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7章

5 森の奥の会議

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 クロヴィスが指定した場所へはライに赴いてもらった。リリーは近くの路地裏で待機する。
 ライは見知らぬ少年の姿に扮して噴水場所まで行き戻ってきた。

「どうだった?」
「いた。髪型を変えているけど、トラヴィスだった」

 特に捕らえられている様子はない。少しだけ疲労感がみえ、心配そうにあたりに注意を向けてある。
 リリーはふぅっとため息をついた。
 今の自分の行動ひとつでライラを危険に晒してしまう。ライに指示を出して、周囲に変装した騎士がないかも確認してようやくリリーは噴水の方へと近づいた。

「やぁ、信じてもらえたかな」

 クロヴィスの朗らかな笑みにリリーは困った表情で頷いた。
 とりあえず人目がつかないように移動する。ヴィイの森へは簡単に騎士たちが出入りできないだろう。
 いざとなればライのひょうたんで二人を幽閉してしまえばいい。
 後はオズワルドの弟子が到着するまではひたすら待機してしまおう。

 最悪な事態を想定しながらリリーとライは二人をヴィイの森の小屋へと案内した。

「あ、クロヴィス!」

 水を組んでいたアビゲイル公女は大声でクロヴォスの名を呼んだ。予想外の人物をみてクロヴィスは目を丸くした。

「公女殿下、なぜここに? あれ公城には」
「そんなの影武者をたてれば簡単よ」

 簡単なものであるかとリリーはつっこみたかったが、口の中へと押し込む。

「と、とりあえずそれは私が持ちますっ」

 さすがに公女に水汲みをさせるのに抵抗感があったようだ。クロヴィスはアビゲイル公女から水の入った桶を奪った。
 アビゲイル公女が指示した小屋の中の甕の中へと水を注ぎこんでもらった。

「いっぱいになるまでくんできてほしいな」
 
 さすがに小川まで往復して水を運ぶのはアビゲイル公女にとって面倒な労働である。ちらっと目配せして頼むとクロヴィスは苦笑いした。
 実は看病の合間、オズワルドが残したと思われる本を読んであまり紙で絵を描いて過ごしていた。掃除や、水汲みの手伝いもある程度はしてくれている。
 リリーの想像以上にアビゲイル公女は小屋での生活になじんでいていた。
 リリーとライに比べると悲壮感は薄くたくましい。
 その上、使えるものを逃さない彼女は結構どこへいってもうまくいくかもしれない。
 クロードが彼女の帝都留学を心配していないと言っていた理由がわかった。

「おおせの通りに」

 クロヴィスは仕方ないと望みのまま水をくむ作業に移った。クロヴィスのことはアビゲイル公女に任せるとしてトラヴィスを奥の部屋へと案内しよう。

「ずいぶん弱っておいでです。あなたが奥様の味方であることを願っています」
「ありがとう。君のおかげでライラは助かったようなものだな」

 暗にライラを裏切る行為を許さないと伝えたのだが、トラヴィスは気にしていないようだった。
 奥の部屋へと入るとブランシュを撫でていたライラが驚いて起き上がろうとした。
 あやうく寝台から落ちそうなところをトラヴィスが抱えた。

「お兄様」

 今の自分の状況をライラはまだ把握しきれていない。トラヴィスに何と言えばいいのかわからず、ただ彼を見つけるしかできなかった。

「無事でよかった」

 トラヴィスはそういいライラを抱きしめた。彼のぬくもりでようやくライラは安堵して、大粒の涙を浮かべた。
 しばらくしてライラは眠りについた。
 確認した後に全員暖炉の部屋で密集しいていた。
 トラヴィスはライから妹の病状を確認していた。まだ熱が続いているが、リリーの看病とライの薬とささやかながら治癒魔法で快方へ向っている。
 最初は不安な様子であったが、話が終わったらようやくトラヴィスはリリーとライに頭を下げた。

