206 / 275
206
しおりを挟む
よほど探し回ってくれたのだろう。透夏くんの前髪には汗が張り付いている。それを聞いたせつくんが、ふははと大きなあくびみたいなのを1つ。わらってるみたい。
「じゃあそろそろ俺はお暇するよ。俺のDom様もあそこで怖い顔して待ってるの気づいちゃったから」
わらった顔とうって変わって、ひやひやとこめかみに嫌な汗を垂らしているせつくん。僕は彼の視線の先を見つめた。
ひと目でわかった。あの人が、せつくんのDom様。まわりにいる僕と透夏くんには目も触れない。ただただ、せつくんのことだけを見ている。瞬きもせず、実験動物かなにかを観察するように。
その人は、とても背が高かった。2メートルくらい、あるんじゃないかな。細身で、華奢な印象を受けた。腕を組んでいる手のひらの骨ばっている甲とか。高い鼻筋とか。顔も体型も日本人離れしているように見える。なんとなく、ミックスの方なのかなと思った。
僕はせつくんの無事を願って手を振って別れた。透夏くんに、「せつと何話してたんだよ」と言われて説明をしようとしたときだった。2人は知り合いなのかな。そう思いながら口を開ける。その直後だった。僕に雷が落ちたのは。
「李子」
後ろから、低い声。こんなに低い声、出るんだ。
「Come」
身体が自分の意思とは無関係に動く。この感覚、あんまり好きじゃない。透夏くんはそれを冷めた目で見ていた。目が言っている。「おまえが勝手に動き回ったせいだぞ」と。諸伏さんはいない。あ、奥のほうで話してる。さっきの、せつくんのDomの男性と話してる。隣にせつくんもいる。和やかで明るい雰囲気。僕の目の前にある冷たい空気とは全然違う。
「じゃあそろそろ俺はお暇するよ。俺のDom様もあそこで怖い顔して待ってるの気づいちゃったから」
わらった顔とうって変わって、ひやひやとこめかみに嫌な汗を垂らしているせつくん。僕は彼の視線の先を見つめた。
ひと目でわかった。あの人が、せつくんのDom様。まわりにいる僕と透夏くんには目も触れない。ただただ、せつくんのことだけを見ている。瞬きもせず、実験動物かなにかを観察するように。
その人は、とても背が高かった。2メートルくらい、あるんじゃないかな。細身で、華奢な印象を受けた。腕を組んでいる手のひらの骨ばっている甲とか。高い鼻筋とか。顔も体型も日本人離れしているように見える。なんとなく、ミックスの方なのかなと思った。
僕はせつくんの無事を願って手を振って別れた。透夏くんに、「せつと何話してたんだよ」と言われて説明をしようとしたときだった。2人は知り合いなのかな。そう思いながら口を開ける。その直後だった。僕に雷が落ちたのは。
「李子」
後ろから、低い声。こんなに低い声、出るんだ。
「Come」
身体が自分の意思とは無関係に動く。この感覚、あんまり好きじゃない。透夏くんはそれを冷めた目で見ていた。目が言っている。「おまえが勝手に動き回ったせいだぞ」と。諸伏さんはいない。あ、奥のほうで話してる。さっきの、せつくんのDomの男性と話してる。隣にせつくんもいる。和やかで明るい雰囲気。僕の目の前にある冷たい空気とは全然違う。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ACCOMPLICE
子犬一 はぁて
BL
欠陥品のα(狼上司)×完全無欠のΩ(大型犬部下)その行為は同情からくるものか、あるいは羨望からくるものか。
産まれつき種を持たないアルファである小鳥遊駿輔は住販会社で働いている。己の欠陥をひた隠し「普通」のアルファとして生きてきた。
新年度、新しく入社してきた岸本雄馬は上司にも物怖じせず意見を言ってくる新進気鋭の新人社員だった。彼を部下に据え一から営業を叩き込むことを指示された小鳥遊は厳しく指導をする。そんな小鳥遊に一切音を上げず一ヶ月働き続けた岸本に、ひょんなことから小鳥遊の秘密を知られてしまう。それ以来岸本はたびたび小鳥遊を脅すようになる。
お互いの秘密を共有したとき、二人は共犯者になった。両者の欠陥を補うように二人の関係は変わっていく。
ACCOMPLICEーー共犯ーー
※この作品はフィクションです。オメガバースの世界観をベースにしていますが、一部解釈を変えている部分があります。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる