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第 六章 貴族稼業の準備そして・・・・。

第 92話 貴族稼業と生活準備⑨。

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    今日は午前中に馬車と馬を受け取り家の馭者に託して、守衛になった者達と面接して、レナード兄妹にも新居に移るように伝え、出来れば商業ギルドに行きたいが、また今日も濃い一日になりそうだ。

    今は公爵から貰った馬車に乗って新居へ移動中だ。何故かそこに公爵親娘おやこが同乗している。

    「オオガミ君、副業をやるつもりはあるのかい?」

と、いきなり公爵から。

「将来的にはそのつもりですが、今はまだ領地経営の方が先なのでまだ先の話ですね。」
「そうか。ならいずれやるのなら、商業ギルドに登録しないとな。あと、商会を運営する人員もいる。また、始めるときになったら私に相談しなさい。これでも私も商会や農園など手広くやっているからね。」
「判りました。その時は宜しくお願いします。」

    「公爵、話は変わりますが、帝国との戦争はどうなったのですか?あれから暫くたちますが、何も聞かないので何かご存知ですか?」

    公爵は薄く笑って、

「ああ、帝国との戦争ね。報告によると、あまりにも完璧な敗戦に軍の建て直しと敗戦の責任の擦り付け合いで多少混乱しているようだね。再び攻めてくるにしても、もう少し先だろうとあったよ。」
「なら、暫くは領地経営に専念できるかな?」
「だろうね。ただ君は先の戦いで既に大功をたてているから、よっぽどの事がないと呼ばれないよ。あまり功績を独り占めすると、周りから妬まれるからね。」
「確かに。そうですね。」
「あと、話は変わるが君の屋敷の使用人達に娘の事を紹介してくれたまえ。」
「ああ、気が付かずスミマセン。」
等といった他愛ない(?)話をしているうちに着いた。

    目の前に、王都とツールで雇った使用人と守衛がサウルを筆頭に並んでいる。その前に一歩出て俺は話し出した。

    「皆聞くように。私がこの度、伯爵位を受爵したショウイチ・オオガミ・フォン・ツール伯爵だ。まあ、見ての通りまだ十五歳の小僧だ。しかもこの国出身でもなく、遠い東の遠方からやって来て二月ほどだ。色々この国の常識が足りない所もあるが、気にせず勤めてくれ。それと我が伯爵家の管理運営はサウルに家宰としてやってもらう。そして王都のこの屋敷をカイン、ツールの屋敷をガトーに執事として管理してもらう。なお、ツールで勤める者は、向こうに行くまでの間は、この屋敷で働いてもらいます。初めての場所で立ち上げたばかりの貴族家の事なので、暫くは色々混乱も有るだろうが、手分けして事に当たるように。
    最後にこちらにいらっしゃる方々の紹介をさせてもらう。知っている者も居るかもしれないが、リヒト公爵閣下だ。隣はご長女のセイラ嬢、私の許嫁でもある。皆承知をしていてくれ。」

使用人達が、一斉にお辞儀をする。

    「では、馭者は公爵閣下から頂いた馬車と馬を厩舎と車庫へ、他は各々の仕事を始めてくれ。これから宜しく頼む。以上だ。」

    皆、解散して仕事に戻って行く。俺は公爵親娘とサウルとレナード兄妹をつれて俺の執務室に連れて行く。
    各々ソファーに座って貰うと、カインがお茶を持ってきた。流石に執事、気が利くな。
皆の前に紅茶を置いて退出していく。一口飲んでから話す。

    「サウル達には、短い準備日数で良くやってくれた。礼を言うよ。」 
「いえ、旦那様には我々職を失って困っている所を前より良い条件で雇って頂いたのです。この位の事は何でもありません。私共こそ有り難うございます。」
「うん、こちらこそ。で、集まって貰ったのは今後の運営についてだ。王都とツールの使用人については目処がたった。まあ、ツールは料理人と庭師、馭者を雇わないといけないがね。で、カインとガトーには各々の屋敷に勤めてもらい、基本移動はない。二人には各々の屋敷の人事や運営をやってもらう。サウルには、二人から出された運営報告書と将来やる副業の商会からの報告から資金管理等の帳簿管理をしてもらい、最終報告を俺に上げてもらう。それを俺がして行くようにしたい。領地の方は、代官がサウルと同じ立ち位置で働いてもらうつもりだ。」
「閣下、俺たちはどうすれば?」

レナード兄妹が聞いてくる。

「レナードは前に言った事とは多少変わる。まず俺の副官として、家の騎士団の団長として俺の代わりに普段仕切って欲しい。平時の訓練や街道の警備どの運営は任せた。シーラは教会の帰属なのでここで身分がどうこうは言えないが、前にも言ったように孤児院の運営や町での炊き出しとかの公共福祉の運営実施を管理してもらいたい。他にも思案中の事もあるので決定段階になったらまた相談しよう。伯爵家としても資金的に応援するので。
    取り敢えず以上だが、まあ何事も初めはトラブルがつきまとうものだ。だがその都度、報告連絡相談をしあい改善していこう。」
「承知しました。」

サウルがお辞儀をしながらいう。

(企業でも、ホウレンソウは大事だしね。)

    「公爵はこの後如何されますか?」
「もう任せても大丈夫そうだね、なら私達は屋敷に帰るよ。」
「分かりました。俺はこの後冒険者ギルドと商業ギルドと他にも行きたいところがありますので、外出します。レナードとシーラも一緒に来てくれ。」
「承知しました。閣下。」
「では馬車を用意させます、旦那様。」
「うん、頼むサウル。」

    今、俺は貰った馬車の中にいる。貰い物とはいえ、真新しい馬車でしかも落ち着いた色調で俺好みだ。
    何て事を考えているのは、目の前で今不穏な空気が立ち込めているからだ。つまり、現実逃避だね、うん。
    俺とレナード兄妹が乗っているのは当然として、俺の横に何故かセイラが座っている。

(ガクガク、ブルブル。誰か!何とかしてくれー!)




    
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