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本編① 悪女は回帰する
2 アリーシャという女
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午前の花姫授業を受けた後、アリーシャは本を読みながらエリーにお茶を淹れるように頼んだ。
彼女は不満げに「私、忙しいんですけど?」と言いながら部屋を出ていった。
アリーシャの世話をするのが彼女の仕事であるのに何を言うか。
ふと時計の方をみやると午後の3時であった。
ジベールはまだ来る気配がなかった。このまま来ないかもしれない。
それなら別の方法を考えるとするか。
花姫の日課を終わらせた後、アリーシャは自分の現状を見直した。
アリーシャ・クロックベルは侯爵家令嬢にして花姫の一人である。
元は養女である。
北方のユグラド山脈の山間のメデア村の村娘であった。
生まれて間もなく祖母を失い、父を失い、5年前に母をも失った天涯孤独の身であった。
アリーシャの母は元貴族令嬢であったが、父に一目ぼれして駆け落ちした。
婚約者を放り出しての勝手な行為に母の家族は怒って彼女を絶縁したという。
母はのどかな田舎で愛しい人と静かに暮らすことを夢にみていた。
しかし、現実は違った。
待っていた暮らしは使用人がいない小さな家での貧しい暮らしであった。
それでも村の中では立派な方なのだが母は不満であった。
身の回りのことを自分でしなければならず母はいつも愚痴をこぼしていた。父と口論絶えず、父が死ぬ前日も喧嘩をしていた。
父はお金を稼ぐ為に村を出て日雇いの仕事を続けていた。
体力のいる危険な仕事が多かったと聞かされた。
父は仕事に行ったまま帰らぬ人となった。
祖母と父を失い、母は村で孤立してしまった。
母は父が死んだ後も元貴族令嬢としての振る舞いを忘れられず、村人は近づこうとしなかった。
アリーシャに対しては多少同情していたようで、食べ物だけは恵んでもらえた。それも母は文句を言い続けていた。
母はことあるごとに自分の生活がこうなったのはアリーシャと父のせいだと怒りアリーシャへ折檻を加えた。
折角もらった食べ物をアリーシャから奪い、アリーシャを殴った後は物置部屋へと閉じ込める。
見かねた村人がアリーシャを引き取ろうと声をかけるが、母は怒って追い出してしまう。
アリーシャがいなくなれば村から施しを得られなくなると知っていた為、アリーシャを決して手放そうともしなかった。
村人は母が見えないところでアリーシャに手を貸してくれた。
彼らの親切がなければ自分は母の異常さに気づかず母の愛に乞うだけしかできなかったと思う。
母が死んだ後、アリーシャは簡単な葬儀を済ませてしばらくは母の部屋に一切触れず過ごした。
数年後にようやく母の荷物を整理、処分することとした。
荷物の中に母が大事に保管していた手紙と指輪を見つけた。
手紙の内容は母のかつての婚約者とのやりとりの手紙、婚約者と父母に対する謝罪の手紙であった。
謝罪は最後の数行だけでほとんどは自分の身の置き所への愚痴不満である。
手紙は送られることがなく実家の住所のみ記載されていた。
アリーシャは指輪を母方の祖父母に届けることとした。
早く手放したい。捨てたり売るのも考えたが巡りに巡ってよくない方向に進んでしまう気がした。
指輪は本来のあるべき場所へ戻そうと考えた場所が、母の実家であった。
祖父母が指輪を受け取るのを拒否されるかもしれない。
しかし、意外にもアリーシャは歓迎され、本家筋のクロックベル侯爵家へと案内され養女とされた。
理由は花姫候補に相応しい娘を探していたから。
アリーシャは適性を持っていた。
その適性が魔力である。
アリーシャは侯爵の期待通り花姫に選ばれた。
