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第十三章 何でも準備中が一番楽しいのさ。

第233話 タダでは手に入らないのがお約束。

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    無事にオークの集落を潰して、目的地のミスリルの鉱脈のある場所に向かう一行。

    集落を後にして一時間もしない内に、木立は切れて目の前が広く開ける。中心に大きな山々が南北に並び立ち、その裾野の周囲を森が囲んでいる。山には木は育っておらず、せいぜいが麓に広葉樹の低木の森あり、山肌は殆どはむき出しの土や岩がみえている。山の麓に着くと、一旦休憩にする。時間はお昼を既に過ぎている頃だった。

    「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・魔物〉。」

    (おや、何故か山には一体しか魔物がいなくて、山の周囲もここだけ魔物の分布に穴が空いてるな。・・・何か嫌な予感がひしひしとするのだが。取り敢えずこの一体の魔物が何か調べないとね。)

    「〈鑑定・赤い光点〉。」

(鑑定結果・指定の赤い光点はミスリルゴーレムだよ。ほこらを守っているよ。結構硬くて強いよ。倒すとミスリルの塊が手にはいるね。一定範囲に入らなければ襲ってこないから、頑張ってね。)

    「なにぃ~!祠だとと!?」
「ショウ様、どうなさいましたの?急に声を上げて。」
「そうです閣下。いきなり大声を上げて。どうしましたか?」
「いや、この辺を調べていたら、祠があるって。」
「まぁ、祠ですか。何の祠でしょう?」
「やっぱり遺跡は珍しいのかい?」
「そうですわね。山岳地帯の国に割りと多いので、平地が多いウェザリアにも一ヶ所有りますが、これで二つ目になりますわね。」

    セイラが教えてくれる。他にも遺跡はあったのか。まあ、他国より少ないそうだが。

    「まあ、ガーディアンのゴーレムがいると言うことは、未踏の遺跡みたいだね。楽しみだ。」
「閣下、楽しみの前に、そのゴーレムを何とかしないと。しかも、そのゴーレムはミスリルゴーレムだとか。Sクラスの魔物じゃないですか。どうするんですか?」

    ライガが、ぼやきながら聞いてくる。

    「そんなにミスリルゴーレムって強いの?戦った事ないから知らないのだけど?」
「あ~、戦った者の方が少ないですよ。冒険者ギルドで聞いたことは?」
「いや、無いなぁ~。まともに冒険者だけで過ごしたのは三ヶ月位だし。すぐに伯爵にされちゃったし。」
「・・・・」
「・・・・」

無言になるレナードとライガ。

    「まあ、さすがショウ様ですわね。」
「流石コーチですわ。ミスリルとは言え、たかがゴーレムに怖れることは有りませんわ。」
「いや、セイラお嬢。ゴーレムは材質によって、強さが全く違うんですぜ!」
「え、そうなんですの?」
「これだから、もう。良く聞いてくだせい。金属製のゴーレムに成る程強くてですね。判っている中でも一番強いのはアダマンタイト製のゴーレムで、ミスリル製のゴーレムは二番目に強くて厄介なんですよ。」
「何が厄介なんですの?」
「ミスリル製のゴーレムは、他のゴーレムよりもパワーがあって、しかもミスリルは軽い為、身軽で素早いんです。しかも、魔法に対して強い耐性も持っているので、魔法で攻撃してもダメージが入りにくいのです。とても厄介なやつなんですよ。」
「ふ~ん、そうなんだ。まあ、戦えば分かることだね。」
「閣下、そんな軽く言う相手じゃないですぜ。」

    やれやれと言った感じで、呆れるライガ。

    「それよりも、もうお昼回っているから、昼食にしようよ。」

    私はそう言いながら、インベントリィからテーブルと椅子を取り出して、平らな場所に置いていく。テーブルの真ん中に肉野菜シチューの入った寸胴鍋を出して、木製の椀とスプーンと籠に入っている白パンとコップに大きな水筒から水を注いだのを出して皆に座る様に言う。

    「・・・・閣下、普通は干し肉と黒パンと水なんですが、これは一体。」

    唖然として料理をみているライガ。各自の椀にシチューを盛りながら答える。

    「旨い飯の方が頑張れるだろ?これは以前にリヒトの町で通っていた飯屋の物だ。ここのは半端なく旨いからな、驚くなよ。じゃあ『いただきます』。」

    私は合掌して、他は各自でお祈りをしてから、食事をはじめる。

    作って貰ってから、かれこれ三ヶ月は経つが、インベントリィに入っていたために、少しも冷めていなく、作りたての熱々のシチューだ。しかも、流石『豬鹿亭』のオヤジ。相変わらずの旨さだ。最強だぜ。
 
    「旨い、旨すぎる。冒険の途中で食う飯じゃないぜ。このシチューが絶品だ。閣下このシチューはどこで作られた物で?」
「ああ、これな。リヒトの町の『豬鹿亭』のオヤジさんの料理だ。冒険者の時にいつも通っていたんだよ。今の所、国内最強だな、あのオヤジさんの料理は。」

ライガの問いに答える。

    「ええ?リヒトにそんなお店があったのですか?わたくし知りませんでしたわ。」

    驚きの顔をしてセイラが聞き返してくる。

「いや、公爵家の娘さんが行く様な店ではないからねぇ。(笑)」
「閣下、いつか、連れて行って下さい。」
  
    レナードもライガも興味津々で話してくる。
女性陣は静かだなと見てみると、ソニアもセイラもシーラもアイリスも全員黙々とシチューを掬って食べている。ソニアとアイリスは小柄な体からは想像出来ない程の食べっぷりだ。

「ソニアとアイリス。そんなに喜んで貰えるとは思わなかったよ。(笑)」
「わたくし、最近までベッドに伏してましたから、仕方がないとは言え、出される食事も消化に良いものばかりで、味気ない物ばかりでしたの。ショウ様についてきて、一番驚いたのは、お城でも食べられなかった様な美味しい料理が沢山食べられる事ですわ。」
「成る程ね。アイリスは?」
「盗賊に捕まっていた時は勿論だけど、故郷にいたときも、こんなに美味しい料理は食べたことないわ。」
「まぁ、今度アルメイダも連れて『豬鹿亭』に行くか。」
「それは宜しいですわね。約束ですわよ。」
「ショウさん、嘘だったら許しませんからね。」
「ハイハイ。約束は守りますとも。」

    こうして、昼飯をワイワイ過ごして、次の戦いに備えるのであった。


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