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本編⑥ 影にひそむ女神
51 ほんの少しのひととき
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「シオンさま?」
声が上ずってしまった。変に思われていないだろうか。
どうして王宮にシオンが来ているのだろうか。
お茶会から帰る頃の自分の姿は少しくたびれていないだろうかと不安になる。
「仕事の書類を提出に王宮に来ておりました。もしあなたに出会えたらいいなと思ったら会えましたね」
嬉しそうにほほ笑む彼にアリーシャは顔を赤くする。
「来るとわかっていればもっと綺麗にしていたのですが」
「アリーシャ様は綺麗ですよ。今日は何かパーティーがあったのでしょうか」
「そうよ。ダイヤモンドリリー宮で行われたお茶会よ。エレン王子にエスコートしてもらいました」
その言葉にシオンは首を傾げる。
「アルは?」
「アルバート様は体調を崩されて欠席、だから代わりにエレン王子がしていただきました」
そうですかとシオンは頷いた。
「いえ、あなたに誰かエスコートしたと考えるとちょっとその方が羨ましくて………エレン王子なら仕方ないですね」
あの狩猟祭の時にも感じたが、シオンは少し思わせぶりな発言が目立つのではないか。
射止められた乙女が多くいるだろう。処刑人でも、顔がいいのだ。きっと心落ちる者もいる。
「シオン様、そのように言うのはやめた方がいいですよ」
「そのようにとは………」
「その、気があるのではないかというような発言です。他の女性だと誤解してしまいますよ」
「私は他の女性にそのように発言しませんよ」
この、とアリーシャはシオンを見つめた。まずは落ち着こう。
アリーシャの様子をみてシオンはやりすぎたかなと考えたようだ。
「すみません。ハンカチを頂いてから、少し積極的になってしまったようで。ご迷惑でしたね」
悲し気に笑うシオンはさっと一歩下がろうとする。下がらなくていい。
「あなたは花姫、処刑人の私とは違う世界の住人なので少しだけ夢をみてしまいました」
「いいわよ。別に………ただちょっと人目がありそうなところはやめてね」
アリーシャはこのやりとりを少し楽しいと思ってしまった。何だか悔しい。
シオンも楽しんでいるのかくすくすと笑っていた。
「それに私は花姫の中では最下層の泥姫よ。私に憧れても………」
自嘲気味に笑うアリーシャにシオンは真面目に彼女を見つめた。
「そのように言わないでください。あなたは綺麗です」
いちいち調子を狂わせる男である。アリーシャは顔を赤くして何も言えなくなった。
「そうですね。あなたの王宮での立場は私も耳に入っています。何故そのような呼び名が定着したか」
「そりゃ、私が無作法で、暴力・暴言吐きまくりの酷い女だったからよ。同僚の花姫にも嫉妬して当たり散らしていたこともあるし。悪いこといっぱいしたわ」
処刑される程ではないと思っているが、自分のしたことは良くないことだった。自分が嫌っていた母の言動そのものにみえてしまう。
シオンに自分のしてきたことを言うのはいやだ。自分のダメだった部分を言うのはつらい。
だが、シオンに良く思われると、不安になる。自分はそのような綺麗な存在ではなかったから。
悪女だと思われたくない。でも、善人と思われると悪い気持ちになりそうだ。
「今は違うでしょう。あなた自身、変わろうとしています」
確かに人を傷つけるのはよくないけど、今のアリーシャは反省していたをシオンは知っている。
今のアリーシャはシオンからみれば立派な淑女である。
「なのに、未だにあなたを泥姫と呼ぶ者がいるのが歯がゆいです」
「気にしなくていいよ。それに私は山村で育った元平民よ。侯爵家の直系でないし、対して他の花姫はみんな直系。綺麗な薔薇の中に雑草が紛れている感じにみえるのでしょう」