はじめはまるでお伽話のような展開に胸が熱くなり、自分が妃になれるかもしれないと心躍った。
この時の感情は今思えば、母譲りのものだったのでは。どう考えるとは吐き気を覚える。
待っていたのは元平民育ちだったアリーシャへの冷遇であった。
女官長はアリーシャを見下し、彼女が配置した侍女らは当たり前のようにアリーシャを無下に扱った。
ドレスを勝手に選ばれて、悪趣味なドレスで社交の場に出て笑いの的にされることがあった。
「何て下品なドレスなんだ。娼婦でもまだ上品だというのに」
その言葉を受けアリーシャは不機嫌になり、その場の食器にあたってしまった。
別の日のことであるが、お茶会に誘われた時も酷い目にあった。
わざと自分だけに苦い薬の入ったお茶を淹れられた。
熱すぎるお茶を思わずこぼしたこともあった。
舌がじんじんと痛む中さらに腹立つこととなった。
「まぁ、アリーシャ様にはお茶が早かったようね。慣れれば美味しく感じますわ」
花姫と侍女たちの笑い声に腹を立て、テーブルをひっくり返し悪評をさらにあげてしまった。
あんなわかりやすい挑発に乗せられた自分は幼かったなと思い返す。
日頃の鬱憤がたまりどうにかなってしまいそうで余り布で人形や小物入れを作りクローゼットの奥へと積み込む日々であった。真夜中に眠れなくなった時は図書館から借りた本を読んで現実逃避することもあった。
それを繰り返すうちにはじめの頃のような物に当たり散らす頻度は減った。
用意された妃教育の授業も内容は一定の箇所から理解が足りないからとはじめのページから戻されるの繰り返しであった。
おかげで花姫の中では一番勉強の進み具合は遅かった。評価も最下位であろう。
もう暗唱できる程何回も繰り返されたので、あの授業を受ける気分にはならない。
どうせ何を言おうと点数を削られてしまうのだろう。
なら授業などやらずに好きに過ごさせて欲しい。
そんなアリーシャに対して笑わない者はいた。
ローズマリー・スプリングフィールド。
スプリングフィールド公爵の令嬢で、王太子の従妹で最も妃に相応しいという花姫であった。教養高く、性格もよく、侍女や女官たちにも慕われる。王太子も彼女の元へ足しげく通っているという。
他の花姫たちも彼女には頭あがらない様子で、彼女がいるお茶会の時だけ嫌がらせはなかった。
ローズマリーの侍女たちも丁寧に対応してくれた。
図書館で出会った時に軽く会話を交わしたが、彼女はいつもニコニコしていた。
アリーシャが見つからない本は何かと聞けば後で従者に命じて部屋へ届けてくれた。
「ローズマリー様がお優しいからと図に乗るな」
「泥姫の匂いがローズマリー様に移ったらどうするの?」
そんなわかりやすい嫌みを何度聞いたかわからない。嫌気刺していたアリーシャはローズマリーの行動を予測して会わないように必死であった。お茶会に誘われても断ったが、今度は生意気だと叩かれた。
アリーシャの行動を理解してかしていないのか、ローズマリーは何かと個人的にアリーシャをお茶会に誘ってきてくれた。そのうち影から「あんなにもてなしてもらっておいて土産も寄越さないなんて図々しい」と言われることがあった。
好きで呼ばれているわけではないから知ったことではない。
そう思うと同時に確かに自分から何かを渡したことはないなと思いいたる。
彼女はお茶が好きなようなので、行商人にお願いして地元で取れて加工されたお茶を取り寄せた。銘柄は地名が簡単に載せられただけの簡素なものだ。その製品の中で一番貴族や金持ち商人に買ってもらっているものを選んだ。
「とても良い香りね」
ローズマリーは初めてアリーシャが持ってきたお土産を嬉しそうに楽しんだ。果実の香りがして嗜好品として地元で人気だったもので、ローズマリーも気に入ってくれたようだ。
「まだ茶葉が残っているから明日の楽しみにします」
はじめて誰かにものを送って喜ばれた。
