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第 八章 領主就任と町の掃除。
幕間23話 ある国軍兵士の回想録②。
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「おい、知っているか?」
また、何時ものようにダンが噂を聞き集めてきたらしい。
「今日は何だよ、ダン。」
「俺達の部隊長を皮切りに、例のボンボンの指揮下になる予定の部隊長達が、宰相様の命令に異を唱えているいるらしいぞ。何でも、いくら貴族とはいえ、十五の子供に指揮されるのは、ごめんこうむるって言ったそうだ。」
「おいおい、大丈夫かよ。それって命令違反じゃないのかよ。」
「いや、絶対嫌という事ではなくて、指揮官である力を見せて欲しいと言ったみたいだな。」
「え、どういう事だ?」
「一対一で戦って指揮官たる力を見せろって事らしいな。」
「あぁ、それうちの隊長が言い出したんだろ?」
「お、良くわかったな。その通りだ。うちの隊長が言い出して、他の隊長達も乗ったみたいだな。」
「指揮官なんだから、大佐のように腕力がなくても戦闘指揮が取れれば関係ないのに。どうせ、貴族の坊っちゃんだから、良い機会だから、いたぶってやろうとか考えていそうだな。うちの隊長なら。」
「ああ、あり得る話だな。」
翌日、兵舎の食堂で昼飯を食べていると、再びダンが駆け寄ってきた。
「おい、聞いたか?」
「何を?」
「昨日話していた、指揮官になるボンボンが隊長達の話を聞いたらしく、明日練兵場で俺達に顔見せしに来るらしいぞ。」
「可愛そうに。隊長達にいたぶられないといいけどな。」
「まあ、無理だろうさ。部隊長ともなれば皆それなりに強いからな。」
「あまりに酷い事にならないと良いけどな。」
「全くだな。」
翌日の午前十時。指揮下に入る部隊の隊員が練兵場に集合して、例の指揮官が来るのをまっていると、
「おー、いるわ、いるわ。」
そう話ながら、練兵場に現れた人影が二人いる。
一人は全身を白銀に輝くプレートメイルを着込み、見るからに騎士であると判る青年と、もう一人は黒髪黒目に黒いマントと黒い革鎧を着込んだ全身黒いが顔立ちは良い少年の二人だった。騎士が指揮官だと言われれば納得するだけの強さを感じるのだが、騎士は少年の後ろに従っている様子だ。どうやら、あの少年が指揮官らしい。
少年を見て、隊長達がニヤニヤしている。だが良く見ると少年も嘲笑っているのだ。俺達の近くに来るなり少年が言い放った。
「やあ、国軍の諸君。宰相閣下から聞いたが、何か私の指揮下に入るのが嫌だと言っているらしいね。良いよ、嫌なものを強要する気はないしね。ただし、当然だが陛下の命令を拒否したのだから当然だが罪に問われるな。この場合は抗命罪だが、処分としては少なくともクビだな。理由によってはそれ以上だ。それを分かって言っているのだよな?」
今この少年は何を言ったのだろうか?陛下の命に背く?確かに言われてみれば、その通りなんだよな。うちの隊長達のやってることは。しかし、それをまともに言って来るとは、度胸があるよな。俺の周りも意外な言葉にざわつき始めている。ざわめきが止まない中、再び少年は言ったのだ。
「それで、宰相閣下に指揮下に入りたくないと言ったのは誰だい?前に出てきな。宰相閣下に聞きに行ってもいいのだぞ。その場合は更に処置が重くなるのは当然だな?己で言った言葉に責任が取れないのだからな。さあ、名乗り出ろ。」
少年が聞きようによっては喧嘩腰の様な言い方で、隊長達に前に出ろという。
ブスッとした顔をして隊長達が前に出る。
「で、名前と所属と階級を言いな。」
「・・・グレゴール大尉、重装歩兵隊の隊長だ。」
「カシム大尉、槍兵部隊の隊長です。」
「コーウェル少佐、騎兵隊の隊長です。」
「マックス大尉、弓兵隊の隊長。」
「カトー少佐。魔法兵隊の隊長。」
「ほぉー、各部隊の部隊長達がですか?で、この一万人の隊長はどこですか?」
「キスリング大佐は宰相閣下の所に行かれておいでです。」
カシム隊長が返答する。
「ほう、何をしに行ったか知っている者はいるか?」
「おそらく、我々の行動を止めようとしてかと。」
カトー隊長が嫌々ながら答える。
「成る程、つまり隊長から止められる案件だと言うことだな。言うことを聞かない部下を持って大変だねぇ彼も。分かった。面倒なことは、さっさと済まそう。で、どうすれは私の指揮下に入る気になるのかな?」
「俺達と模擬戦をしてもらいたい。」
グレゴール隊長が言い出す。
「五人全員とかい?」
「馬鹿にするな。一対一だ。」
「そうかい?別に私は構わないのだがね。よかろう。一対一で相手するよ。誰か模擬剣を貸してくれ。」
(おい、今五人一緒でも良いと言わなかったか。もしかしてあの若さで物凄く強いとか。でも見た目は優しい顔をした、割りと美男子なんだが、あの目の光が怖いと思うのは俺だけかな?)
