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1章 新しい縁

5 新しい生活

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 初夜を放って戦地へ向かった北の英雄、クロード・アルベル辺境伯。
 公都からしてみれば北の安寧を一番に動いたクロードの行為をほめそやしていた。

 同時に、ライラへの評価は散々であった。
 人生で大事な初夜を放りだすとは余程魅力のない令嬢だったのではないかという噂も流れた。
 そして帝都で流れていた冷酷な氷姫で婚約者に愛想をつかされ従妹令嬢に寝取られたという話も広まっていた。

 予想はしていたがこたえてしまう。

 ホテルから公都の別邸に生活を移したライラは深くため息をついた。
 噂の件はそのうち風化していくと思いたい。

 新婚だというのに一人で過ごす寝室にてライラは深くため息をついた。
 鈴を鳴らすと侍女のリリーがやってきた。主人が起きているのを確認して朝の身支度を開始してくれた。
 まだ成人して間もないのによく動いてくれる。

「奥様、今日のご予定は如何いたしますか?」

 リリーはドレスを着せた後は髪の手入れをしながら声をかけた。

「そうね。図書館へ行きたいのだけど」

 クロードの館には古い蔵書があった。昔別の貴族がここで暮らしていたようだが跡取りもないまま亡くなられそのまま廃墟となるところをクロードが公都別館として購入した。
 まだ修繕される前の部分があるので執事のバートから行ってはならない場所を聞かされた。図書館は幸いしっかりとした作りの為危険は少ない。ライラは図書館にこもり、古い書物でもこの公国の歴史に関する本をひとつひとつ読み漁っていた。

「奥様、ランチの時間です。今日は晴れておりますし、お庭の方でいかがでしょうか」

 読書に夢中で日が高く昇っているのに気づいた。
 リリーのいう通り外でランチにすることとした。日差しがぽかぽかと温かく、庭には手入れの行き届いた蘭の花が咲いていた。ライラの好きな花である。
 庭を眺めながら食事を楽しんだ後に執務室へ行く。夫人としての仕事の見直しである。

 館管理の書類について目を通す。今までは執事のバートが一人で執り行っていた内容であるが、少しでもこの国での家事には慣れておきたい。

 まずは帳簿をつけることから開始してみた。
 しばらくするとリリーはお茶と手紙を持ってきてくれた。
 ライラが返事を待っていた相手であり、ライラは手をとめて手紙の中身を確認した。

「明日、緑の館に行くわ」

 諸々の準備をお願いしたいというとリリーはすぐに動いてくれた。

 緑の館は、アリサ・アルベル前辺境伯夫人の住んでいる場所である。
 緑豊かな庭が有名で緑の館と呼ばれていた。

 アルベド前辺境伯自身は辺境伯の爵位をクロードに譲った後は、田舎の農園の管理をしているという。辺境に比べれば公都からだいぶ近いため週末には戻っ夫婦で過ごされているという。

「ようこそいらっしゃいました。ライラ様」

 アリサ夫人は嬉しそうにライラを迎え入れてくれた。結婚式の披露宴の時に挨拶を交わしたが、おっとりとした印象の女性である。
 公国の子爵家令嬢で、18歳の頃にアルベル辺境伯領へと嫁いだと聞いている。

「はい、もっと早く挨拶に伺う予定でしたが遅れてしまい申し訳ありません」

 ライラはお土産の焼き菓子をアリサ夫人に贈った。

「まぁ、気を遣わなくてもよいのよ。あなたは慣れない生活で大変でしょうに」

 アリサ夫人はライラを温室の方へと案内してくれた。ガラス張りの温室の中には珍しい植物を観ることができた。

「私は嬉しいわ。子に恵まれなかったから、こうしてあなたのような娘ができて会いに来てくれたもの」

 アリサ夫人は不妊症に悩まされていた。
 その上で主人は北方の警護で忙しく十分に一緒にいる日々はなかった。
 北の防衛の責任者である夫の立場を理解している為、不安を口にすることも憚れ次第に彼女は精神的に疲れてしまった。
 夫婦仲は悪くない。夫も優しい人であるが、業務に追われる日々でとても妻と一緒に過ごせる余裕がなかった。

