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「体調はどう?」

 志麻さんの言葉が聞こえているのかいないのか。千隼は睫毛を落とした。

「そっか」

 今の行動だけで、志麻さんは千隼の気持ちを読み取ったらしい。志麻さんが僕を見た。

「この子、雛瀬くん。俺の太客様」

「……は、はじめまして」

 じっと、見られていた。つま先からつむじまで全部。でもその視線には力がない。

「かわいい子」

 千隼が声を出した。想像していたより低い声。ふ、と。この部屋に来てはじめて千隼が表情を見せた。唇を横に引き上げている。あ、なんかーー。

 相良さんと、笑い方が似てる。

「だろ? めちゃくちゃかわいいよなあ。俺のスタイリングのおかげだよな!?」

「ううん。雛瀬くんがかわいいから、誰が何やってもかわいくなるんだよ」

「ありがとうございます……」

 こうも急に褒められると、なんだか心がそわそわしてしまう。

「俺の言葉は無視かよ……」

 千隼は、再び表情を消してしまった。さっきまで微笑んでいてくれたのに、もう人形みたいに動かない。手の甲に浮いた骨の線が、さらに千隼を病弱に見せる。

「志麻」

 沈黙していた千隼が、視線を自分の手に落として言葉を吐く。

「抱きしめてくれないか」

 儚く、きみが笑うから。僕は身体中に鈍い痺れが走った。

「いいよ」

 照れることもなく志麻さんが千隼を抱きしめてあげる。これは、2人にとっては慣れた行為なのだろうか。
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