悪い気はしないとその日はお茶を楽しんでいたが、数日後にローズマリーは倒れてしまった。薬物中毒によるもので、アリーシャが送ったお茶の中にその成分が含まれたという。
送ったお茶には言われた成分を入れた覚えはなかった。
しかし、証拠として存在しているとアリーシャは捕らえられ塔に幽閉された。
部屋の中を調べられクローゼットの中にある趣味の繕い物は呪いの道具だと言われ、アリーシャは花姫殺害容疑、王族呪詛容疑をかけられ有罪とされ斬首刑に処されることとなった。
そして、処刑された後はこうして半年前の生活に戻っていた。
「何か変な魔法かしら」
時間が戻る魔法は何度か聞いたことがあるが、現実不可能と言われている。
死ぬ瞬間の束の間の夢の可能性もある。
夢の中まで侍女たちに嘲笑され冷遇されないといけないなんて。
どうせ戻るなら山村にいた頃へ戻してくれればよかったのに。
このまま処刑されるなどまっぴらごめんよ。
花姫失格の烙印を早々におされて王城を出て行ってしまいたい。
侯爵家や祖父母の元へ戻る気もない。平民に戻って山奥へと帰り、自分の時間を自分の為に利用したい。
その為に花姫の責任者であるエドガー・ジベールに直訴を行ったのだ。
使用人たちを直接管理している女官長は自分のことを見下し嫌っているのを覚えている。呼んでも無視されるし、来たとしても嫌みの連続で思うように話が進まない。人の話をそもそも聞いてくれないので諦めている。
ジベールも信用はしていなかった。花姫の責任者の癖に今まで花姫の前に現れるのは数回のみであった。ほとんど花姫の管理を女官長に任せてしまっている。
無責任な男だというのがアリーシャの第一印象であった。
それでも問題ばかりの花姫が消えてくれれば肩の荷が下りることだろう。無責任ということは責任を取りたくないということだから。
処刑される前に聞いた話ではアリーシャの監督不届きでジベールは謹慎処分、領地の一部を王室に没収されたという。
ダメな花姫が消えた方がにいいだろう。
改めてアリーシャはジベールを待ち続けた。
彼女は不満げに「私、忙しいんですけど?」と言いながら部屋を出ていった。
アリーシャの世話をするのが彼女の仕事であるのに何を言うか。
ふと時計の方をみやると午後の3時であった。
ジベールはまだ来る気配がなかった。このまま来ないかもしれない。
それなら別の方法を考えるとするか。
花姫の日課を終わらせた後、アリーシャは自分の現状を見直した。
アリーシャ・クロックベルは侯爵家令嬢にして花姫の一人である。
元は養女である。
北方のユグラド山脈の山間のメデア村の村娘であった。
生まれて間もなく祖母を失い、父を失い、5年前に母をも失った天涯孤独の身であった。
アリーシャの母は元貴族令嬢であったが、父に一目ぼれして駆け落ちした。
婚約者を放り出しての勝手な行為に母の家族は怒って彼女を絶縁したという。
母はのどかな田舎で愛しい人と静かに暮らすことを夢にみていた。
しかし、現実は違った。
待っていた暮らしは使用人がいない小さな家での貧しい暮らしであった。
それでも村の中では立派な方なのだが母は不満であった。
身の回りのことを自分でしなければならず母はいつも愚痴をこぼしていた。父と口論絶えず、父が死ぬ前日も喧嘩をしていた。
父はお金を稼ぐ為に村を出て日雇いの仕事を続けていた。
体力のいる危険な仕事が多かったと聞かされた。
父は仕事に行ったまま帰らぬ人となった。
祖母と父を失い、母は村で孤立してしまった。
母は父が死んだ後も元貴族令嬢としての振る舞いを忘れられず、村人は近づこうとしなかった。
アリーシャに対しては多少同情していたようで、食べ物だけは恵んでもらえた。それも母は文句を言い続けていた。
母はことあるごとに自分の生活がこうなったのはアリーシャと父のせいだと怒りアリーシャへ折檻を加えた。