 ついにアリサは耐えられなくなり公都の実家の管理する家へと引きこもってしまった。これがこの緑の館である。
 大公の弟であるクロードを養子にするというチャールズ前辺境伯の言葉に少しだけ安堵感を覚えていた。

「アリサ夫人のことを尊敬しています」
「まぁ、戦で忙しい夫を置いて公都に引きこもった私を?」

 建前でも嬉しいわとアリサは笑った。

「アリサ夫人は何もしていない訳ではありません。公都での社交界に出て、多くの貴族たちとやりとりをして辺境伯領の食糧難を解決しようとしておりました」

 あまり知られていないが、アリサ夫人は肥沃な領地を持つ貴族を緑の館に招いておもてなしをし深い友好関係を築いていた。
 彼女のサロンは人気があり、家庭教師の依頼も頻繁に来ている。
 彼女をよく知るものたちは緑の貴婦人と呼ばれ親しまれていた。

 多くの者はアリサ夫人を子を成せず、夫を支えられずに逃げ、妻としての役割を果たせなかった女と呼んでいる。
 だが、先ほど言った通りアリサ夫人を慕う貴族もおり、彼女の為にアルベド辺境へ食糧の援助を行う者もいた。
 流通のライフライン整備も進んで、アルベド辺境領の食糧については劇的に改善されたという。

「まぁ、買い被りです。皆様、北の守りの夫の為にしてくださったのです」
「ですが、アリサ夫人がいなければ流通の道はまだ未完成のままだったでしょう」

 ライラは彼女を讃えた。アリサ夫人は恥ずかし気に両頬を両手で包んだ。
 このように直接褒められるのは慣れていないようだ。

「それで是非私に協力をしていただきたいのです。公妃様より色々教えていただきましたが、どの貴族がどのような嗜好か、どのようなお茶会が好まれるかまではわかっておりません」

 どうかご教授の程をとライラは頭を下げた。
 今自分はアルベル辺境伯夫人である。公都でただ夫の迎えを待つ以外にできることを見つけていきたい。
 アリサ夫人に倣い、公国の貴族たちに認められアルベル辺境伯領へもっと意識を傾けていただけるように努力をしたい。

 先日届けられたクロードには手紙で許可をとっている。
 クロードは無理のないようにして良いと言ってくれた。
 何かあればアルベル前辺境伯夫妻に相談するようにとも書き、既にアリサ夫人の元にクロードから手紙を届けられていたようだ。

 失礼ながらクロードの配慮を意外だと感じた。
 とてもそんなことをする人とは思えなかったからだ。
 第一印象、マンティコアの首を見せた時のことを忘れられない。
 未だに根に持っている自分に気づいた。

「ライラ様、それでは今度のお茶会で是非あなたに手伝っていただきましょう」

 アリサ夫人の提案にライラは喜んで受け入れた。彼女のお茶会の手配などは今後の参考にしていきたい。

 改めて緑の館を案内してもらった。
 建物内に様々な絵画が飾られているのをみてまるで美術館のようだった。
 アリサ夫人が援助している画家の作品だと聞かされた。アリサ夫人のお茶会での宣伝により今は公都で人気の画家だという。

 庭は緑で統一されながら四季折々の花で彩られた様子はまるで楽園に迷い込んだかのようだ。
 緑の中に好きな花を見つけると楽しくなる。
 アリサ夫人自身庭の手入れをし庭師と相談しながら周期毎雰囲気を少しずつ変えて訪問者を楽しませていた。
 彼女のお茶会に招待されることを望む声も多いと聞き、そうであろうとライラは頷いた。

