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1 コーネリア・エリザベス
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昼の頃合い、春の日差しが部屋を照らす中、椅子に腰かける金髪の令嬢は頭を抱えた。
このうららかな天気に似合わない程くもった表情である。
「コーネリアお嬢様、落ち着かれましたか?」
3日前に乱心していた主人を心配し、侍女のエマは暖かいお茶を淹れた。
「ありがとう」
金髪の令嬢はエマからお茶を受け取りこくりと飲む。
香りも、味わいも間違いなく現実のものとわかり、彼女は深くため息をついた。
彼女はコーネリア・エリザベス。
ウェーブのかかった背中まである金髪、深い緑色の瞳、釣り目の少し気が強い印象の美少女であった。
侯爵家の唯一の跡取り娘として親から大事に育てられた為、性格は難ありの方であった。
そういう風にしたのは自分なのであるが。
3日前、コーネリアは鏡を見て悲鳴をあげて、狂乱のまま窓から身を投げようとした。
使用人たちは慌てて彼女を止めて、とりあえず医者を呼んでみたが原因はさっぱりわからない。
当主のいない時に唯一の跡取り娘がこうなっては大問題である。
使用人たちはどうしていいかわからないが、まずは当主へ報告することとした。
半日したところでコーネリアは茫然として、頭を抱え髪をぐしゃぐしゃにしたり、ベッドの上で転がりまくるなどの普段から考えられない姿をみせて使用人は困惑した。
そこから数日彼女は部屋から出ることがなく、使用人たちは当主が早く戻ってくることをただ祈った。
ようやく落ち着いたのか、お腹が空いたのかわからないが彼女は侍女に食事を用意してほしいと部屋から顔を出した。
部屋へ食事を届け、エマは彼女の乱れた姿を整えてやり今に至る。
「一体どうされたのです。エマで宜しければ何でも話を聞きます」
コーネリアは困ったようにエマを見つめた。
「喋った方が楽になるといいますし」
「そうね……」
ようやくコーネリアは頷いた。
「エマ、今からいう話を聞いて私をくるっていると思うかもしれない。だけど聞いてちょうだい」
彼女は真剣なまなざしでエマにすがるように言った。とにかく今の混乱した情報を外へ出してしまいたそうな深刻な表情であった。
エマはごくりとのどを震わせて、覚悟を決めて彼女の話に耳を傾けた。
「実は、私はコーネリア・エリザベスじゃないの」
元は日本という国の、ただの事務職であった。
趣味は、漫画とゲームにライトノベル、それに合わせた同人誌漁りである。
「すみません。ちょっとわかりません」
コーネリアの3行の説明でギブアップした。
想像以上にわけわからない単語で、エマは首を傾げた。
漫画とは何だろうか。ゲーム、ライトノベル? おそらくカード遊びや小説でしょうね。
同人誌とは何だろう。
「あ、そうよね。まずは漫画っていうのは絵がいっぱいでこう動いているようにみせる物語の本ね。ゲームは操作して……あれ、なんというのかな。カードゲームの延長というか、物語の人物になった気分を味わえるのが多くて……同人誌は非商業の本ね。さっきいっていた商業作品が好きで、そこをベースに物語を書いて発表するの。あ、でもプロが非公式に発表することもあるわ」
なるほど、わからない。
コーネリアは一生懸命説明している。しかし、エマにはピンとこない。
とりあえずだいたいが何かしらの物語の媒介だと解釈しよう。
「それでこの世界はゲームの世界なの。私が学生時代、プレイしたRPG『ディアマイナイト』、略して『ディナイト』の世界なのよ」
コーネリア(?)がいうのは、この世界は物語の世界なのだという。
多くの魔物、害獣、異民族が人々の暮らしを脅かし、さらに100年に一度現れる世界の脅威が訪れる。
それに対抗するのが聖女の騎士団であり、彼らの物語を描いたものらしい。
序盤では、もうすぐ現れるであろう聖女を待ちながら、大陸中から集う騎士たちが切磋琢磨している。そして、大陸中が集められた100人の聖女候補たちが試練を受け1人が聖女に選ばれる。その過程で契約を結んだ騎士たちが聖女の騎士団となるのである。後で参加した騎士もいる。
聖女の騎士団に選ばれるのは8人である。
少女が主人公のRPGで仲間の騎士たちをサポートしたり、騎士の視点になって戦うこともできる。
そして選択肢によってどの騎士と結ばれるかマルチエンディングが存在している。女騎士との友情エンディングもある。
「そうですか。それでお嬢様は主人公になって世界を救う旅にでも出るのですか?」
世界の脅威ももうすぐだし、聖女もそろそろ現れることだろう。
そういえば、聖女候補の一人として推薦を受けていたのをエマは思い出した。
エマの問いにコーネリアはずぅんと重くなった。
「私は、主人公ではないの」
「それではご友人枠? もしかして騎士になられるとか」
コーネリアはぷるぷると震えた。
「いないのよ」
彼女の言葉にエマは思わず「は?」と口を開いた。いけないとすぐに口を閉ざす。いくらなんでも仕える相手への礼儀がなっていなかった。
