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第 十章 拡大する町。始動する商会。
第166話 オオガミズ・ブート キャンプ。②
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今日は七の月の十八日。グレゴールが騎士団の一員となって一週間経つ。
朝御飯が済んだ後、冒険者スタイルに着替えて、レナードと共に訓練場に向かった。
公務で忙しい中だが、グレゴールのトレーニングを見る為だ。レナードからの報告では、本人も真面目に課された訓練を欠かさずにしているとのことだった。
「始めるぞ、グレゴール。」
「はっ!お願いします。」
「良し。それでどうだ?ラダーランは速くなったのか?」
「まだ、自分としては十分ではありませんが、それでも当初よりはマシにはなったかと思います。」
「よい、早速見るから準備しろ。」
「はっ!」
グレゴールはいつも使っているだろう、縄梯子を地面に広げて準備をする。
「ラダーランを速くするコツの一つは、踵を着けないで腿を上げ下げすることだ。」
「わかりました。」
「では、始め!!」
確かに先週見た様子よりかは、少しだけ速くなったが、暫くするとドタドタと踵を着けて足踏みしてしまう。
「ほら、踵をつけるな。踵を着けると速く脚を引き上げられないぞ。休まず続けろ。そのまま五十本やりきれ。」
本人も意識はしているのだろうが、時間が経つと腿を上げることに気がいって、踵を着けてしまうようだ。
「ほら、踵を着けるな。楽をしようとするな。」
私から言われて、すぐに直すが、三十、四十と疲れてくると集中力が切れてきて、踵を着けてしまう。
「ほら、残り十本。踵を着けるな。腿を上げろ。集中力を切らすな。」
周りが騒がしくなったので見ると、士官学校組の二人と、セイラとルーナがラダーランをしていた。勿論グレゴールよりも軽やかな足取りで、こなしていた。
「良し、五十本。一旦休め。」
私の声に、グレゴールは膝に手をついて、息を荒げていた。
「ほう、前回よりは疲れが軽いようだな。それは無駄な力が抜けて練習が出来ている証拠だ。速さに無用な力はいらないからな。では、素振りを見る。基本の型の練習を始めろ。」
「はっ!」
グレゴールは模擬剣を持ち、構えを取り基本の型にそって、振り始める。始めの内は、力が入っていたので、力を抜けと注意する
と、振り抜く音がピュッと良い音がするようになった。
「よし、その音だ。目の前に切る相手を具体的に想像しろ。腰からの捻りを利用して、腕の力は抜いて、鞭のようにしならせて、切る瞬間にだけ力を込めろ。剣の切っ先に集中しろよ。」
良い音をさせて素振りは終わる。
「良し、剣の振りは大分良くなってきたな。今後も続けろよ。次は新しい訓練だ。用意するから、少し待っててくれ。」
そう伝えると、私は直径三メートルの円を地面に描き、中心を通る十字と八方向になるように、十字を描いた。
「これから見本を見せる。よく見ておくように。」
十字の重なる円の中心に立ち、前にステップして進み、そのまま後ろの中心点に戻り、そのまま今度は後ろにステップして下がり、また中心にステップで戻る。次に左斜めにステップで進み、また中心に戻る。そして、斜め後ろにステップして下がり、また中心にステップして戻る。こうして、反時計回りに八方向にステップで進んだり戻ったりする事を繰り返した。
「こんな風に動く訳だ。一回三分相当で何周出来るか。多ければ多いほど良いのは言うまでもないな。これを三分やったら一分の休憩で十セットやるように。さあ、始めろ。」
グレゴールは、円の中心に立ち前後に動き出した。
「これも踵を着けるなよ。ベタ足では速く動けないぞ。」
二分を過ぎると。足がもつれてきていた。
「足元が乱れてきたぞ。上半身に力が入りすぎだ。力を抜け。三分止め!」
グレゴールは三分動いただけなのに、滝のように汗が流れている。息も荒げていた。
