美貌の魔術士はライバルをうっかり恋に落とす

キトー

文字の大きさ
上 下
49 / 61

49.プラドの部屋で

しおりを挟む
 
 プラドの部屋に行く最中、お互い一言も話さなかった。
 部屋に着き、ソラの手を引いて招き入れ、立ったままでキスをした。

「──……嫌か?」

「……ビックリした」

 抱きしめるでもなく頬に触れるでもなく、唯一繋がれた手だけはそのままに。唇だけを寄せるキスを、ソラは受け入れた。
 コツンと一度額を合わせ、またどちらともなく唇を寄せる。
 次第に深くなる口づけにソラの体がよろければ、プラドの体もそれを追う。
 気づけばドアと自分の間にソラを閉じ込め逃げ場を奪うようにして、何度も角度を変えながら舌を絡めて貪っていた。

「ん……ふぅっ」

 ソラの吐息すらも飲み込むような激しい口付けを交わす。
 握られていたはずの手は、いつの間にか細い腰を抱いて体を密着させていた。

「んっ、ん……っ」

 舌先を絡め、歯列をなぞり、上顎を擦れば、びくりと跳ねる体。
 それでも拒む事のないソラにプラドの心は歓喜し、ますます体は熱くなる。
 夢中で貪っていると、ソラが身じろぐ。
 そこでやっと少し苦しそうに眉を寄せたソラに気づき、プラドは慌てて顔を離した。
 透明の糸が二人を繋ぎ、すぐに切れる。
 頬をつたう唾液を指先で拭ってやれば、ソラの瞳は涙の膜で潤み、苦しそうに熱い呼吸を繰り返す。

「すまない、つい……」

「いや……上手く出来なくて、すまない……」

 まだキスをしていたかったのがソラにも分かっているのだろう。
 けれど相変わらず呼吸がうまく出来ないようで、熱い呼吸を繰り返しながら謝るソラ。
 その弱った姿すら、体を昂らせる。
 紅潮した頬は白い肌に色を添え、うるんだ瞳は庇護欲と嗜虐心が煽られる。
 もっと触れたい。もっともっと深くまで──。
 そう思うのは自然な事で。

「……っ、嫌なら殴ってくれ」

「……!」

 ソラの体を抱え上げ、大股でベッドに向かう。
 広くない部屋は数歩でベッドに着き、ソラを下ろしたプラドは着ていたローブを床に脱ぎ捨てた。
 靴も履いたままベッドに下ろされたソラは、一瞬何が起こったか分からなかったようで目を瞬く。
 だがプラドの様子に状況を理解したようで、ソラも自らローブを脱いだ。
 その間にプラドはソラの靴を脱がせる。そのまま流れるように靴下も脱がせ、足の甲に口づけを落とした。

「……っ、プラド、それは、恥ずかしい……」

「嫌なら殴って良い」

「嫌、では……ないんだが……」

 頬を染めて困ったように俯き呟くソラの姿に、プラドの中の何かが振り切れそうになる。
 ずるい言い方だと己でも分かっているが、こんなに可愛い反応をされてはクセになりそうだ。
 もっといじめたい欲をコクリと飲み込み、上半身を起こしていたソラをベッドに押し倒す。
 そのまま深いキスを交わし、時折呼吸の隙を与えてあげながら、片手でゆっくりとボタンを外した。
 キスだけでいっぱいいっぱいのソラは、おそらく脱がされていると気づいていないだろう。
 全てのボタンを外し終え、唇を解放してやる頃にはすっかり息が上がり瞳も潤んでいた。
 その様子に満足げな笑みを浮かべるプラドは、耳元へ顔を寄せ囁く。

「メルランダ、愛している」

 ピクリと、ソラの体が揺れる。
 愛してるなんてキザなセリフを自分が吐くなんて、昔なら想像も出来なかった。
 けれどソラには、確かにこの言葉がピッタリだとプラドは思った。

「ん……私も、愛してる」

 そう言って微笑むソラは、言い表せないほど綺麗だった。
 もう一度唇を合わせれば「ふ、ん……」と鼻を抜ける甘い声。
 普段からは想像出来ないような艶っぽい姿に、プラドの中でまた理性が崩れかける。
 それを何とか抑え込み、口づけを終えて首筋から鎖骨にかけて舌を這わせた。
 そこでソラはやっと自分が脱がされている事に気づいたようだ。

「あ、の……プラド。それは必要か……?」

 脱がされているのにも驚いたようだが、それより肌に舌を這わせられた事にも驚いているようだ。
 予測はしていたが、やはりソラは色事の知識がまったく無いのだと確信する。
 そうなるとますます興奮しそうになるが、知らないからこそ、優しくしたいとも思う。
 自分の手で、すべてを教えたい。ソラの快楽は、自分が教え込みたい。

「俺が……したいんだ」

「……そうなのか」

 また「嫌なら──」といじわるしそうになるのをグッと押し込み、出来る限り、穏やかな声で言った。
 ソラはその言葉に納得したのかしていないのか分からないが、それ以上何も言わなかった。
 そのまま、胸元へと唇を落としていく。

「ん……」

 少しくすぐったいのか、ピクリと身体が小さく跳ねた。外気に晒され固く尖っている突起を口に含み舌先で転がすと、ソラが小さく息を飲むのを感じた。

「は、ぁ……プラド、私は、どうするのが、正しいん、だ……?」

 吐息を吐きながら、そしてプラドの指先や舌の僅かな動き一つ一つに敏感に反応しながら、ソラが問う。

「二人の秘事なんだ。何が正しいかは二人で決めれば良い……メルランダはどうしたい?」

 そう言いながら、今度は反対側の乳首を口に含む。
 ちゅっ、じゅる……っ、と、わざと音を立て吸い付けば、ソラから切なげな声が上がる。「ん、ん……」と我慢出来ない声を漏らしながらも、ソラは懸命に口を開いた。

「……私も、プラドを脱がしたい……」

 恋人の可愛らしいおねだりに、プラドは喜んで応えた。
 少し名残惜しいが、白い肌から一度体を離してソラが動きやすいようにする。
 距離ができた事でプラドの視界も広がり、美しく愛しい人を己のベッドに押し倒している事実を今さら実感した。この光景だけで、下半身がはしたなく反応してしまう。
 そんな我慢を強いているとは知らないソラは、たどたどしい動きでプラドのシャツに手をかけた。
 少し恥ずかしそうに、それでも真剣な眼差しで己を脱がそうとするソラに、期待は膨らむ。
 そして、ソラの指先が少し光ったかと思うと……

 スパァーーーーン──ッ

 ……と、プラドのシャツが粉々に弾け飛んだ。
 下半身が少し縮こまった。
 
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

処理中です...