その言葉にシオンは首を横に振った。
「それはあなただけじゃありません。現に………あ、いえ」
シオンは急いで自分の口を封じた。
「なになに?」
何を言おうとしたの?とアリーシャは気になってシオンを覗き込む。
「すみません。今のはプライバシーの問題で言えません」
シオンは困ったように言った。大事なことで、絶対口外しないようにと言われているようだ。
結構頑固な男であり、アリーシャでどうにか聞こうとしても無駄だろう。
「わかったわ。そうだ。私は今からアルバート様のお見舞いに行こうと思うのだけど一緒にいかない?」
「いえ、書類を届ける必要がありますので、あと報告もあって時間がかかります」
残念であるがシオンとはここでお別れのようだ。また会えると約束して別れた。
自室に戻ったら外出用のドレスに着替えてアリーシャはクロックベル侯爵家の方へ向かった。
そこでアリーシャは見知らぬ少女の突進に動揺した。
「アリーシャァ! おー、ローランが言っていた通り上質な魔力を持っておるの。安心するがいい。全てが終わったら一緒にメデアへ帰り、私とイブでお前を立派な巫女に育ててやるぞ」
アルバートの寝室に入ると同時に抱き着いてくる亜麻色の少女にアリーシャは困惑した。
「あは、可愛らしいですね。アリーシャ様の妹さんですか?」
付き添いのドロシーは微笑ましく感想を述べる。
「や、知らない………でも、何だかこの衣装の刺繍。祭場の魔法使いたちが着ていたような」
「そうだ。私はメデアに仕える巫女のエヴァ。イブと共に現在の祭場を守る祭祀である!」
エヴァは改めて自己紹介をする。
「あれ、祭祀様は30歳の男性だったような?」
「ああ、ローランは死んだぞ」
「しっ!?」
今更知る事実にアリーシャは驚いた。
「こんな幼い子が今の祭祀になるなんて」
「代わりがおらんからな。だから、お前を立派に育てて祭祀巫女にするのだ。安心しろ。私とイブがサポートすれば問題ないし、メデアは多少の粗相は大目にみてくれる」
それなら別に双子の姉妹が祭祀をしていた方がいいのではなかろうか。アリーシャはつっこみたいが、相手は村で崇拝されている祭場の守り手である。さすがに遠慮してしまう。
「お前はエヴァとお喋りするために来たのか」
奥の寝台で元気なさそうに嫌みを言ってくるアルバートにアリーシャは当初の目的を思い出す。嫌みを言えるなら大丈夫そうだ。
「過労で倒れるなんて驚いたわ。ちゃんと夜は寝ているの?」
寝台の周りに書類が散乱している。絶対仕事をしていただろう。
「アリーシャも説教してやれ。この男寝ることもせずずっと仕事をしていたのだぞ」
「寝る時間が惜しい。父上が入院したから、いろいろやることが増えたんだ」
「え、大丈夫なの」
自分にとっては甘い言葉で花姫に送って、あとはぽいっとした男である。でも一応自分の養父だしアルバートの父親だし、心配はしている。
「うーん、回復困難だからもう戻ってこないだろう」
アルバートはどう説明しようか悩んでかなりの部分を省いた。
そういえば、シオンにローランについてはアリーシャに話すべきだと言われていたが、今の自分の体調でとても話す気力が起きない。
「それは困る」
クロックベル侯爵の復帰困難宣言にアリーシャは困惑の声をあげた。
全てが終わった後、アリーシャは花姫を辞退することを考えていた。今は花姫終了後に貰える報奨金に揺らいでるが、いつまた自分が陥れるかわからない。
やはり、呪いを片付けたらただちに辞退を申請するつもりだ。それにはクロックベル侯爵の後押しも欲しい。
「問題ない。俺が侯爵代理だから………手続きが終わるのに時間がかかるが呪いが解けた頃には侯爵になっている」
突然の話の変わりようにアリーシャは混乱した。
しばらく考え込んでまとめてみた。クロックベル侯爵は病気になり復帰できない。嫡男のアルバートが侯爵代理を務めることになる。近いうちにアルバートは侯爵となる。