 自分はここまでのことができる自信はない。
 だが、少しでもアルベル辺境伯夫人としての立場を確立させる必要がある。

 自分の得意なことを思い出し、ライラは帰宅してすぐに帝都から持ってきた荷物からフルートを取り出した。
 ライラの家は音楽の教育に熱心な家であり、ライラも父兄から学び、音楽を嗜んでいた。
 特に得意なのはフルートである。

 婚約破棄されてから目まぐるしい日々を送りすっかり触れることがなかったが、久しぶりに触れたフルートは手によく馴染んだ。
 自室でほんの少し音を奏でる。
 愛笛は嬉しそうにライラの息吹に応え美しい音を奏でてくれた。

 ほんの1分の短い曲であるが、以前と変わらない音にライラは安堵した。
 曲は春先の明るいものを選んで、今度アリサ夫人に披露したい。
 2、3分程の曲を選んでいこう。特に効果がなければ1曲だけで終わりにしよう。もし好評で求められた時のために2曲は練習しておくことにしよう。

 楽譜を開きながら、アリサ夫人に聞かせる曲を選んでいく。

 パチパチと拍手の音がした。リリーとバートであった。

「素晴らしい演奏でした」

 バートは誉めそやし、リリーはこくこくと頷いた。
 笛の曲が流れ、本日のディナーの案内を自分がやりたいと二人とも譲ろうとしなかった。
 その為二人で部屋へ訪れたという。
 廊下を歩きながらリリーは恥ずかしそうに質問をしてきた。

「奥様は笛が得意なのですか?」

「フルートを嗜んでいて久々に演奏をしてみたわ」
「久々とは思えない腕前でしたよ」

 バートは続けて絶賛した。
 まるでコンサートで聞いたように見事だったと褒めてくれてライラは恐縮ですと笑った。

「ありがとう。今後アリサ様のお茶会で披露できないかと思って」

 お茶会を手伝うことになったことも話すとバートは喜んだ。

「きっとアリサ様も、お客様も喜んでいただけますよ」
「アリサ様のお茶会ですから演奏をしてもよいか今度彼女に聞いてみます」

 必要なものがあれば何なりとおっしゃってくださいとバートは協力的であった。
 こんなに彼が笑顔なのははじめてである。音楽が好きなのだろう。

 その日からライラは毎日フルートの練習をした。時々音の調整の為に道具の手配をバートにお願いする。
 バートはライラの欲しい道具を一通りそろえてくれた。やはり彼は音楽に詳しいのだろう。

 ライラの奏でる音楽は心地よく、使用人たちの間で評判が良かった。

 彼女の演奏は使用人たちのちょっとした娯楽の一つになっていった。
 簡単な楽器や歌など勉強し始めたという者も現れるようになった。
 彼らの感想を聞きながら公国の人間が好みそうな曲を確認し、アリサ夫人の元でフルートを披露した。

「いかがでしょうか」

 アリサ夫人は笑顔で拍手を送った。

「素晴らしいわ。次のお茶会で是非お客様たちに披露していただきたいわ」

 好評な様子にライラは安堵した。

「そういえばライラ様のお父上も、兄上も音楽に優れているとか」
「はい、兄も、父も光栄なことに皇帝から何度かリクエストを賜ることがあります」
「羨ましい才能だわ。私もバイオリンやピアノは習ったのだけど」

 あまり上達しなかった。アリサ夫人は恥ずかし気に笑った。

「お茶会の会場にはピアノが置かれていましたが」
「ええ、音楽家を呼び寄せているのよ。そうだわ。ピアニストと合わせるのもいいわね」

 すぐにピアニストを呼ぶようにアリサ夫人は侍女に指示を出した。
 さすがにすぐ来るのは難しいだろうと思ったが、馬車ですぐに駆け付けてくれた。

 名前はアベル・カットという名といい公都で人気の演奏家である。三十手前の青年であった。
 アリサ夫人に見いだされて音楽家として大成したということで彼女の要求にはできる限り応えているようだ。