折角もらった食べ物をアリーシャから奪い、アリーシャを殴った後は物置部屋へと閉じ込める。
見かねた村人がアリーシャを引き取ろうと声をかけるが、母は怒って追い出してしまう。
アリーシャがいなくなれば村から施しを得られなくなると知っていた為、アリーシャを決して手放そうともしなかった。
村人は母が見えないところでアリーシャに手を貸してくれた。
彼らの親切がなければ自分は母の異常さに気づかず母の愛に乞うだけしかできなかったと思う。
母が死んだ後、アリーシャは簡単な葬儀を済ませてしばらくは母の部屋に一切触れず過ごした。
数年後にようやく母の荷物を整理、処分することとした。
荷物の中に母が大事に保管していた手紙と指輪を見つけた。
手紙の内容は母のかつての婚約者とのやりとりの手紙、婚約者と父母に対する謝罪の手紙であった。
謝罪は最後の数行だけでほとんどは自分の身の置き所への愚痴不満である。
手紙は送られることがなく実家の住所のみ記載されていた。
アリーシャは指輪を母方の祖父母に届けることとした。
早く手放したい。捨てたり売るのも考えたが巡りに巡ってよくない方向に進んでしまう気がした。
指輪は本来のあるべき場所へ戻そうと考えた場所が、母の実家であった。
祖父母が指輪を受け取るのを拒否されるかもしれない。
しかし、意外にもアリーシャは歓迎され、本家筋のクロックベル侯爵家へと案内され養女とされた。
理由は花姫候補に相応しい娘を探していたから。
アリーシャは適性を持っていた。
その適性が魔力である。
アリーシャは侯爵の期待通り花姫に選ばれた。
はじめはまるでお伽話のような展開に胸が熱くなり、自分が妃になれるかもしれないと心躍った。
この時の感情は今思えば、母譲りのものだったのでは。どう考えるとは吐き気を覚える。
待っていたのは元平民育ちだったアリーシャへの冷遇であった。
女官長はアリーシャを見下し、彼女が配置した侍女らは当たり前のようにアリーシャを無下に扱った。
ドレスを勝手に選ばれて、悪趣味なドレスで社交の場に出て笑いの的にされることがあった。
「何て下品なドレスなんだ。娼婦でもまだ上品だというのに」
その言葉を受けアリーシャは不機嫌になり、その場の食器にあたってしまった。
別の日のことであるが、お茶会に誘われた時も酷い目にあった。
わざと自分だけに苦い薬の入ったお茶を淹れられた。
熱すぎるお茶を思わずこぼしたこともあった。
舌がじんじんと痛む中さらに腹立つこととなった。
「まぁ、アリーシャ様にはお茶が早かったようね。慣れれば美味しく感じますわ」
花姫と侍女たちの笑い声に腹を立て、テーブルをひっくり返し悪評をさらにあげてしまった。
あんなわかりやすい挑発に乗せられた自分は幼かったなと思い返す。
日頃の鬱憤がたまりどうにかなってしまいそうで余り布で人形や小物入れを作りクローゼットの奥へと積み込む日々であった。真夜中に眠れなくなった時は図書館から借りた本を読んで現実逃避することもあった。
それを繰り返すうちにはじめの頃のような物に当たり散らす頻度は減った。
用意された妃教育の授業も内容は一定の箇所から理解が足りないからとはじめのページから戻されるの繰り返しであった。
おかげで花姫の中では一番勉強の進み具合は遅かった。評価も最下位であろう。
もう暗唱できる程何回も繰り返されたので、あの授業を受ける気分にはならない。
どうせ何を言おうと点数を削られてしまうのだろう。
なら授業などやらずに好きに過ごさせて欲しい。
そんなアリーシャに対して笑わない者はいた。
ローズマリー・スプリングフィールド。
スプリングフィールド公爵の令嬢で、王太子の従妹で最も妃に相応しいという花姫であった。教養高く、性格もよく、侍女や女官たちにも慕われる。王太子も彼女の元へ足しげく通っているという。
