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第十三章 何でも準備中が一番楽しいのさ。

第239話 朝の『もう、五分』は認められることがないのは何故?

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    「旦那様、朝でございます。お起き下さい。食事の用意が出来ております。旦那様。」

   (え? もう朝なのか?夜中に起こされたからなぁ。今日は眠いぜ。もう少し寝かしてくれぇ。)


    「・・・悪いサウル、もう五分寝かしてくれ・・・。」
「ふぅ~。珍しいですね。旦那様が中々起きないのも。致し方ございません。旦那様、失礼致します。」

    そう言うと、掛け布団を引き剥がされると、布団の上に丸まっていたアルメイダが驚いて飛び上がり、ショウの顔の上に着地して、辺りを見回す。

「どわっ!な、何だ?!顔の上に何かが。前が見えないぞ。」
「な、何にゃ?」
「煩いわね。もう朝なの?」

    サウルが顔の上のアルメイダを抱き上げると、やっと目を開けられた。

    「酷いじゃないか、サウル。」
「お目覚めでしょうか、旦那様?朝の仕度が整っております。皆様も食堂にお揃いです。早くお支度を。」
「ご飯かにゃ?」
「あら、急がなくては。・・・まぁ、ショウさん、貴方精霊と契約を済ませたのね?」
「うん?ああ、昨日の夜中にね。お陰で眠くて。ふぁ、飯に行くかぁ。」

    ベッドの上から下りて、着替えを済まし、自分達に〈クリーン〉をかけてから食堂に向かう。

「皆、お早う。遅くなって申し訳ない。」
「「「ショウ様、お早うございます。」」」
「閣下、お早うございます。体調がお悪いのですか?」
「いや、昨日夜中にね起きてしまい、中々寝付けなかった物だから、少し眠くてね。体調に問題はないよ。」
「でしたら宜しいのですが、最近は何かとお忙しいですから、余り無理はされませんように。」
「有難う。体調には気を付けるよ。さぁ、始めてくれ。」

    私の掛け声で、それまで壁際で待っていたメイドさん達が、一斉に給仕に動く。

    今日の朝のメニューは、野菜のマリネと甘いものポタージュ、メインはボイルした太いソーセージが三本とマスタードとケチャップの二種類のソース付と、マッシュポテト。最後に白パンだった。
マッシュポテトがあるなら、ジャンクフードの王様のアレも作ることが出来る。
そう、ポテトフライだ。他にもコロッケやポテチも作れるな。正直じゃがいもモドキが有るとは思って無かった。味も色合いも舌触りも、まさにじゃがいもだった。
食後にサウルに芋の事を詳しく聞くと、余り貴族家では使われない食材で、平民達の間で、バロン芋と言われているとのことだ。味は良いのだが、たまに腹痛や腹下しを起こすので、貧しい者達が、承知で食べている事が多いと聞く。
それを聞いて、多分発芽した芽の部分も食べた為かなと思い、サウルにその事を伝え、領民にも、芽の出た部分は食べないように広めてくれと伝えた。
サウルは私からの腹痛や下痢の原因を聞き驚いていたが、早速領内に広めますと、一礼して下がっていく。

    『いただきました。』をした後に、ソニアとセイラに実家に向かう用意をするように伝えた。
私は一旦執務室に戻り、未決済の書類を確認して、二人の準備が整うのを待っていた。
    最後の一枚にサインした所で、執務室に二人が入ってくる。書類を既決の箱に入れて立ち上がり、二人に近づいて話しかける。

    「準備は良いかな?」
「ええ、大丈夫ですわ。」
「はい、お願いしますわ、コーチ。」
「じゃあ、いきますか。〈テレポート〉。」

    目に写る光景が、一瞬歪んだかと思ったら、王都の屋敷の執務室に転位している。

「はい、着きましたよ。」

二人に声をかけてから、机の上の呼び鈴を鳴らす。
少し待つと、執事のカインが、部屋に入ってきた。

    「お帰りなさいませ、皆様。」
「ただいま、カイン。早速だが、お城と公爵邸に向かうから、馬車を用意してくれるかな?二人を置いてきたら、そのまま、ツールに戻るから。」
「分かりました。ご用意致します。」

    十分程待つと、カインが再び部屋に入ってきて、馬車の用意が出来たことを告げる。
馬車に乗り、まずはお城に向かってもらう。

    いつもの応接室で、待っていると、陛下が王妃様を連れて入ってきた。
立ち上がり、頭を下げて迎える。二人は、私の対面に座ると、早速話しかけてくる。

    「顔を上げてくれ。ソニアも一緒に今日は何かな?」
「はい、ソニアから連絡がいったかとは思いますが、無事に彼女の病が完治しましたので、顔見せに暫く王宮に里帰りさせようと思いまして、お連れしました。」

そう告げると今度は嬉しい顔の王妃様から質問される。

「手紙では、既に聞いておりましたが、本当に治ったのね、ソニア?」
「はい、お母様。魔物狩りで、わたくしの身体レベルが二十を越えましたら、熱も出ることなく、朝の魔力が戻ったときでも、体のダルさはなく、本当に病だったのかと不思議に思うくらい、快調ですわ。」
「まあまあ。それは何よりですわ。オオガミ伯爵、改めてソニアの事、感謝いたしますわ。」
「うむ。オオガミよ、有難う。」
「いえ、ソニアも魔法を懸命に勉強して、慣れない魔物狩りをこなして、今では立派な魔法使いになられました。本人の努力ですよ。」
「それでも、お主がおらねば、治し方も不明なままであったのだ。親として感謝しておる。」
「そうですよ。こんなに元気になって、オオガミさん有難う。」

    王様夫妻には、明後日の午前に迎えに来ることを告げると、二人の前から辞した。

    馬車に戻ると、セイラがつまらなさそうに待っていた。

「お待たせ。さあ、公爵邸に向かうよ。」

そう告げると、馬車を向かわせる。
公爵邸は城の隣なので、すぐに着いた。
門で要件をつげ、玄関口に馬車を着けると、セイラと共に馬車を下りる。

「お帰りなさいませ、セイラお嬢様。いらっしゃいませ、オオガミ様。どうぞ中に。」

家宰のセバスさんに案内されてリビングに着くと、既に公爵夫妻が座って待っている。


「やあ、いらっしゃいオオガミ君。今日は何かな?」
「はい、一週間後に暫く仕事で領外に出て留守をするのでセイラとソニアには久しぶりに里帰りしてもらおうかと連れて参りました。」
「そう、それは済まないね。いつまで泊まっていけるのかな?」
「明後日午前中に迎えにまた参ります。」
「分かったよ。配慮有難う。妻も喜ぶよ。」
「有難う、オオガミさん。セイラ、元気にしてましたか?また、後でツールでの事を色々聞かせてね。」
「ええ、お母様。お話出来る事が一杯ありますわ。」
「まあ、楽しみだこと。」
「では、明後日の午前中に迎いに来ますので、それまでセイラを宜しくお願いします。」

    頭を下げてお願いをして、公爵邸を辞した。
  


                                                    
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