ならば、呪いが片付けばアルバートが積極的に花姫辞退に協力してくれるということだ。
「ところで、何でメデアの巫女様がここにいるの?」
今更ながらの質問に、エヴァが答えた。
「回帰魔法、というやつだったか。実はローランが死んだのは回帰魔法の影響だったのだ。回帰直前までアルバートと共に呪いを何とかしようとしたが無理だったのでローランが補助してアルバートの回帰魔法を成功させたのだ。魔法の代償としてローランは回帰した直後に命を落とした」
エヴァの説明でアリーシャは自分の回帰前、呪いの装置をアルバートと共に停止させようとしたメデア村の魔法使いはローランだったと知った。
「そんな、ローラン様がどうして………」
自分の呪いが崇拝していたメデアの祭祀にまで影響していたのかと改めて気づかされる。
アリーシャにも信仰心はあり、祭祀に対しては雲の上の存在と崇めていた。
1か月に1回だけ、祭祀の指示で村中に焼きたてのパンとスープが配られる。パンは村の中で最も上質な小麦粉が使用されていてふかふかで、ごろっと野菜とお肉がたっぷり入ったスープは温かくアリーシャにとっての特別なご馳走だった。いつも母の残した冷えたパンと具のないスープだけで過ごしていたからだ。
母の呪縛の中にいたアリーシャにとって希望だった。もう一つは祖母より譲りうけたブローチである。
「ローランはずっとアリーシャの為に何かをしてやれば良かったと悔やんでいた。ロヴェルのことでアリーシャの存在を無視し続けたからな」
「ロヴェル………」
父の名である。何故ここで父の名が出てくるのか。
「誰も教えてくれなかったのか。ロヴェルは元々メデアの祭祀であった。ローランの前任、ローランの師でもあり、育ての父でもあった」
だが、ロヴェルは王都の令嬢と深い中になり、アリーシャが生まれたことにより祭祀としての力を失う。魔力もだいぶ落ちてしまった。祭祀の仕事ができなくなったロヴェルは祭祀の任を解かれ、メデアに許可を得ず子を成したことを咎められ身一つで実家に戻ることになった。メデアを崇拝する村人たちはロヴェルをメデアを裏切ったと考え、仕事を与えずロヴェルは村の外へ出稼ぎすることで生計を立てる他なかった。
声が上ずってしまった。変に思われていないだろうか。
どうして王宮にシオンが来ているのだろうか。
お茶会から帰る頃の自分の姿は少しくたびれていないだろうかと不安になる。
「仕事の書類を提出に王宮に来ておりました。もしあなたに出会えたらいいなと思ったら会えましたね」
嬉しそうにほほ笑む彼にアリーシャは顔を赤くする。
「来るとわかっていればもっと綺麗にしていたのですが」
「アリーシャ様は綺麗ですよ。今日は何かパーティーがあったのでしょうか」
「そうよ。ダイヤモンドリリー宮で行われたお茶会よ。エレン王子にエスコートしてもらいました」
その言葉にシオンは首を傾げる。
「アルは?」
「アルバート様は体調を崩されて欠席、だから代わりにエレン王子がしていただきました」
そうですかとシオンは頷いた。
「いえ、あなたに誰かエスコートしたと考えるとちょっとその方が羨ましくて………エレン王子なら仕方ないですね」
あの狩猟祭の時にも感じたが、シオンは少し思わせぶりな発言が目立つのではないか。
射止められた乙女が多くいるだろう。処刑人でも、顔がいいのだ。きっと心落ちる者もいる。
「シオン様、そのように言うのはやめた方がいいですよ」
「そのようにとは………」
「その、気があるのではないかというような発言です。他の女性だと誤解してしまいますよ」
「私は他の女性にそのように発言しませんよ」
この、とアリーシャはシオンを見つめた。まずは落ち着こう。
アリーシャの様子をみてシオンはやりすぎたかなと考えたようだ。
「すみません。ハンカチを頂いてから、少し積極的になってしまったようで。ご迷惑でしたね」
悲し気に笑うシオンはさっと一歩下がろうとする。下がらなくていい。