若い兵士が練兵場に備え付けの模擬剣を何本か持って行き渡す。
少年は一本一本握っては、軽く振って確かめている。何本か振るうちの一本を若い兵士に突き返す。
「うん?こいつはダメだな。誰か後で、備品担当者に言っておけ。この剣は剣身にヒビが入っているから、新しいのと交換して貰うようにな。これを使って練習中に折れでもして、怪我をしても馬鹿らしいからな。うん、これにするか。良し誰からやる?」
やる気マンマンな少年の言葉が練兵場に響く。その目には増々危険な光が輝いていると思うのは俺だけだろうか。
また、何時ものようにダンが噂を聞き集めてきたらしい。
「今日は何だよ、ダン。」
「俺達の部隊長を皮切りに、例のボンボンの指揮下になる予定の部隊長達が、宰相様の命令に異を唱えているいるらしいぞ。何でも、いくら貴族とはいえ、十五の子供に指揮されるのは、ごめんこうむるって言ったそうだ。」
「おいおい、大丈夫かよ。それって命令違反じゃないのかよ。」
「いや、絶対嫌という事ではなくて、指揮官である力を見せて欲しいと言ったみたいだな。」
「え、どういう事だ?」
「一対一で戦って指揮官たる力を見せろって事らしいな。」
「あぁ、それうちの隊長が言い出したんだろ?」
「お、良くわかったな。その通りだ。うちの隊長が言い出して、他の隊長達も乗ったみたいだな。」
「指揮官なんだから、大佐のように腕力がなくても戦闘指揮が取れれば関係ないのに。どうせ、貴族の坊っちゃんだから、良い機会だから、いたぶってやろうとか考えていそうだな。うちの隊長なら。」
「ああ、あり得る話だな。」
翌日、兵舎の食堂で昼飯を食べていると、再びダンが駆け寄ってきた。
「おい、聞いたか?」
「何を?」
「昨日話していた、指揮官になるボンボンが隊長達の話を聞いたらしく、明日練兵場で俺達に顔見せしに来るらしいぞ。」
「可愛そうに。隊長達にいたぶられないといいけどな。」
「まあ、無理だろうさ。部隊長ともなれば皆それなりに強いからな。」
「あまりに酷い事にならないと良いけどな。」
「全くだな。」
翌日の午前十時。指揮下に入る部隊の隊員が練兵場に集合して、例の指揮官が来るのをまっていると、
「おー、いるわ、いるわ。」
そう話ながら、練兵場に現れた人影が二人いる。
一人は全身を白銀に輝くプレートメイルを着込み、見るからに騎士であると判る青年と、もう一人は黒髪黒目に黒いマントと黒い革鎧を着込んだ全身黒いが顔立ちは良い少年の二人だった。騎士が指揮官だと言われれば納得するだけの強さを感じるのだが、騎士は少年の後ろに従っている様子だ。どうやら、あの少年が指揮官らしい。
少年を見て、隊長達がニヤニヤしている。だが良く見ると少年も嘲笑っているのだ。俺達の近くに来るなり少年が言い放った。
「やあ、国軍の諸君。宰相閣下から聞いたが、何か私の指揮下に入るのが嫌だと言っているらしいね。良いよ、嫌なものを強要する気はないしね。ただし、当然だが陛下の命令を拒否したのだから当然だが罪に問われるな。この場合は抗命罪だが、処分としては少なくともクビだな。理由によってはそれ以上だ。それを分かって言っているのだよな?」
今この少年は何を言ったのだろうか?陛下の命に背く?確かに言われてみれば、その通りなんだよな。うちの隊長達のやってることは。しかし、それをまともに言って来るとは、度胸があるよな。俺の周りも意外な言葉にざわつき始めている。ざわめきが止まない中、再び少年は言ったのだ。
「それで、宰相閣下に指揮下に入りたくないと言ったのは誰だい?前に出てきな。宰相閣下に聞きに行ってもいいのだぞ。その場合は更に処置が重くなるのは当然だな?己で言った言葉に責任が取れないのだからな。さあ、名乗り出ろ。」
少年が聞きようによっては喧嘩腰の様な言い方で、隊長達に前に出ろという。
ブスッとした顔をして隊長達が前に出る。
「で、名前と所属と階級を言いな。」
「・・・グレゴール大尉、重装歩兵隊の隊長だ。」
「カシム大尉、槍兵部隊の隊長です。」
「コーウェル少佐、騎兵隊の隊長です。」
「マックス大尉、弓兵隊の隊長。」
「カトー少佐。魔法兵隊の隊長。」
「ほぉー、各部隊の部隊長達がですか?で、この一万人の隊長はどこですか?」
「キスリング大佐は宰相閣下の所に行かれておいでです。」
カシム隊長が返答する。
「ほう、何をしに行ったか知っている者はいるか?」
「おそらく、我々の行動を止めようとしてかと。」
カトー隊長が嫌々ながら答える。
「成る程、つまり隊長から止められる案件だと言うことだな。言うことを聞かない部下を持って大変だねぇ彼も。分かった。面倒なことは、さっさと済まそう。で、どうすれは私の指揮下に入る気になるのかな?」
「俺達と模擬戦をしてもらいたい。」
グレゴール隊長が言い出す。
「五人全員とかい?」
「馬鹿にするな。一対一だ。」
「そうかい?別に私は構わないのだがね。よかろう。一対一で相手するよ。誰か模擬剣を貸してくれ。」
(おい、今五人一緒でも良いと言わなかったか。もしかしてあの若さで物凄く強いとか。でも見た目は優しい顔をした、割りと美男子なんだが、あの目の光が怖いと思うのは俺だけかな?)
若い兵士が練兵場に備え付けの模擬剣を何本か持って行き渡す。
少年は一本一本握っては、軽く振って確かめている。何本か振るうちの一本を若い兵士に突き返す。
「うん?こいつはダメだな。誰か後で、備品担当者に言っておけ。この剣は剣身にヒビが入っているから、新しいのと交換して貰うようにな。これを使って練習中に折れでもして、怪我をしても馬鹿らしいからな。うん、これにするか。良し誰からやる?」
やる気マンマンな少年の言葉が練兵場に響く。その目には増々危険な光が輝いていると思うのは俺だけだろうか。
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