他の花姫たちも彼女には頭あがらない様子で、彼女がいるお茶会の時だけ嫌がらせはなかった。
ローズマリーの侍女たちも丁寧に対応してくれた。
図書館で出会った時に軽く会話を交わしたが、彼女はいつもニコニコしていた。
アリーシャが見つからない本は何かと聞けば後で従者に命じて部屋へ届けてくれた。
「ローズマリー様がお優しいからと図に乗るな」
「泥姫の匂いがローズマリー様に移ったらどうするの?」
そんなわかりやすい嫌みを何度聞いたかわからない。嫌気刺していたアリーシャはローズマリーの行動を予測して会わないように必死であった。お茶会に誘われても断ったが、今度は生意気だと叩かれた。
アリーシャの行動を理解してかしていないのか、ローズマリーは何かと個人的にアリーシャをお茶会に誘ってきてくれた。そのうち影から「あんなにもてなしてもらっておいて土産も寄越さないなんて図々しい」と言われることがあった。
好きで呼ばれているわけではないから知ったことではない。
そう思うと同時に確かに自分から何かを渡したことはないなと思いいたる。
彼女はお茶が好きなようなので、行商人にお願いして地元で取れて加工されたお茶を取り寄せた。銘柄は地名が簡単に載せられただけの簡素なものだ。その製品の中で一番貴族や金持ち商人に買ってもらっているものを選んだ。
「とても良い香りね」
ローズマリーは初めてアリーシャが持ってきたお土産を嬉しそうに楽しんだ。果実の香りがして嗜好品として地元で人気だったもので、ローズマリーも気に入ってくれたようだ。
「まだ茶葉が残っているから明日の楽しみにします」
はじめて誰かにものを送って喜ばれた。
悪い気はしないとその日はお茶を楽しんでいたが、数日後にローズマリーは倒れてしまった。薬物中毒によるもので、アリーシャが送ったお茶の中にその成分が含まれたという。
送ったお茶には言われた成分を入れた覚えはなかった。
しかし、証拠として存在しているとアリーシャは捕らえられ塔に幽閉された。
部屋の中を調べられクローゼットの中にある趣味の繕い物は呪いの道具だと言われ、アリーシャは花姫殺害容疑、王族呪詛容疑をかけられ有罪とされ斬首刑に処されることとなった。
そして、処刑された後はこうして半年前の生活に戻っていた。
「何か変な魔法かしら」
時間が戻る魔法は何度か聞いたことがあるが、現実不可能と言われている。
死ぬ瞬間の束の間の夢の可能性もある。
夢の中まで侍女たちに嘲笑され冷遇されないといけないなんて。
どうせ戻るなら山村にいた頃へ戻してくれればよかったのに。
このまま処刑されるなどまっぴらごめんよ。
花姫失格の烙印を早々におされて王城を出て行ってしまいたい。
侯爵家や祖父母の元へ戻る気もない。平民に戻って山奥へと帰り、自分の時間を自分の為に利用したい。
その為に花姫の責任者であるエドガー・ジベールに直訴を行ったのだ。
使用人たちを直接管理している女官長は自分のことを見下し嫌っているのを覚えている。呼んでも無視されるし、来たとしても嫌みの連続で思うように話が進まない。人の話をそもそも聞いてくれないので諦めている。
ジベールも信用はしていなかった。花姫の責任者の癖に今まで花姫の前に現れるのは数回のみであった。ほとんど花姫の管理を女官長に任せてしまっている。
無責任な男だというのがアリーシャの第一印象であった。
それでも問題ばかりの花姫が消えてくれれば肩の荷が下りることだろう。無責任ということは責任を取りたくないということだから。
処刑される前に聞いた話ではアリーシャの監督不届きでジベールは謹慎処分、領地の一部を王室に没収されたという。
ダメな花姫が消えた方がにいいだろう。
改めてアリーシャはジベールを待ち続けた。
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