「休みながら聞けよ。先程も言ったが、上体に力が入りすぎているから、余計に疲れるんだ。あれを見ろ。」
隣で同じ事を真似て訓練しているルーナを指差す。
見事なフットワークで、上半身が動かずに足はステップしていた。
「あれがお手本だ。無駄に力は入ってないだろう。さあ、一分だ。もう一回やるぞ。用意しろ。」
それから三分やって、一分の休みを九セットやらせる。最後の方は、足が前に出なくなり、後ろに引くときも、足を絡ませてしまい、倒れる事が多かった。
「よし、終了。今後は、足運びの練習もするように。今日はここまでだ。」
「ア、アザっす。」
挨拶をして、終わった途端に地面に座り込んで、ゼーゼーと肩で息をついていた。
隣で同じ訓練をいていた士官学校の二人組とセイラは膝に手をついて、息を荒げていたが、ルーナは多少息を荒くしていたが、それでも平気そうだった。
「閣下ぁ、これは意外と脚にくるねぇ。」
「そうさ。だから練習になるのさ。普段の訓練で出来ない動きが、本番で出来るわけ無いからね。」
「あは、そりゃそうだ。うん、私もこれ取り入れるわ。」
「そうか、自分で工夫するのも大事なことだからね。頑張りなよ。」
それから約一月後。ツール騎士団の入団試験が行われた。その頃には、グレゴールも体の固さがとれはじめ、少しずつ速さを身に付けられつつあった。思ったよりも肉体改造を速く済ませることが出来そうだ。そろそろ重りを二キロに増やすか。
また、暫くは筋肉痛でヒーヒー言うだろうが、越えるとやっと他の団員と同じスタートラインになるから、早めに克服してもらないとな。
そわれにしても、グレゴールの奴、大分体型がスッキリしてきたな。余分な肉が落ちて、柔らかい筋肉が代わりに着き始めたようだ。まだ、体から力を抜くことが十分でないが、下半身をしっかりと使って、剣が振れる様になってきた。足運びもまだドタドタするが、前よりはましになったな。
後はひたすらに、動きに磨きをかけていくしかないが、本人にはその事を伝えて、後は自分の問題だぞと伝えた。私の集中強化訓練指導(ブートキャンプ)はおわった。
朝御飯が済んだ後、冒険者スタイルに着替えて、レナードと共に訓練場に向かった。
公務で忙しい中だが、グレゴールのトレーニングを見る為だ。レナードからの報告では、本人も真面目に課された訓練を欠かさずにしているとのことだった。
「始めるぞ、グレゴール。」
「はっ!お願いします。」
「良し。それでどうだ?ラダーランは速くなったのか?」
「まだ、自分としては十分ではありませんが、それでも当初よりはマシにはなったかと思います。」
「よい、早速見るから準備しろ。」
「はっ!」
グレゴールはいつも使っているだろう、縄梯子を地面に広げて準備をする。
「ラダーランを速くするコツの一つは、踵を着けないで腿を上げ下げすることだ。」
「わかりました。」
「では、始め!!」
確かに先週見た様子よりかは、少しだけ速くなったが、暫くするとドタドタと踵を着けて足踏みしてしまう。
「ほら、踵をつけるな。踵を着けると速く脚を引き上げられないぞ。休まず続けろ。そのまま五十本やりきれ。」
本人も意識はしているのだろうが、時間が経つと腿を上げることに気がいって、踵を着けてしまうようだ。
「ほら、踵を着けるな。楽をしようとするな。」
私から言われて、すぐに直すが、三十、四十と疲れてくると集中力が切れてきて、踵を着けてしまう。
「ほら、残り十本。踵を着けるな。腿を上げろ。集中力を切らすな。」
周りが騒がしくなったので見ると、士官学校組の二人と、セイラとルーナがラダーランをしていた。勿論グレゴールよりも軽やかな足取りで、こなしていた。
「良し、五十本。一旦休め。」
私の声に、グレゴールは膝に手をついて、息を荒げていた。
「ほう、前回よりは疲れが軽いようだな。それは無駄な力が抜けて練習が出来ている証拠だ。速さに無用な力はいらないからな。では、素振りを見る。基本の型の練習を始めろ。」