 ライラのフルートの腕前をみて、アベルはすぐに乗ってくれて曲名も決めることができた。
 アベルとの打ち合わせで随分と時間が経ってしまった。

「うふふ、今回はライラ様が手伝ってくれるから楽しいわ」
「手伝うと豪語していたのにほとんどの仕事をお願いしてしまって」
「招待状を書くのを手伝ってくれるだけでもありがたいわ」

 ライラの招待状の文章を確認してアリサ夫人は、ライラに任せた。
 ライラのおかげで仕事が楽になったと彼女は笑った。

「また手伝ってくれるとありがたいわ」

 次はもっと色々お願いしたいと言ってもらえ、ライラは役に立てられたと実感した。

 お茶会の3日前にアリサ夫人から荷物が届けられた。中身はお茶会用のドレスである。
 準備を手伝ってくれたお礼にと用意してくれたのである。
 中をみると淡い緑色のドレスであった。

 お茶会当日、ライラは早めにドレスを着て緑の館へ訪れた。
 お茶会の準備が完成された後に、客人がぞろぞろと訪れて来た。
 ライラはアリサ夫人と共に一緒に客人の迎え入れを行った。

「おお、そちらは?」
「ライラ・アルベルと申します」
「やはり先日の美しい花嫁でありましたか」

 結婚式に参加していたようで彼はライラの花嫁姿をほめそやした。
 ライラは恐れ入りますと礼をした。

「カリエ伯爵は先代辺境伯の頃より北方の助けをしてくださったと伺っています。後でお礼をこめて演奏をさせていただきたいです」

 アリサ夫人のおかげで今日来られる客人のだいたいは把握できた。
 結婚前の公城での教育の一環で貴族名簿は一通り読み込まされていたが、まだ全てを覚え込めていない。

 今回は10の家からの参加であり、頭に入れることができた。
 挨拶の感触も悪くないようであとはお茶会を問題なく執り行うことである。

 アリサ夫人が客の相手をしている間はライラが侍女頭と話し、適宜予想外の事態にあたらせてもらった。
 大事なことは起きていないようで一安心である。

 ピアニストのアベル・カットが登場したのでライラはフルートを取り出して前に現れた。
 客人たちは一斉にライラに注目した。

 一通り演奏が流れていく。
 アベルと話して決めた曲の中にはトラヴィスの創作した曲も含まれていた。
 アリサ夫人が見出しただけありかなりの腕前だ。お互い安心して演奏を続けられる。

「素晴らしい! トラヴィス・レジラエ殿の名は何度か耳にしたことがある。その妹の腕前もなかなかのものですな」

 帝都で有名な音楽家、皇帝のおぼえがめでたい兄の名が出てライラは嬉しく思った。

「帝都の皇帝の開くパーティーでないと聞くことができないと思っていた。まさかここで曲を聞くことができるとは」
「皆様、ありがとうございます。未熟な部分が多いこのライラをご指導いただければ幸いです」

 スカートの裾をつまみ、淑女の礼を示す。
 アベルがライラに手を差し伸べる。
 ライラはそっと右手を差しだすと、アベルは恭しく手の甲にキスをした。
 人気のピアニストと噂の辺境伯夫人の姿は絵になりさらに拍手が送られた。

「素晴らしい演奏でした」

 アベルからも認められた演奏に、ライラはほっとした。周囲の評価もよくこれでライラ・アルベルを覚えてもらえただろう。

 ここにいる者たちは先代辺境伯と交流を持ち食糧難含めて相談に乗ってくれた恩人たちである。これからもアルベル辺境伯家と交流をもっていただきたい。
 ライラはそう願った。

