上 下
192 / 572
第 十章 拡大する町。始動する商会。

第158話 土木工事の次は森林伐採。貴族の仕事じゃないよね。①

しおりを挟む
    この話は、土木工事専門商会『穴堀屋』がツールの町に来た翌日の話である。

    「お早うございます。旦那様。お時間でございます。お起き下さい。皆様お待ちです。」
「うーん、暑い。苦しい。」
「旦那様?旦那様?」
「苦しい。暑い。重い。」
「旦那様、失礼致します。な、なんと?旦那様、大丈夫ですか。今お助け致します。」

そう聞こえたかと思うと、急に顔の上の重みか消え、暑苦しかったのが解消した。

「ふぅー、何だったんだ?苦しかったが。」
「大丈夫でしたか?旦那様。」
「何か暑いし、もわもわするし、息苦しいし。どうなってたんだ、私は?」

相変わらずアイリスに抱き着かれていて、これも暑いし。そう言えば、お腹が重苦しくないな。
「あれ?アルメイダが居ないな。どこいった?」
「旦那様、アルメイダはここでございます。」

サウルに抱えられて丸くなって寝ている小虎がいる。

「あれ、なんでサウルが抱いているのかな?」
「旦那様、先程まで旦那様のお顔の上で丸まって寝ておりましたのを、お気付きで無かったのですか?」
「いや、真っ暗だし、息苦しいし、アイリスが抱き着いていて動けないし。そこまで考える余裕は無かったよ。少しパニックになりかけていたかな。」
「左様でございましたか。アルメイダとアイリスには、そろそろ自分の部屋のベッドで眠るように言わないといけませんね。」
「まあ、まだ幼いからね。この年で身寄りが居ないとやはり寂しいのだろうね。それより、起きないといけないのでは?」
「そうでした。皆様もうお待ちです。すぐ、お支度を。」

    その後、アイリスとアルメイダを起こして、急ぎ身支度を整えて食堂に向かう。
アルメイダになんで顔の上にいたのか聞くと、寝ている内に暑くなって布団から出たら顔の上だったとのこと。次からは、せめて布団の上に寝るようにしてくれとお願いすると、夏で暑いから分かったと、言ってくれた。
アイリスにも、暑いから抱きつかない様にしてとお願いしたが、私は気にならないとはね除けられた。何故だ!

    「皆お早う。遅くなって済まないね。早速始めてくれ。」

手早く挨拶をして、配膳を始めて貰う。用意して貰っている間に、伝達事項をする。

    「恐らくだが、今日明日の内に『エチゴヤ』のメンバーがツールに着くと思う。この前買った店舗に寝泊まりできるように、準備をしておいてくれ。サウル頼めるかな?」
「承知しました。」
「魔法で新しく綺麗には、しておいたから。シーツ等の生活用品を揃えてやっておいてね。もし、手持ちが足らないなら、言ってくれれば渡すからね。」
「分かりました。」
「閣下は、今日は何をされますので?」
「北の『魔の森』に続く道を整備する。将来木材の確保のために行き来するにもあれじゃ、切り出した丸太を運ぶのは無理だからね。荷馬車や荷車が楽に通れるようにしないと。時間があれば、少し丸太を切り出したいと思っているよ。」
「護衛は如何しますか?」
「そうだね。・・・ソニア、セイラ、シーラ。三人予定は空いているかい?」
「はい、空いてますわ。」
「わたくしも、決まった予定はありませんが。」
「はい、急ぎの予定はありませんけど。」
「なら、狩に付き合いませんか?お嬢様方?」
「ええ、宜しくてよ。」
「承知しましたわ。」
「お共致します。」
「うん、という事で、四人で行ってくるよ。」
「騎士団からは出さなくとも宜しいのですか?」
「うん、戦うにしてもソニアのレベルアップを優先するから大丈夫だよ。そろそろ完治させたいからね。無理はしないからね。騎士団のほうは、新人の三人を特に鍛えておいて、七日に入団試験があるから、受験者に舐められない様にシゴイておいてくれ。」
「成程、承知しました。」
「では、配膳もすんだので食べましょう。いただきます。」

長話に、お腹を減らしていたアルメイダがご飯に飛び付く。
今朝のメニューは、厚切りハムステーキとスクランブルエッグだ。白パンと生野菜サラダのマヨネーズがけと野菜スープだ。
すっかりマヨネーズが定着したようだ。好評を得ているので、ビルが来たら早速量産体制を整えてもらおう。

    食後に自室に戻り、七の月の決済の書類が、集まりだしたので近日中にチェックしないといけないなと、記憶の隅に予定して覚えておきながら、冒険者スタイルに着替えた。リビングに戻ると、武装した許嫁ズが先に着替えて待っていた。馬車を出してもらい拡張した北門まで送ってもらった。
    さすがに、自分で整地して造った道。石を敷き詰めた様に石化しており、穏やかな座り心地で来れた。
北門で馬車から降りると、馭者に近くで待機してくれと伝える。

    「〈マップ表示・オン〉。」

北門から魔の森までを拡大して映す。

「〈サーチ・北門から直線で魔の森まで幅十五メートル区域〉。」

該当の場所が白く光っており、北に向けて真っ直ぐにのびている。

「〈マップ表示・オン〉〈サーチ〉の該当区域を表示白。」

よし、白くマップに映っているな。次はと。

「〈サモン・レプラコーン〉。」

(おー、兄ちゃんか。今度は何用かな?)

「魔法で白く輝いている場所を平らにしてくれる?」
(あー、結構距離あるのぉ。これだと魔力千五百いるなぁ。やるかの?)
「やっちゃって下さい。」

その言葉と共に体から魔力が一気に抜けていく。

「ぐぅっ!」
「ショウ様、大丈夫ですか?」

僧侶のシーラが、いち早く私の様子に気が付いた様だ。

「ああ、大丈夫だ。まだ精霊魔法を上手く使いこなせていない様でね。消費魔力が大きくなってしまい、反動が少しキツいだけだ。大丈夫だから。」

心配そうに覗いてくる二人にも大丈夫だからと安心させる。
シーラと話している内に、魔法は成功したようで、目の前には真っ直ぐ北に伸びる、平らな土の道があった。

「〈マルチロック〉〈クレイトゥストーン〉。」

土の道だったのが、鈍い色の石の道に変わっていた。

    「ショウ様、今のもショウ様の魔法ですの?」

今度はソニアが興味深く質問してきた。

「そうだよ。土属性魔法の石化の魔法だね。魔法だからって、何でも戦いに使わないといけないということはない。ちょっと大変だけど、土木工事に転用出来る魔法ってかなりあるんだよ。」
「成る程、確かにそうですわね。」

ソニアが頷きながら、私の言葉に納得する。

「よし、これで以前のように、お尻の痛い目に会わずに済むね、お嬢様方?」
「嫌ですわ、コーチ。」

冗談を言い合うことで、大分気分の悪さが消えていった。

「さあお嬢様方、魔の森に向かいましょう。」

待たせていた馬車に再び乗り込み、魔の森へ向かっていった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました

瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。 レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。 そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。 そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。 王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。 「隊長~勉強頑張っているか~?」 「ひひひ……差し入れのお菓子です」 「あ、クッキー!!」 「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」 第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。 そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。 ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。 *小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

処理中です...