「はっ!」
グレゴールは模擬剣を持ち、構えを取り基本の型にそって、振り始める。始めの内は、力が入っていたので、力を抜けと注意する
と、振り抜く音がピュッと良い音がするようになった。
「よし、その音だ。目の前に切る相手を具体的に想像しろ。腰からの捻りを利用して、腕の力は抜いて、鞭のようにしならせて、切る瞬間にだけ力を込めろ。剣の切っ先に集中しろよ。」
良い音をさせて素振りは終わる。
「良し、剣の振りは大分良くなってきたな。今後も続けろよ。次は新しい訓練だ。用意するから、少し待っててくれ。」
そう伝えると、私は直径三メートルの円を地面に描き、中心を通る十字と八方向になるように、十字を描いた。
「これから見本を見せる。よく見ておくように。」
十字の重なる円の中心に立ち、前にステップして進み、そのまま後ろの中心点に戻り、そのまま今度は後ろにステップして下がり、また中心にステップで戻る。次に左斜めにステップで進み、また中心に戻る。そして、斜め後ろにステップして下がり、また中心にステップして戻る。こうして、反時計回りに八方向にステップで進んだり戻ったりする事を繰り返した。
「こんな風に動く訳だ。一回三分相当で何周出来るか。多ければ多いほど良いのは言うまでもないな。これを三分やったら一分の休憩で十セットやるように。さあ、始めろ。」
グレゴールは、円の中心に立ち前後に動き出した。
「これも踵を着けるなよ。ベタ足では速く動けないぞ。」
二分を過ぎると。足がもつれてきていた。
「足元が乱れてきたぞ。上半身に力が入りすぎだ。力を抜け。三分止め!」
グレゴールは三分動いただけなのに、滝のように汗が流れている。息も荒げていた。
「休みながら聞けよ。先程も言ったが、上体に力が入りすぎているから、余計に疲れるんだ。あれを見ろ。」
隣で同じ事を真似て訓練しているルーナを指差す。
見事なフットワークで、上半身が動かずに足はステップしていた。
「あれがお手本だ。無駄に力は入ってないだろう。さあ、一分だ。もう一回やるぞ。用意しろ。」
それから三分やって、一分の休みを九セットやらせる。最後の方は、足が前に出なくなり、後ろに引くときも、足を絡ませてしまい、倒れる事が多かった。
「よし、終了。今後は、足運びの練習もするように。今日はここまでだ。」
「ア、アザっす。」
挨拶をして、終わった途端に地面に座り込んで、ゼーゼーと肩で息をついていた。
隣で同じ訓練をいていた士官学校の二人組とセイラは膝に手をついて、息を荒げていたが、ルーナは多少息を荒くしていたが、それでも平気そうだった。
「閣下ぁ、これは意外と脚にくるねぇ。」
「そうさ。だから練習になるのさ。普段の訓練で出来ない動きが、本番で出来るわけ無いからね。」
「あは、そりゃそうだ。うん、私もこれ取り入れるわ。」
「そうか、自分で工夫するのも大事なことだからね。頑張りなよ。」
それから約一月後。ツール騎士団の入団試験が行われた。その頃には、グレゴールも体の固さがとれはじめ、少しずつ速さを身に付けられつつあった。思ったよりも肉体改造を速く済ませることが出来そうだ。そろそろ重りを二キロに増やすか。
また、暫くは筋肉痛でヒーヒー言うだろうが、越えるとやっと他の団員と同じスタートラインになるから、早めに克服してもらないとな。
そわれにしても、グレゴールの奴、大分体型がスッキリしてきたな。余分な肉が落ちて、柔らかい筋肉が代わりに着き始めたようだ。まだ、体から力を抜くことが十分でないが、下半身をしっかりと使って、剣が振れる様になってきた。足運びもまだドタドタするが、前よりはましになったな。
後はひたすらに、動きに磨きをかけていくしかないが、本人にはその事を伝えて、後は自分の問題だぞと伝えた。私の集中強化訓練指導(ブートキャンプ)はおわった。
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