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第 七章 ツール移動準備とやはりあったお約束。

第111話 再会の一時そして蠢く闇再び。②

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    次に屋台が並ぶ通りに行き、以前にまとめ買いした串焼き屋を探す。近づくにつれ、食い物の良い臭いが漂って来る。
    まだ昼前という事で、客は閑散としているが、店は開かれていた。

    「おっちゃん、串焼き頂戴。」
「おう、坊主久し振りだな。何本いる。」
「覚えてくれてたのかい?ありがとー。じゃあ五十本焼いて。」
「ご、五十本か?金は大丈夫か?」
「失礼な。なんなら金貨で払おうか?」
「いや、すまねぇ。それだと、釣りが足りなくなるから勘弁してくれ。五十本なら、銀貨十二枚と銅貨五十枚だ。」
「はい、これでお願い。」

懐に手を入れ、インベントリィから丁度で渡す。

「お、丁度にありがとよ。早速焼き始めるけど、少し時間が掛かるからどっかで待っていてくれ。」

    店のオヤジは代金を貰うと、早速串肉を焼き始めた。
辺りにジューと肉の焼ける音が響き渡り、それと共に肉の焼ける良い臭いが立ち広がる。

    「おっちゃん、他にも買ってくるから、悪いが用意をしておいてくれな。」

と伝えて、他の屋台に向かう。

    前に買った、ナンの上にひき肉と野菜のみじん切りしたものをピリ辛炒めにして乗せた物を三十個買い求め、これまた以前道具屋でかった水筒の大きいのに、果実水をつめてもらった。

    「おい、坊主こっち来い。串が焼けたぞ。」

おっちゃんに呼ばれて、串を貰いにいく。インベントリィから大きい皿を取り出して、そこに載せてもらった。礼を言って離れる。

    他にも、野菜のスープを夜営用に買った大きな鍋に入れてもらい、店は完売になったと言う。その後パン屋に行き、白パンを五十個買ったりもした。次に食糧品店に行き、小麦粉を百キロ買い求め、塩も十キロ買った。
そこから市場を見物しながら、〈猪鹿亭〉に向けて歩いた。
    
    市場では、トマトではないかと思われていた赤実なる野菜がもう出回っており、実物を見たらやはりトマトだった。
もちろん店にある分を買い占めたのは言うまでもない。他にもスイカのような野菜?果物?があったので、幾つか買ってみた。
買い物に満足したので、飯屋に直行する。

    「いらっしゃいませ。」

    久し振りに聞いた、カイラの元気な声だ。

「ランチと果実水を頼む。」
「あ、お兄ちゃん久しぶり。暫く見なかったから、どうしたのかってお母さんと話していたんだよ。」
「ああ、仕事で王都へ行ってたのさ。また仕事で旅に出るけど、その前に親父さんの味を忘れない様に食べに来たのさ。」
「そう、またお仕事なんだね。たまには、また食べに来てね。」
「ああ、また来るよ。」
「うん、待ってるね。お父さん、ランチ一丁。全部で銅貨七十五枚です。」
お金を渡して、いつも座っていた、一番奥のテーブルに着く。

    カイラが飲み物と料理を乗せたトレイを持ってきた。相変わらず、旨そうな臭いをさせるぜ。

    今日のランチのメインは、オーク肉のステーキのマスタードソース風だった。それにスープに黒パン、ミニ野菜サラダのセットだ。

    人間、本当に旨いものを食べると、無口になるものだ。カニが良い例だな。私も久々の親父さんの料理に夢中になり、ひたすら無言で食べきったよ。

    「うーん、久々の親父さんの料理。相変わらず旨かったよ。カイラ、ちょっといいか?」
「え、お兄ちゃん何?」
「明日の朝九時頃にまた来るから、金貨一枚分の料理を用意しておいてくれないかな。」
「うーんと、お父さん呼んでくるね。」
と、親父さんを呼びに奥にいく。待つ間に、頂きましたをして待つ。

    「おう、オオガミの兄ちゃん、久しぶりだな。
女房も最近見かけないから、どうしているのか心配していたぞ。
    それで、金貨一枚分の料理を明日朝九時頃に取りに来るってことでいいのか?」
「はい、また暫く旅に出るから、親父さんの料理が食べたい時に食べられるようにしておきたいわけさ。俺は、性能の良いマジックバッグを持っているから持ち運びは心配しないで。皿や鍋の値段こみでいいから、頼めるかな?」
「分かった。そこまで俺の料理を気に入ってくれたなら料理人冥利に尽きるな。その注文受けたよ。」
「なら、手数料込みで、金貨一枚と銀貨二十枚渡しておくよ。」
「おう、済まねえな。確かに受けとった。楽しみにしてな。じゃあ仕事があるんでな。」

    カイラに旨かったと言って店を出た。

    そのまま、隣の宿屋〈猪鹿亭〉に向かう。

「こんにちはー。女将さんいるかい。」
「ハイハイ、誰だい?あたしを呼んでいるのは。」

久しぶりに聞いた女将さんの元気な声に思わずニコッと笑ってしまった。
    奥から顔をだした女将さんが、俺を見てパアッと笑顔になり、抱きついてきた。

    「何だい何だい、オオガミさんじゃないか。あんた何処に行ってたんだい?暫く顔を出さないから、どこかで魔物にでもられちまったかと心配していたよ。仕事が終わって帰ってきたのかい?」
「いや、それがね次の仕事が入っちまって、明日の朝また出発なんだよ。全く貧乏暇なしだよ。」
「あはは、全くだねぇ。まあ、仕事があるだけましさね。今日は泊まってくのかい?」
「ごめん、女将さん。雇い主と一緒なんだ。また来た時にでも、頼むよ。」
「そうかい、残念だねぇ。また、暇な時にでも泊まりに来なよ。」
「ああ、そうさせて貰うよ。さっきここに来る前に隣の飯屋で食ってきたけど、相変わらず旨かったよ親父さんの飯、王都でも俺の知る中で一番だよ、今の所。」
「何馬鹿言ってんだい。家の亭主の腕は、今の所じゃなく、ずっと国一番さね。」  

カラカラと笑いながら。俺の背中をパンパンと叩いた。

「ブホッ。女将さん、元気そうで安心したよ。じゃあ仕事もあるから俺行くわ。」
「そうかい?しっかり食べなよ。体には気を付けな?」
「有難う、じゃあまた。」

    宿屋から出ると、自然と笑みが出た。前よりも心が軽くなったまま、屋敷に戻った。
どうやら慣れないことをやっている為か、普段の生活のストレスが消えていったようだ。



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