「妹を救ってくれて感謝します」

 間違いなくトラヴィスはライラの味方である。リリーはようやく自分の選択肢に誤りがなかったと胸をなでおろした。

「よかった」
「あれ、まだ信用されていなかった?」

 さすがにショックだったようでクロヴィスは肩を落とす。

「そりゃそうよ。お父様も、侯爵もあんな状態だし」

 用心して損はないでしょうというアビゲイル公女にクロヴィスは苦笑いした。

 今後どうすべきかと案を出し合っている最中に出入口を叩くノック音が響く。
 客人かとクロヴィスに呑気につぶやくが、リリーは急いでたちあがり扉をあけた。
 このヴィイの森の小屋は特殊な結界のおかげで簡単にたどり着くことができない。
 ここを訪れることができるということはオズワルドの関係者である。

「あ、はじめまして。私はオズワルド様の弟子のノーラと申します」

 乗馬の為に男ものの服を着ているが、女性のノーラは小屋の中にいる面々をみて自己紹介をした。

「とりあえず、リーゼロッテ女史から預けられた品です。ライさんはどちらでしょうか」
「はいはーい」

 ノーラの言葉にライはぴょんとはねて荷物を受け取る。中には湯の花の補充と、各症状に効果ある薬が入っていた。アルティナ帝国経由で取り寄せたものもある。

「まずは経緯を教えていただきますか? 師に突然命令でここへ向わされて何をしなければいいのかわからず」

 オズワルドが向かわせた弟子というからにはきっとこの事件の助けになるのであろう。
 だが、説明をろくにせず向かわせるのはどうかと思うよ。

 リリーはここまで至る経緯を説明した。
 ライラが第三皇子殺害の容疑で投獄されたこと、兄トラヴィスは病院から脱出して共犯者容疑がかけられていること、肝心のクロードが行方不明であること。
 クロヴィスの情報では被害者の第三皇子は一命をとりとめたが、まだ意識は戻らず厳重管理の中だという。彼が意識を取り戻せれば、真犯人を伝えてくれれば話は早いのだが。
 とにかく今の公都は混乱状態であった。

「なるほど。わかりました。まずは奥様の容疑を否定することを優先しましょう」
「そんなことができるの?」
「はい。師より説明もなく持たされた『蝶の足跡』があります」

 ノーラはさっと荷物から瓶を取り出した。中には淡い紫色の液体がみられる。

「これは聖国製の魔法道具であり、液を垂らせば使用者のわずかな痕跡をたどりつけるというもの。もちろん、聖国の品質証明書もありますので、いかさまだと訴えられることはないと思います」
「いやぁ、どうかな。今の大公たちの現状をみても正論で説き伏せようとしても何とかなるとは思わないよ」

 クロヴィスはうまくいくかなと便利な道具に首を傾げた。確かにその通りである。
 事件調査を慎重にするべきだという公妃の訴えを退け、公妃を幽閉してしまったのである。
 公城の男たちも今やライラを陥れる発言しか言わなくなり、おかしいと感じている女性たちは息をひそめている。

「その状態を何とかするために応援を頼んでいたのですね。あの人。……その方は来るのに時間がかかりそうです」

 ようやくオズワルドの端的な指示内容の意図を把握したノーラは深くため息をついた。
 オズワルドの弟子でここまでできた人間は他にないと言われている。元は公城の侍女であったが、クロードとしてはオズワルドの弟子になっていろいろ良かったと思っているなどリリーは知らない。

「応援というのはどこから来るのです?」

 イセナだろうか。そう思っていたらもっと別の場所であった。

「ジェノヴァ聖国です。さすがに大公たちも彼らが出れば強くは出られないでしょう」

 このおかしな状況を解析して解決してくれるかもしれない。
 何かしら人為的な魔法の気配が感じられる。

「一応、師は最近魅了対策魔法に力を入れていましたが、あくまで予防程度の効果しか見込めませんし」

 ノーラはふとアビゲイル公女の袖口の琥珀石のカフスを見た。

「おや、なぜ公女殿下がそれをお持ちで?」

 クロヴィスも気づいていたようで、アビゲイル公女の袖口のカフスに指さした。

「大公殿下が身に着けていたカフスですよね?」
「あ、やっぱり。公城を出る前に庭で拾ったんだけどそのまま持ち出したのよ」

 2つもそろえて庭に放置されていたということは作為的に捨てられたものかもしれない。なら、アビゲイル公女がそのまま拝借してしまってもいいだろう。

「それは師がつくった魅了魔法対策道具です。私の兄弟子が助手を務めて6か月かけて完成させたそうです」

 道具本態は琥珀石の方らしい。樹液から琥珀石が完成されるのはありえない程の年月を要するが、兄弟子の時間魔法により樹液から琥珀石を作り出すことに成功した。その過程にオズワルドは魅了対策の魔法を封じ込めてある。ノーラの兄弟子がいなければ完成されなかった品だ。
 まだ数に限りがあり、試作段階であるが用心の為にクロードから大公へと渡しておいたという。

