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推しと通話

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「もしもし……」

 努めて明るめの声を出したつもりだ。

「声かわい」

 次いで、エースくんの声が聞こえた。Sweet playの配信のときに聞く声と一緒。本当にエースくんと電話してるんだ、俺。そして褒められた。恥ずかしい。通話初手でこんな甘いセリフ言えるエースくんは絶対俺より経験人数多いし、モテるだろう。

「全然かわいくないです。エースくんのほうが声かっこいいです」

 噛みつくように褒めると、電話越しにスンっと鼻で笑う声が聞こえてきた。

「そう? ありがとう」

 えへへ……今、推しと話してる。嬉しいな。嬉しすぎて寿命縮みそう。やばい。声、いつも聞いてるけどやっぱりかっこいいよ。低音で、少し甘えたな口調でとても耳心地がいい。

「あ、の……その……」

 由羽はなんとか話題を作ろうと頭を高速回転させるが、緊張のあまり言葉が出てこない。

 やばい。色んなこと話したいのに、エースくんの声聞くだけで力抜けちゃう。

「ふふ。緊張してんの?」

 揶揄うような彼の声。由羽はこくっと頷く。

「とても緊張しています……。エースくんとメッセージしたり、お話ができるのがすごく嬉しくてっ」

「ほんとー? よかった。僕も嬉しいよ。由羽の声聞けて。あの日はこんなにかわいい声出してしてたの?」

「なにゃっ!?」

 ぼふ、と身体から湯気が出そうだ。急にそっち系の話を振られるとは思っていなくて、ワンテンポ遅れて話す。そして変な鳴き声が出てしまったことは忘れたい。

「っ……えと、その。はい……」

「ふうん」

 電話の向こうでエースくんがにやりと微笑んだ気がした。

「今日もする?」

 ウッ、と由羽の心臓に負担が……。破壊力抜群だ。由羽にはそれは効果抜群なのだ。

「いいんですか?」

 畳み掛けるように聞いてしまう由羽は、「待て」が出来ない犬のようだ。餌を見るとたまらずしっぽをぶんぶんと振ってしまうのだ。

「僕はしたいと思ってるけど、由羽はどう?」

 答えなんかわかってくるくせに、エースくんは意地悪だ。

「俺もしたい……」

「はは。素直」

 電話の向こうで笑い声が聞こえる。

「じゃ、今日も特別にしてあげるね」

「とくべつ?」

「うん。由羽は僕の特別だよ」

 とくん、と胸が震えた。特別だなんて、誰かに言ってもらったことはなかった。mateだった彼女でさえも、そんなふうな言い方はしてこなかった。俺は替えのきくSub存在なんだって、自分に言い聞かせてた。だから今、エースくんが放った言葉に身体中がふつふつと沸き立つように歓喜している。こうして自分のことを認めてくれる人に出逢うのは初めてだった。
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