「あなたは花姫、処刑人の私とは違う世界の住人なので少しだけ夢をみてしまいました」
「いいわよ。別に………ただちょっと人目がありそうなところはやめてね」
アリーシャはこのやりとりを少し楽しいと思ってしまった。何だか悔しい。
シオンも楽しんでいるのかくすくすと笑っていた。
「それに私は花姫の中では最下層の泥姫よ。私に憧れても………」
自嘲気味に笑うアリーシャにシオンは真面目に彼女を見つめた。
「そのように言わないでください。あなたは綺麗です」
いちいち調子を狂わせる男である。アリーシャは顔を赤くして何も言えなくなった。
「そうですね。あなたの王宮での立場は私も耳に入っています。何故そのような呼び名が定着したか」
「そりゃ、私が無作法で、暴力・暴言吐きまくりの酷い女だったからよ。同僚の花姫にも嫉妬して当たり散らしていたこともあるし。悪いこといっぱいしたわ」
処刑される程ではないと思っているが、自分のしたことは良くないことだった。自分が嫌っていた母の言動そのものにみえてしまう。
シオンに自分のしてきたことを言うのはいやだ。自分のダメだった部分を言うのはつらい。
だが、シオンに良く思われると、不安になる。自分はそのような綺麗な存在ではなかったから。
悪女だと思われたくない。でも、善人と思われると悪い気持ちになりそうだ。
「今は違うでしょう。あなた自身、変わろうとしています」
確かに人を傷つけるのはよくないけど、今のアリーシャは反省していたをシオンは知っている。
今のアリーシャはシオンからみれば立派な淑女である。
「なのに、未だにあなたを泥姫と呼ぶ者がいるのが歯がゆいです」
「気にしなくていいよ。それに私は山村で育った元平民よ。侯爵家の直系でないし、対して他の花姫はみんな直系。綺麗な薔薇の中に雑草が紛れている感じにみえるのでしょう」
その言葉にシオンは首を横に振った。
「それはあなただけじゃありません。現に………あ、いえ」
シオンは急いで自分の口を封じた。
「なになに?」
何を言おうとしたの?とアリーシャは気になってシオンを覗き込む。
「すみません。今のはプライバシーの問題で言えません」
シオンは困ったように言った。大事なことで、絶対口外しないようにと言われているようだ。
結構頑固な男であり、アリーシャでどうにか聞こうとしても無駄だろう。
「わかったわ。そうだ。私は今からアルバート様のお見舞いに行こうと思うのだけど一緒にいかない?」
「いえ、書類を届ける必要がありますので、あと報告もあって時間がかかります」
残念であるがシオンとはここでお別れのようだ。また会えると約束して別れた。
自室に戻ったら外出用のドレスに着替えてアリーシャはクロックベル侯爵家の方へ向かった。
そこでアリーシャは見知らぬ少女の突進に動揺した。
「アリーシャァ! おー、ローランが言っていた通り上質な魔力を持っておるの。安心するがいい。全てが終わったら一緒にメデアへ帰り、私とイブでお前を立派な巫女に育ててやるぞ」
アルバートの寝室に入ると同時に抱き着いてくる亜麻色の少女にアリーシャは困惑した。
「あは、可愛らしいですね。アリーシャ様の妹さんですか?」
付き添いのドロシーは微笑ましく感想を述べる。
「や、知らない………でも、何だかこの衣装の刺繍。祭場の魔法使いたちが着ていたような」
「そうだ。私はメデアに仕える巫女のエヴァ。イブと共に現在の祭場を守る祭祀である!」
エヴァは改めて自己紹介をする。
「あれ、祭祀様は30歳の男性だったような?」
「ああ、ローランは死んだぞ」
「しっ!?」
今更知る事実にアリーシャは驚いた。
「こんな幼い子が今の祭祀になるなんて」
「代わりがおらんからな。だから、お前を立派に育てて祭祀巫女にするのだ。安心しろ。私とイブがサポートすれば問題ないし、メデアは多少の粗相は大目にみてくれる」
