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4章 北天狐

3 北の老狐

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「んにゃんにゃ、にぎやかだねぇ」

 玉座の方からのんびりとした口調が聞こえてきてライラたちはさっと視線を集中した。
 先ほどまで眠っていた長が起きてくれたのである。

「ようこそ、人間の客人よ。待たせてしまって悪かったね」

 最近どうも眠気に勝てなくてと長はふぁあっとあくびをした。

「私はタキ。このシャフラの北天狐の一族の長をしている」

 ゆっくりと頭を揺らして挨拶をしてくる。
 ライラは応じるように淑女の礼をした。それに合わせてライラの腕の中にいる護竜もお辞儀をする。

「私はライラ・アルベルと言います。アルベル辺境伯の妻です」
「ほほう、大雪ムカデを退治した英雄の」

 ライラの身分を知らなかったライとレイはやや興奮気味にライラの傍らに寄り添った。

「すごいや。英雄の番(つがい)だったんだね」
「そっか。大雪ムカデを退治した英雄、確かクロードだったっけ。かっこよさそうだな」

 先ほど、ライとレイが雪だんごで顔面へぶつけた男のことであるが、2匹は知りもしない。
 すごいのは夫であるが、褒められてライラは嬉しい気持ちになった。

「ふーん」

 ベンチェルは興味深げにライラを改めて見つめた。
 彼としてはただのアルベルの豪商の娘だろうと思っていたが、まさか思いもよらない大物だった。

「チェチェがいたら大興奮だっただろうなぁ」

 間の抜けたような感想を述べる。チェチェというのがどうやら彼の旅伴のようである。

 そういえば、彼は何者なのだろうか。

 ライラはちらりと考えてしまう。
 遥か東のかなた特有の肌の色をしている。旅商人だろうか。

 ぶるぶると首を横に振った。今は北天狐の長との用事を終わらせて一刻も早くクロードの元へ帰らなければ。
 きっと心配していることだろう。

「あの、長様。私に御用と伺いました」

「ああ、そうだった。そなたが先ほど笛を吹いたのがとても懐かしく感じられて」
「先ほど……」

 北天狐が懐かしくなるような曲だったのだろうか。確か、公都へ発つ前に公妃から譲られた楽譜であった。
 公国に古くから伝わっている民謡で、単調な流れから複雑なものもあり練習に利用させていただいていた。
 ブランシュがリクエストしたのはちょうどそのうちの一曲であった。

「この国に古く伝わる曲だったからでしょうか」

 小さな子供も歌っている曲だったはずだ。ライラの演奏を聞いて今更感じるだろうか。

「笛で吹いていたからかな。そなたの笛はサーニアの笛によく似ている」
「サーニア?」

 ライとレイが言っていた名前である。

「ライラよ。もう少し傍まで近づいてくれ。そこにいる護竜も一緒で構わない」

 部外者のライラが一族にとって大事な存在に近づいて問題ないのだろうか。
 タキはライラに声をかけて、ライラは周りの様子を伺った。周りの北天狐たちはこくりと頷いていた。
 ライラはおそるおそるタキへと近づく。

 タキは目を大きく見開いてライラの姿をじっと見つめた。この北天狐は、老齢により目が衰えていた。
 かなり近づかないと相手の姿がわからないようであった。
 聴覚だけ過敏に残っていて、それが彼女にとって大事な刺激となっている。
 
「ああ、サーニア。よく、このアルベルに戻ってきてくれた」

 タキは愛し気に頭を起こしライラの肩へと鼻をつけた。くんくんと香りをかぐと彼女はますます嬉しそうに鳴いた。

「あの、私はライラです」

 はっと気づいたタキはしゅんとしおれて頭をひっこめた。

「恥ずかしい姿をみせてしまった」

 よく見れば別人だとわかっていたのに、雰囲気が同じでついつい昔を懐かしく感じた。

「そんなはずはないと思ったが」
「サーニアとはどなたでしょうか。長様の大事な友人ですか?」

 ライラの質問にタキは答えた。少し悲し気な表情を浮かべて。
 何か悪いことをしたような気分になってしまう。

「サーニアは私の友人だった。そして、頑固な護竜の心を溶かした少女だった」

 今からずっと昔の話になる。
 サーニアは北からアルベルへと入ってきた。彼女はある病に冒されていた。
 ここより北の人間たちに伝わる奇病「雪結晶病」。
 一定の寒さで血液内が結晶化し、それが異物と認識され免疫反応を引き起こす病気である。温暖な気候の中にいれば、結晶がゆるやかに改善されるが寒い気候が訪れれば再発する。