「どうやら師は例の夫人が魅了魔法の使い手だと考えたようですね」

 ジュリアからの手紙から、他の情報も取り寄せてアメリーの異常さに気づいたようだ。確定判断はできないが、密かに進めていた魅了魔法対策をクロードに持たせたようだ。
 そういえばとトラヴィスは思い出した。出発前にジュリアから琥珀石のタイピンをもらった。オズワルド経由で手に入れた琥珀石であり、是非トラヴィスにも身に着けてもらいたいと。
 ポケットの中に入っているタイピンを取り出すとノーラは「あ、それもです」と答えた。

「あれ、ということは」

 クロヴィスは首にぶらさげているチェーンを引っ張り出した。胸元の琥珀石の指輪をみてノーラは同じ反応を示した。
 オズワルドはアメリーの魅了(仮定)対策にと複数の男に持たせたようだ。

「一番出来栄えのいいものは閣下と大公殿下にお渡ししたようですが」
「つまりお父様は何者かにカフスを捨てられてあの女の魅了にかかってしまったの?」

 アビゲイル公女はカフスを外して、自分の父の予測をたてた。

「可能性はありますね。突然の大公殿下の豹変は異常ですし」
「でも、大公である父の持ち物を簡単に触れるものなんて早々いないわ」

 もしかすると傍近くで仕えていた従僕の仕業か。彼も様子がおかしくなっていた。
 アメリーの魅了を先に受けて、大公の持ち物を持ち去ったのだろう。魅了を防ぐ道具と思われるものを。
 その上で改めてクロードとの面会を求めて、大公を篭絡してクロードをどこかへ閉じ込めた。
 さすがに兄を人質に取られれば、クロードもうかつには手を出せない。
 ライラから聞いたアメリーにすっかり絆された大公の姿はそれで辻褄が合いそうである。

「せめて、国の指導者であるお父様をもとにもどさなきゃ」

 そうしないと何をしようと無駄に終わってしまう。

「再びカフスをつけるだけでは……魅了魔法は、毒蛇のようにしつこく絡みついているでしょう」

 だからこそ聖国の力が必要になる。彼らは長いこと邪教と争い続けていた。人の心を踏みにじる魔法に対する研究もおこなわれており、それに歪められていた人々の治療と後遺症のケアに力を入れている。

 聖国からの応援が来るのにどれだけの時間を要するだろうか。船でイセナまでくるのに3日はかかる。全力で馬をとばしても公国・帝国の国境まで1週間はかかるだろう。

「別に聖国の治癒魔法じゃなくてもいいんじゃないか?」

 ライは荷物の確認を終えて会話に参加してきた。ごそごそと自分の荷物を取り出す。

「魅了魔法は東の方にもあった魔法で、うちの祖先の一族にそれを得意とした女が現れたんだ」

 ユァンという名の北天狐の女である。ユァンは国を乱したため、ユァンの師が申し訳なく感じて魅了魔法を第三者が解除する魔法を研究していた。魔法にすることは難しかったが、少しずつ毒気を抜く薬は完成させてある。1日3回、7日間服薬させる必要がある。甘いかおりのお茶のように感じられるので、よほどのお茶嫌いでなければ飲むのは苦痛にならないだろう。

「薬の製法は知っているぞ。一応隠れ里を出るときに材料を持ち出しているし」

 といっても数人分しか作れない。
 今は大公だけでも正気に戻せるのであれば十分であろう。

「大公を飲ませられるのは……」
「私が何とかするわ」

 薬が完成されれば、それを持って公城へと戻る。何とか理由をつけて飲ませて見せよう。
 従僕の目を盗み、娘が父へお茶をふるまうようにみせかける。

「私があの女の毒を抜いて見せる」
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