 ◇◇◇


 北方の領地、アルベルでは戦火に見舞われていた。異民族の強襲、魔物を操る者。
 残された者たちで防御に徹していたが、暴れだす魔物の数に手が足りずにいた。

 クロードは公都から戻る途中に兵士を集い、アルベルへと戻ってきた。
 10人の兵士が力を合わせてようやく倒した巨体の魔物もクロードは一人で5匹も倒した。戻ってきた1日目で。
 人々はその強さに歓喜し、クロードに続き奮起した。
 領主の姿でここまで変われるとはとオズワルドは関心した。

 やはりこの男は英雄だ。

「粗削りで、周りがついていけていない時があるけどね」

 クロードが戻るまでのオズワルドが行っていたのは防御の魔法であった。
 魔物らが一気になだれ込んでこないように境界線に結界を張る。兵士たちの指示を行いながら兵士の支援にも回っていた。

 全てを完全に網羅できればいいのだが、オズワルドの力にも限界がある。
 力及ばない一部の砦はすぐに捨て置き、退去命令を下した。
 そして砦を奪われるのを許してしまった。

 砦が奪われたという報を聞き、クロードは飛んで戻ってきた。
 先ほどまで結婚式を行っていたとは思えない男は魔物を倒し、奪われた砦へ一直線に進み異民族らを排除した。

 敵もまさか真向から攻めて来るとは思わず、そしてあまりの力任せのクロードに驚きを隠せなかった。
 砦を牛耳っていた司令官をクロードは倒し、異民族らは四方に散った。
 残されたのは暴れまわる魔物たちである。

 戦から魔物狩りへと変化する中人々の表情から笑顔が取り戻されていた。
 人々はクロードを讃えた。

「クロ」

 オズワルドはクロードに声をかけた。

「オズ。俺の留守中北を守ってくれて助かった」

 労いの言葉を投げかけてきてオズワルドは苦笑いする。

 北の領地を完全に守り切れていないのだが。

 砦を守り切れず、逃げ遅れた兵士らは異民族に殺されてしまった。
 取り戻した砦には兵士たちの首が飾りのように並べられていた。

 ここを占拠していたのはアラ族であろう。
 アラ族は捕らえた動物の首を祀る風習があった。
 兵士らは狩りで捕らえた動物のように扱われたのだろう。
 自分の力がもっと足りていれば彼らはこのような姿に遭わず済んだであろう。

 その話を聞いてもクロードはオズワルドを褒めた。

「お前がいなければアルベル全体がこうなっていただろう」

 クロードは砦に並ぶ兵士の首を眺め落ち着いたらきちんと弔ってやろうと口にした。

「ところでクロ。結婚式だったんじゃないのか?」
「……ああ」

 クロードの移動時間を考えると結婚式の途中か、もしくは披露宴の最中での出発だったのだろう。

 まさか花嫁を放ってここまで飛んで来たのだろうか。

 英雄としては立派かもしれないが、放置された花嫁が気の毒になってしまう。
 クロードがオズワルドたちに任せて大丈夫だと安心させられなかったことを悔やんでしまう。仕方なかったとはいえ。

「いくら気乗りしなかったとはいえ、花嫁を放り出すなど帝都に帰ってしまったらどうするんだ」
「それはない」

 クロードは首を横に振った。

「待ってくれると言ってくれた」

 少しだけ頬を染めて口にするクロードを見てオズワルドは目をぱちぱちとさせた。
 公都へ出発する前は気乗りしない表情であったというのに。

「迎えに行くといった。冬までにこの領地の安全をなるべく確保しなければならない」

 クロードは続けていう言葉。
 到着した時に部下たちの報告を一通り受けて、率先して魔物退治と砦の奪還、異民族を蹴散らしていく様子は普段より生き生きとしているなと思った。結婚式から解放された反動だと思っていたのだが。

「冬まで、ね」

 さすがにそれまで待たせるのはライラが気の毒に思える。夏まで迎えるようにしたい。

 それにオズワルド自身もライラに早く会ってみたい。

「きっと美しい娘になっているだろう」

 オズワルドは部下たちの動きに気を配り、クロードの支援を続けた。
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