三体に全部刺さったよ。大したもんだ。)
「〈ヘイスト〉〈エンチャント・ファイア〉。」
最後に強化をして、石斧を手に持って座っているオーガチーフに仕掛ける。
眩しさにいち早く回復したのか、近付く私に向かって立ち上がると石斧を振り下ろしてくる。鋭さは感じないが、パワーは風切り音でわかる程だ。
身をよじって、石斧を避け擦れ違いざまに石斧を持つ右腕を斬りつける。
肩の下。二の腕に大きい傷を与えたが、石斧を左手に持ちかえると、何事かを叫ぶ。
すると、オーガの前に石の礫が浮かび上がると、もう一声吠えると、石の礫が一斉に私に向かい飛んできた。
「〈ブレイクマジック〉。」
一斉に向かってきた石の礫は二人の間で、消えてしまった。
「残念だったな。投射型の魔法は私には効かないよ。」
自身の魔法を消された事に、驚きはしたが、直ぐに再び叫び声をあげる、今度は先程とは異なる叫びだった。
何か魔力の塊が飛んでくる気配を察知したので、『気』を通したバスタードソードでその存在に対して三回宙を斬りつける。
『ギン、ギャリ、ギャン』と三回魔力の塊を切り裂いた。
「おや、見えない所をみると、風属性の魔法だった様だね。残念だったね。言ったろう。投射型は効かないってね。」
別に私の言葉が伝わっている訳ではないが、自信の技だったのか、魔法が効かないことに驚いている様子だ。
「さて、ケリをつけようか長引くと面倒だ。早めに倒すとするか。」
『気』を体に巡らせ、足の一蹴りで〈舜歩〉を発動する。
突然に姿が消えた事で身構えてはいるが、既に私は背後をとっており、『気』に充ちて白く輝くバスタードソードを左から右へ払い斬る。
ゆっくりと振り返り石斧を振りかぶろうとするが、その最中に首がポロリと落ちて、体も崩れ落ちる。
(ピロ~ン♪身体レベルが上がりました。『職業・パラディン』『職業・勇者』が上がりました。『武技の極み』により、スギル〈心眼〉が上がりました。『魔導の極み』により、スギル〈魔力察知〉が上がりました。)
(おや、久方ぶりに色々と上がったな。後でチェックだ。他の皆はどうかな?)
一息吐いた所で、回りを見ると、レナードとシーラ、ソニアが組んで一体を、セイラとアイリス、ディートリンデが組んでもう一体を相手に戦っていた。
「戦いながら聞けよ。オーガは体に多少傷をつけても時間と共に回復する。あまり意味はない。倒すには心臓を突き刺すか首を斬り飛ばすかの二択しかない。出来れば首を跳ねる方をお勧めする。心臓は胸の筋肉によって防がれてしまう危険性があるからね。注意してくれよ。」
注意をした後に、後ろで再びレベルアップ酔いでぐったりしているアルメイダを見に行く。
「〈リフレッシュ〉〈リジェネレーション〉、」
治癒魔法によってアルメイダは目を覚まし、頭をブンブン振って気を確かにする。その時背後で『ドゴン!』『ゴキッ!』と結構大きな音が立て続けにしたので、慌てて振り返ると、シーラのウォーハンマーがオーガの右膝にクリーンヒットし更にオーガが膝を押さえて、前屈みにしゃがむ。その胸には大きな丸い焼け焦げた跡があった。その隙を逃さずにオーガの右側に回り込み剣を振り下ろした。剣はオーガの首を斬り飛ばして見事にオーガを倒したのだ。
「にゃ!」
叫ぶアルメイダを見ると、ビクッと体を震わせて、尻尾の毛を逆立てていた。どうやらレベルアップしたようだね。慣れたのか、今回は酔わなかったようで倒れる事はなかった。
一方、セイラ達の方はというと、こちらは中々苦戦中だ。
傷自体は多く与えているが、オーガの防御力というか皮膚の堅さというか、どの傷も浅いようで精々エンチャントで焼かれた為に傷が再生しないのが慰めだ。
「手を貸そうか?」
私が尋ねると、即座に『結構ですわ』とお断りをされる。
(まぁ、体力もまだ大丈夫の様だし、もう少し様子をみるか。)
手は出さないで、今しばらく様子見することにする。この間に、始末したオーガ二体はインベントリィに収納しておく。
「アイリス!炎属性魔法の槍を背中に向かって頼むわ。」
「分かったわ。」
セイラの後方にいたアイリスがディートリンデを従えてオーガの右手側に回り込み、呪文を唱える。
「お願いサラマンドラ!このイメージでオーガの背中に四本お願い。こんな感じで。」
「魔力百だが?」
「了解よ。〈ファイア・ランス〉!」
アイリスの目前に、ショートランスサイズの炎の槍が四本現れ、オーガに向かってかなりのスピードで飛んでいき、背中に次々と突き刺さる。
「グワガャァァァ!」
痛さに仰け反ったのか、大きな隙を見せる。
その隙を逃さずに。大きく踏み込んで、平突きを決め、抜く時に横に払う。そして返す剣で両手持ちにして、左へと首をはね飛ばした。
『パチパチパチ。』
思わず称賛の拍手をした。
「よい連携だったな。どちらか片方だけでは難しかったかもね。良く倒した。」
そう言って、倒したオーガを収納する。
「はーい、皆ご苦労様でした。依頼にあったオーガ達は無事に討伐できました。協力頂き有難うございました。この後の事ですが、夕方まで狩りを続けるか、早めに帰るか。どっちにしますか?」
結局、その日は夕方近くまで、魔物狩りをして、お嬢様達のストレスを抜くこととなった。
(時にはガス抜きしないと、怖いわ~。)
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