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※わたしのほうが/俺のほうが阿月を愛している(1)

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 テルー城に戻った僕は、大広間の長テーブルの真ん中に座っている。右と左の端には、ジスとシュカ王子が座っている。

「シュカ王子。はじめまして。冥界を司る魔王のジスという」

「お前が魔王・ジス。くそ、俺と同じくらいの美男子だな。これはの阿月が懐くのも仕方がないな」

 ぴく、とジスの尖り耳が動く。

「いえいえ、こちらこその阿月が大変お世話になったそうだ」

 ビリビリ、と見えない雷がぶつかっている音が聞こえるような……。

 僕は2人の動向を見守ることにした。

「そうしたら、どちらが阿月を愛しているか試そうではないか」

 ジスの提案にシュカ王子が拳を突き上げて答える。

「はっ。受けて立とう」

 なんだろう……何が始まるんだろう……。

 僕は黙り込んでそわそわとする。

「まず、阿月の良いところはさらさらと風になびく髪の毛が麗しいな。声も少年のように優しく響き、手足が長くスタイルが抜群だ。加えて夜の顔も麗しいのだよ」

 さらさらと説明しているが、ジスはとんでもない爆弾を落とした気がする。僕は頬を紅くさせながら、その場から立ち去りたくなった。

「そんなの当たり前だろ。阿月は俺が熱出したときも看病してくれたし、なにより抱き心地がたまらん。もう少し食べたほうがいいと伝えたが、今のほっそりとした体型も好みだ。夜の顔はひよこみたいに可愛かったぞ、俺のときは」

 えっ。夜の顔ひよこなの……僕。

 それより上を目指すようにジスがたたみかける。

「そのようなこと、阿月のかわいらしさの1部に過ぎぬ。笑った顔が幼子のように愛おしく、頬をつまみたくなってしまう。口が小さく、唇はぷるんとぷにぷにしていてかわいらしい」

 や、やめてよ……恥ずかしいよ……ジス。

 赤面しているとシュカ王子も会心の一撃を見せる。

「なにより俺と阿月は運命の番。印も付けた仲だ」

 ま、待って。そのことはまだジスに伝えてないんだ……。

「運命の番……そうなのか? 阿月」

 ようやく2人の視線が僕を捉えた。僕は小さく頷く。

「ごめん。隠してたわけじゃなくて、いつ伝えればいいのか迷ってて……黙ってて本当にごめんなさい」

 ジス。怒ってるかな……。

 ちら、とジスの顔を仰ぎみれば、

「ふぇ?」

 ほのぼのとした表情を浮かべている。

「ふふ。人間の交わりには運命の番というものがあると聞くが、魔王にはそもそも運命の番という者はいない。古くからある言い伝えによれば、魔王は運命の番でなくても愛そうと思ったオメガこそが、生涯の伴侶と言われている。阿月。もちろん、異論はないな?」

「ぁ……ぇと……はい」

 これって告白、だよね?
 
 僕の返事を「うむ」と受け取ったジスは満足げに微笑んでいる。
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