上 下
67 / 119

66.お守りの効果は抜群だ

しおりを挟む
 

 倒れた男を横目で確認し、僕はにっこり笑って近くで目を丸くして固まっていた男に更にスタンガンを喰らわせた。
 今度は叫び声も上げずに喉からヒュッと音が鳴って倒れる。

「な……なん……っ!?」

「君も喰らってみる?」

「ひっ!!」

 見せつけるようにスタンガンを向ければ面白いほど後退ったからそのまま扉へと向かう。

 流石はルイがくれたお守り、効果は抜群だ。
 先日何故か僕にルイが渡してきたスタンガン。『アリスの方が必要だと思うからお守りと思って持ってて』と渡された。
 どう考えてもルイの方が必要だとその時は思ったが、ルイからの初めてのプレゼントが嬉しくて言われた通りいつも肌身離さず持っていた。
 まさか使う日が来るとはね。

「な……なんでそんなもん持ってんだ!」

「ん~……愛の力かな?」

「意味の分からない事を言うな!」

「それはさっきからこっちの台詞だよ」

 あまりの勝手な言い分に呆れて苦笑いを浮かべ、僕は扉にかけられていた鍵を開ける。 
 すると突然勢いよく扉が開き、奴らの援軍かとスタンガンを身構えたが、そこに居たのは予想外すぎる人物で思わずスタンガンを取り落しそうになった。

「アリス! よかった居た!」

「る、ルイ!? なんで……」

 僕の顔を見るなり安堵した笑顔を浮かべて抱きしめて来たから僕からも思いっきり抱きしめ返した。
 なぜここに居るのかは知らないが取り合えずルイからのハグを満喫しておこう。
 うん、柔らかい、腰ほっそい、いい匂いがする。スーハースーハー……

「いっ、いい加減離れろっ!!」

 ルイとイチャつく僕に我慢なら無くなった男の一人が声を荒げた。
 良いところなのに邪魔するなと視線を向けたら、皆顔を真っ赤にし不自然ほど視線を彷徨わせていた。
 なるほど、奴らにとって神よりも尊い存在のルイを直視出来ないってわけか。
 可哀想にな、かわりに僕がかわいいルイの姿をこれでもかと目に焼き付けておいてあげるよ。
 腰を抱いたままでね。

「でも何でルイがここに?」

 僕がコツンと額を合わせながら尋ねたら、ルイからは「心配だったから」と返された。
 もちろんコツンと額を合わせたのは奴らに見せつける為だ。歯ぎしりが聞こえるざまぁ見ろ。

「アリスがたくさんの人に連れてかれるのが窓から見えて探してたんだ」

「えっ、ぼ、僕を心配して探してくれてたの……っ!?」

 ルイの優しさと可愛さに感動して震えていたら、何かを勘違いしたルイが「もう大丈夫だよ」とまた抱きしめてくれた。スーハースーハー……

「待ってください! 夢野アリスは危険な人物なんです……見てください! 夢野アリスがいきなりスタンガンで襲ってきたんですよ!!」

「えっ……」

 男が焦りながら隣に立っていた男からスマートフォンを受け取り画面を僕らに見せてきた。
 良いところなんだから邪魔するなと思いながらも視線を向けたら、そこには笑顔でスタンガンを男に突き付ける僕の姿が写っていた。
 何もせずにずっと突っ立ってるだけの男がいたが、なるほどそう言う要員だったのか。

「そんな……あ、アリス大丈夫だった!? スタンガンを使わないといけないほど怖い事をされたなんて!」

「へ?」

 ルイが軽蔑の眼差しを僕に向ける事を期待していただろう男の間抜けな声。

「いやあの……僕たちの方が夢野アリスに襲われて……」

「いくらアリスのファンだからってやって良いことと悪いことがあるだろ!」

「……っ!?」

「ルイーっ!! 心配してくれてありがとー!!」

 僕はルイに抱きつき、その陰で勝ち誇ったように男どもを見てやった。
 悔しそうに歯ぎしりする奴らを置き去りに、ルイの手を取りカオスな現場を後にする。
 そして助けてくれたお礼に奢るよと口実を作ってちゃっかり本日のデートにこぎつけたのだった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

【R18】青斗くんは総受けです

もんしろ
BL
BLゲームの悪役をしている中野青斗。 毎日主人公をいじめ 青斗は悪役としての責務を全うしているが 最近攻略対象と主人公の様子がどこかおかしい…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

処理中です...