 北天狐にも同様の病の者がおり、果たして人間から北天狐に移ったのか、北天狐から人間に移ったのかは不明である。
 ごくまれに母と娘、孫娘の間で遺伝することがある。

 サーニアはその病により寒い時期には高熱を発して仕事ができない状態になった。
 一族はサーニアをお荷物と感じ、切り捨てようとした。
 食料と水を渡して彼女をアルベルへと追放した。

 当時のアルベルは非常に厳しい極寒の土地であった。さらなる北の一族たちですら近づくことを躊躇う場所。
 魔物も多く存在しておりとてもじゃないが乗り越える気にもなれない。
 サーニアをアルベルへ送ったのは確実に寒さで死ぬのを狙ってのことだった。
 ただし一族はサーニアに夢をみせていた。
 アルベルを越えて、さらに荒れ地を越えてみれば、南の温暖な土地へとたどり着ける。
 食べ物も豊富で、寒さによって病が悪化することもない。そこであればサーニアも幸せに暮らせるだろうと。

 病に苦しんでいたサーニアは、一族がみせてくれた夢を信じてアルベルを越えることにした。
 彼女の荷物は1か月分の食料と水、母から渡された金属で作られた横笛である。

 アルベルに入って数日サーニアは熱に倒れた。寒さだけではなく、熱に冒されどうにかなりそうだった。
 彼女は薬を飲み何とか乗り越えようとした。

 雪ムカデに怯えながらもサーニアは南へと進もうとした。
 そんな彼女を哀れんだのは北天狐であった。
 自分の一族にも同様の病の者がいる。北天狐はせめてもの情けでサーニアを自分たちの領域へと案内した。
 サーニアは北天狐の大事なお湯につかり、病の苦しみが軽減されるのを感じた。
 一瞬治ったと思ったが、1年後にはまた病は再発するであろうと北天狐に言われた。
 それでも苦しみは和らいだので、サーニアはせめてものお礼にと北天狐たちの横笛の演奏をした。
 それは彼女が母から教わった民謡であった。
 北天狐たちはサーニアの演奏を喜んだ。もっと聞きたいとねだり、サーニアは知る限りの演奏を続けた。
 ついに知っている曲全てを演奏しえて、北天狐はさらに新しい曲を求めた。
 サーニアは思考錯誤を繰り返し新しい曲を作り北天狐を喜ばせた。
 ある日、サーニアの曲に合わせるように笛の音が聞こえた。
 もしかすると自分と同じ人がアルベルに棲んでいるかもしれない。
 サーニアは期待し、笛の音の方へと近づいた。
 そこにいたのは幼い竜であった。白いつばさを持った美しい竜である。
 どうやら母竜と別れてしまったようだ。
 北天狐が言う。近くに雪ムカデの群れをみた。きっと母竜は食われてしまったのだろう。この年の子をこんなところで放置しないだろう。
 戻ってこない母の声を求めて、外まで出てきたのだろう。
 サーニアは幼い竜へ手を差し伸べるが、竜は警戒している。
 巣へ戻してやろうとしてもサーニアにも、北天狐にも威嚇をして触れさせもしなかった。

 仕方ない。竜はこのまま放置しよう。

 そうしては雪ムカデに喰われてしまうかもしれない。

 それは仕方ないことだ。

 サーニアと北天狐はしばらく言い合い、サーニアはそうだと横笛を取り出した。先ほどの演奏をしていくと竜は耳をぴんぴんと反応し、サーニアの足元へとしがみついた。
 どうやらサーニアの横笛が母竜の声だと思ったようだ。

 洞窟へ連れて帰り、サーニアは幼い竜を育てることにした。何が必要かわからず、北天狐の知恵を借りながら竜を育てていった。
 サーニアが横笛を吹くと、竜は喜んだ。彼女の演奏に興味惹かれた他の竜たちが次々とサーニアの元へと集まる。
 あんなに警戒心の強い竜がよくここまで人に懐いたものだと北天狐は不思議に感じた。
 他の竜の協力もあり幼い竜の養育は困ることがなかった。
 一人で餌をとれるようになったのを確認してサーニアはようやくひと段落ついたと再び旅へ出た。

 幼かった竜はサーニアにすっかり懐き、彼女についていった。サーニアを心配して北天狐も1匹、彼女のお供をする。
 まだ寒い環境は続いている。それでもサーニアは旅を楽しんだ。
 行くさきざきでサーニアは演奏をして、竜たちの関心を惹いた。そのおかげで彼女の旅はだいぶ楽なものへと変わった。

 しかし、苦難は再び訪れる。
 サーニアの熱が再発したのだ。

 温泉の効能が途切れてしまったのをすっかり忘れていた。
 北天狐の温泉へ行こうにも距離がある。薬ももうなくなってしまった。
 サーニアは起き上がる気力もなく、このまま眠りにつく覚悟をした。
 幼かった竜に看取られるのであれば寂しくないと。