それなら別に双子の姉妹が祭祀をしていた方がいいのではなかろうか。アリーシャはつっこみたいが、相手は村で崇拝されている祭場の守り手である。さすがに遠慮してしまう。
「お前はエヴァとお喋りするために来たのか」
奥の寝台で元気なさそうに嫌みを言ってくるアルバートにアリーシャは当初の目的を思い出す。嫌みを言えるなら大丈夫そうだ。
「過労で倒れるなんて驚いたわ。ちゃんと夜は寝ているの?」
寝台の周りに書類が散乱している。絶対仕事をしていただろう。
「アリーシャも説教してやれ。この男寝ることもせずずっと仕事をしていたのだぞ」
「寝る時間が惜しい。父上が入院したから、いろいろやることが増えたんだ」
「え、大丈夫なの」
自分にとっては甘い言葉で花姫に送って、あとはぽいっとした男である。でも一応自分の養父だしアルバートの父親だし、心配はしている。
「うーん、回復困難だからもう戻ってこないだろう」
アルバートはどう説明しようか悩んでかなりの部分を省いた。
そういえば、シオンにローランについてはアリーシャに話すべきだと言われていたが、今の自分の体調でとても話す気力が起きない。
「それは困る」
クロックベル侯爵の復帰困難宣言にアリーシャは困惑の声をあげた。
全てが終わった後、アリーシャは花姫を辞退することを考えていた。今は花姫終了後に貰える報奨金に揺らいでるが、いつまた自分が陥れるかわからない。
やはり、呪いを片付けたらただちに辞退を申請するつもりだ。それにはクロックベル侯爵の後押しも欲しい。
「問題ない。俺が侯爵代理だから………手続きが終わるのに時間がかかるが呪いが解けた頃には侯爵になっている」
突然の話の変わりようにアリーシャは混乱した。
しばらく考え込んでまとめてみた。クロックベル侯爵は病気になり復帰できない。嫡男のアルバートが侯爵代理を務めることになる。近いうちにアルバートは侯爵となる。
ならば、呪いが片付けばアルバートが積極的に花姫辞退に協力してくれるということだ。
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エヴァの説明でアリーシャは自分の回帰前、呪いの装置をアルバートと共に停止させようとしたメデア村の魔法使いはローランだったと知った。
「そんな、ローラン様がどうして………」
自分の呪いが崇拝していたメデアの祭祀にまで影響していたのかと改めて気づかされる。
アリーシャにも信仰心はあり、祭祀に対しては雲の上の存在と崇めていた。
1か月に1回だけ、祭祀の指示で村中に焼きたてのパンとスープが配られる。パンは村の中で最も上質な小麦粉が使用されていてふかふかで、ごろっと野菜とお肉がたっぷり入ったスープは温かくアリーシャにとっての特別なご馳走だった。いつも母の残した冷えたパンと具のないスープだけで過ごしていたからだ。
母の呪縛の中にいたアリーシャにとって希望だった。もう一つは祖母より譲りうけたブローチである。
「ローランはずっとアリーシャの為に何かをしてやれば良かったと悔やんでいた。ロヴェルのことでアリーシャの存在を無視し続けたからな」
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「誰も教えてくれなかったのか。ロヴェルは元々メデアの祭祀であった。ローランの前任、ローランの師でもあり、育ての父でもあった」
だが、ロヴェルは王都の令嬢と深い中になり、アリーシャが生まれたことにより祭祀としての力を失う。魔力もだいぶ落ちてしまった。祭祀の仕事ができなくなったロヴェルは祭祀の任を解かれ、メデアに許可を得ず子を成したことを咎められ身一つで実家に戻ることになった。メデアを崇拝する村人たちはロヴェルをメデアを裏切ったと考え、仕事を与えずロヴェルは村の外へ出稼ぎすることで生計を立てる他なかった。
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