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魅了の魔法
しおりを挟む「は…?」
(勇者を作る…?)
クリステルの言葉の意味がわからず、マリアンヌは首を傾げた。そんな少女にネイフィアが講師の言い方を真似て教える。
「この学園は、国の防衛のために国王によって作られた場所なのよ。つまり、学生は皆身体能力が高く魔力が強いという観点で選ばれているわ。
アストリス国は、女性のほとんどが高い魔力の保持者ではあるけど、その魔力量を使った攻撃魔法や治癒魔法を学ぶ為に作られた学園というわけ。
もちろん聖女は国の保護対象よ。」
そうだ、とエリオットは言った。
「ここに入学してきている男子生徒は、その女性の補佐をする能力を学ぶ為にいる。」
それに続けて、ノエリアはクリステルの言葉を噛み砕いて説明した。
「つまり!生半可な魔力で入れる場所ではないんだけど、マリアンヌさんはどうやってここに入ったのかってテルテルは聞いたんだよ!」
「わ、私は…風の魔法を…」
「違うのよね~。」
優しい響きだったクリステルの声色が、一変した。青色の透き通った瞳でじっとマリアンヌを見つめ、笑顔を浮かべたままだが、その表情には何か背筋がゾクッとするような迫力があった。
「貴女がさっきからエリオットに向かってずーっと使ってる魔法。それ魅了魔法だと思うんだけど~?」
「なっ!」
クリステルの言葉にマリアンヌは瞬時にサッと顔色を悪くした。まさかバレているとは思わなかったのだ。
「な、なんの話なのかしら?魅了?なぁにそれ?」
「さっき貴女の身体を視た時、鑑定もしてみたの~。」
「は、はあ?!勝手に視ないでよ!」
怒鳴るマリアンヌに、クリステルはにっこりと笑った。
「貴女は確かに風魔法もちょーっとだけ使えるけど、強いのは魅了魔法の方ね~。アストリスでは魅了魔法は魔法省の危殆魔法機関に登録して使用を制限される危険魔法よ~?登録はしているの~?」
「……!」
「もし登録されてないと法律違反で罰せられるからお気をつけて~。
でもその程度の魅了魔法だと、この学園に通ってる生徒には、そうそう効かないわね~。」
「…!」
クリステルは「だから特に気にはしてなかったんだけど~」と言い、じっと目の前の少女の顔を見つめた。
マリアンヌはそんなクリステルの表情に気が付かず、その屈辱的な言葉に下を向いてワナワナと震え。
「何よ…!聖女だか何だか知らないけど人の事を馬鹿にして…!このクソ女…!!
風よ!目の前の女を切り裂け!
風の刃!!」
あろう事か廊下で風魔法を使い、クリステルに攻撃を加えようとした。
しかし。
「あら規約違反。
風障壁。」
「…!ギャッ!」
クリステルはマリアンヌの風の刃を、瞬時に作った同じ風魔法の風壁で遮り、その壁をマリアンヌにそのまま押し当てた。壁に弾かれたピンク髪の少女は吹き飛び、背面の廊下の壁に頭と背中を打ち付け、そのまま気絶をしてしまった。
くったりとなり動かなくなった少女を見てクリステルは暫く押し黙った後。
「…また証拠隠滅しなくてはいけないわ~。」
「いや、国の保護対象って教えてあげたのに…。」
ネイフィアは、やれやれというように首を振った。
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