「私は、存在しない悪役令嬢なの」
コーネリアは恐怖の声をあげた。
存在しないとはどういうことか。
このうららかな天気に似合わない程くもった表情である。
「コーネリアお嬢様、落ち着かれましたか?」
3日前に乱心していた主人を心配し、侍女のエマは暖かいお茶を淹れた。
「ありがとう」
金髪の令嬢はエマからお茶を受け取りこくりと飲む。
香りも、味わいも間違いなく現実のものとわかり、彼女は深くため息をついた。
彼女はコーネリア・エリザベス。
ウェーブのかかった背中まである金髪、深い緑色の瞳、釣り目の少し気が強い印象の美少女であった。
侯爵家の唯一の跡取り娘として親から大事に育てられた為、性格は難ありの方であった。
そういう風にしたのは自分なのであるが。
3日前、コーネリアは鏡を見て悲鳴をあげて、狂乱のまま窓から身を投げようとした。
使用人たちは慌てて彼女を止めて、とりあえず医者を呼んでみたが原因はさっぱりわからない。
当主のいない時に唯一の跡取り娘がこうなっては大問題である。
使用人たちはどうしていいかわからないが、まずは当主へ報告することとした。
半日したところでコーネリアは茫然として、頭を抱え髪をぐしゃぐしゃにしたり、ベッドの上で転がりまくるなどの普段から考えられない姿をみせて使用人は困惑した。
そこから数日彼女は部屋から出ることがなく、使用人たちは当主が早く戻ってくることをただ祈った。
ようやく落ち着いたのか、お腹が空いたのかわからないが彼女は侍女に食事を用意してほしいと部屋から顔を出した。
部屋へ食事を届け、エマは彼女の乱れた姿を整えてやり今に至る。
「一体どうされたのです。エマで宜しければ何でも話を聞きます」
コーネリアは困ったようにエマを見つめた。
「喋った方が楽になるといいますし」
「そうね……」
ようやくコーネリアは頷いた。
「エマ、今からいう話を聞いて私をくるっていると思うかもしれない。だけど聞いてちょうだい」
彼女は真剣なまなざしでエマにすがるように言った。とにかく今の混乱した情報を外へ出してしまいたそうな深刻な表情であった。
エマはごくりとのどを震わせて、覚悟を決めて彼女の話に耳を傾けた。
「実は、私はコーネリア・エリザベスじゃないの」
元は日本という国の、ただの事務職であった。
趣味は、漫画とゲームにライトノベル、それに合わせた同人誌漁りである。
「すみません。ちょっとわかりません」
コーネリアの3行の説明でギブアップした。
想像以上にわけわからない単語で、エマは首を傾げた。
漫画とは何だろうか。ゲーム、ライトノベル? おそらくカード遊びや小説でしょうね。
同人誌とは何だろう。
「あ、そうよね。まずは漫画っていうのは絵がいっぱいでこう動いているようにみせる物語の本ね。ゲームは操作して……あれ、なんというのかな。カードゲームの延長というか、物語の人物になった気分を味わえるのが多くて……同人誌は非商業の本ね。さっきいっていた商業作品が好きで、そこをベースに物語を書いて発表するの。あ、でもプロが非公式に発表することもあるわ」
なるほど、わからない。
コーネリアは一生懸命説明している。しかし、エマにはピンとこない。
とりあえずだいたいが何かしらの物語の媒介だと解釈しよう。
「それでこの世界はゲームの世界なの。私が学生時代、プレイしたRPG『ディアマイナイト』、略して『ディナイト』の世界なのよ」
コーネリア(?)がいうのは、この世界は物語の世界なのだという。
多くの魔物、害獣、異民族が人々の暮らしを脅かし、さらに100年に一度現れる世界の脅威が訪れる。
それに対抗するのが聖女の騎士団であり、彼らの物語を描いたものらしい。
序盤では、もうすぐ現れるであろう聖女を待ちながら、大陸中から集う騎士たちが切磋琢磨している。そして、大陸中が集められた100人の聖女候補たちが試練を受け1人が聖女に選ばれる。その過程で契約を結んだ騎士たちが聖女の騎士団となるのである。後で参加した騎士もいる。
聖女の騎士団に選ばれるのは8人である。
少女が主人公のRPGで仲間の騎士たちをサポートしたり、騎士の視点になって戦うこともできる。
そして選択肢によってどの騎士と結ばれるかマルチエンディングが存在している。女騎士との友情エンディングもある。
「そうですか。それでお嬢様は主人公になって世界を救う旅にでも出るのですか?」
世界の脅威ももうすぐだし、聖女もそろそろ現れることだろう。
そういえば、聖女候補の一人として推薦を受けていたのをエマは思い出した。
エマの問いにコーネリアはずぅんと重くなった。
「私は、主人公ではないの」
「それではご友人枠? もしかして騎士になられるとか」
コーネリアはぷるぷると震えた。
「いないのよ」
彼女の言葉にエマは思わず「は?」と口を開いた。いけないとすぐに口を閉ざす。いくらなんでも仕える相手への礼儀がなっていなかった。
「私は、存在しない悪役令嬢なの」
コーネリアは恐怖の声をあげた。
存在しないとはどういうことか。
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