 竜は鳴いて仲間たちを呼び込んだ。竜たちは集い、遠くにいる竜も呼び込んだ。
 サーニアの病は暖かい場所であれば改善すると気づいた竜は自分たちの魔力を使い、土地の寒さを変えていった。
 極寒だった土地は、植物が生える温暖な季節を得られるようになった。
 夏がはじめて訪れたのである。

 サーニアが行く場所で竜たちは魔力で土地の環境を整えた。サーニアが少しでも生きていけるようにと。
 こうしてこの土地は人が生きられる環境へと生まれ変わった。
 南に棲む人々は少しずつ北へと移り住み、開墾を始めていった。数年の間にすっかり町が増えていきサーニアにとって行きやすい場所へと変わっていった。
 竜たちは土地を人が棲みやすい環境へと変化させたことから讃えられ、護竜と呼ばれ親しまれた。

 人の往来が増え、南からきた青年がサーニアと出会う。彼はさらに暖かい土地からやってきたという。
 青年はサーニアに恋をして是非一緒に故郷へ行こうと誘ってくれた。
 南へと憧れはあるが、サーニアは竜たちと北天狐と別れるのを惜しんだ。
 彼らはサーニアが少しでも生きていけるのであればと青年にサーニアを託した。生きていればまた会えると信じて。
 こうしてサーニアは南の方へと向かった。サーニアを慕っていた竜だけサーニアたちについていったという。

「サーニアについていった北天狐は私だよ」

 タキの語りが終わって、優し気に微笑んだ。

「本当はサーニアについていきたかったが」

 故郷が恋しくなってタキはアルベルに戻ったのだという。

「もしかして、サーニアはリド=ベル建国の古典の笛吹きの少女のことでしょうか」
「ああ、人間たちが勝手な作り話にしたあれだね。サーニアの曲に合わせて歌にした奴だから私も大好きだよ」

 勝手に作られた古典は人の都合のよい解釈であったが、それでもタキにとってはサーニアを思い出す大事な曲として残った。タキはそれに関しては人に感謝している。
 古典の曲を誰かが紡げば、そのたびにタキはサーニアに想いを馳せられた。

 最近は歌う者が減って残念に思っていたが、そこでサーニアと似た笛を吹く者が現れて我慢できず一族の若者に頼み呼び込んでもらった。

「ふふ、奇縁だな。ライラも幼い護竜に慕われている。昔を思い出せて幸せだ」

 ついでにお願いをしたいとタキは言った。

「是非、私の傍で笛を吹いて欲しい」
「……あの、私。フルートを宿屋に置いてきてしまって」

 期待に応えたいが、どうしても今は厳しい。タキは耳をしゅんとへこませた。

「フルートを持ってきましょう。そしたら一曲披露いたします」
「いや、何度も来させるのはよくない。ライ、彼女の笛をとってきてやってくれ」

 ライはしゃきっと立ち上がった。

「え、ですが。重たいですよ。大丈夫ですか?」
「ひょうたんに詰め込めば何とかなるさ」

 任せろとライは胸を張った。ひょうたんは呼び声に応えたものを中に入れることができるという。
 いや、フルートは呼び声に応じないと思う。
 つっこみをいれたいところだったが、その前にライはぴょんぴょんと跳ねて神殿から飛び出した。

「大丈夫かな。私がやっぱり取りに行った方が……」

 ついでにリリーとクロードに安心させたい。

「いや、お前さんはその間に我が秘湯でゆっくりと温まるのがよいだろう」
「え、……でもさっきも結構温泉につかっていたし」
「秘湯につかるのがいいだろう。お前さんもサーニアと同じ病にかかっている。普通の温泉だと1,2日ともたないが、秘湯であれば数か月は寒さに耐え発病を抑えられるだろう」

 タキの言葉にライラは首を傾げた。

「サーニアと同じ病?」
「ああ、お前も雪結晶病にかかっている。まだ初期の段階だが寒い中無理はさせたくない。温泉につかり、結晶をしっかりと溶かすといい。秘湯で溶かした結晶はしばらく現れないはずだ」
「待ってください。その雪結晶病とは何ですか?」

 さっきのおとぎ話にでてくるようなものと思っていたが、自分の身にそれが起きているとは予想外であった。

「もしかして気づいていないのか。……最近、突然酷い発熱に晒されたであろう。温泉につかって改善することがあり」

 何故北天狐がそれを知っているのだろうか。確かにライラは数日前に突然の熱病に倒れた。医者の提案で1日1回温泉の湯につかると発熱が出なくなったので治癒したと思っていた。

「詳しく、雪結晶病について教えていただけますか?」

 ライラはぎゅっとブランシュを抱きしめた。ぴゅー?とブランシュは首を傾げてライラを見つめた。ライラの表情は不安により辛そうであった。
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