上 下
28 / 119

28.これ誰につけられた?

しおりを挟む
 

 その首筋へのぬるりと言う感触に覚えがある気がして、なぜか昨日の試着室での事を思い出した。
 あの時何をしてたっけ。
 たしか渡されたニットの服の着方が分からなくて猫野に教えてもらうため一緒に試着室に入って、それから……

「~~っ!」

 あの時もとても恥ずかしい事をされたと思いだしてしまった。

「何思い出したんだ?」

「へ!? いや、何も」

 何でもないと言っているのに、先輩の不機嫌そうな顔は変わらない。
 だから何でそんなに怒っているんだ。

「何も無かったなら何でこんな所にこんなもん付けてんだ」

「ひぅっ……」

 再び首を舐められて体を震わせた。
 こんな所と言われても訳が分からなくて震える体のまま先輩に問えばその声も震えていた。

「そもそも……そこに、何があるって、言うんですか……っ!?」

 怒られている事もそこを舐められている事もその理由は分からない。だから理由を知るために半ばやけくそ気味に言ったら呆れたような声で返された。

「……なるほどな、お前は何をされたかすら分かってねぇわけだ」

「うわっ! ……わぷっ」

 突然抱きかかえられたかと思えばすぐに背後のベッドへ落とされた。
 痛くは無いけど乱暴なその態度に恐怖心がわく。

「な、何……先輩……?」

 俺の上にのしかかってくる先輩から逃げようとしたが、足を掴まれてまともに動けなかった。
 何をする気だと身構えていたら、掴まれていた片足を肩に担がれて中心へと顔が近づいてきたかと思ったら……

「は!? ちょっと何してんですか!!」

 ショートパンツから出ていた内ももをべろりと舐められたからたまったもんじゃない。
 ホントに何を考えてるんだと先輩の頭を必死で押してもびくともしなくて、そのままぬるりとした感触と共にチゥ……とリップ音が鳴った。
 くすぐったい感触に混じってぞわぞわとなんとも言えない感覚が背筋を走りフルリと腰が揺れてしまう。

「も、やだ……やめて……っ」

 腰から上だけを持ち上げられた苦しい体勢のままで普段自分でもほとんど触らないような場所に顔を近づけられて、しかもあろう事か口を付けられて泣きそうになってしまう。
 イヤイヤと首を振る俺を横目で見下ろしながら際どい場所に更に舌を這わせる先輩は意地が悪すぎると思う。

「他の男にはさせたんだろ? 場所が違うだけじゃねぇか」

「なに……が……?」

 俺が問えば、先輩はこれだと俺の体をさらに折り曲げて舐めていた場所を俺の見える場所まで持ってきた。
 いつの間にか涙で視界が霞んでいたので手でこすって改めて見たら、内ももに赤い痕がついている。
 こんな所どこかにぶつけただろうかと考えていたのが分かったのか、再び先輩が顔を寄せて口づけるから小さな悲鳴を上げてしまった。

「……これで分かるか?」

「だから何が……っ」

 これと言われた所にはやはり赤い痕があって、だがそれが二つに増えていたからあれ? と首をかしげた。

「意味が分かったかよ」

「え、え?」

「これと同じもんが首にもあんだけどなぁ?」

 おれの足を離した先輩は、今度は自分の腕で俺を閉じ込めるように覆いかぶさってきて首筋に息を吹きかけた。
 ぞわぞわとした感覚が再び襲い、そしてそこに同じような痕があるのだとやっと理解する。
 確かに、似たようなことを猫野にされた。
 だけどまさかこんな痕をつけられているなんて思わないじゃないか。

「で? これ誰に付けられた」

「………友達に……」

「あ? お友達とこんなことするのかよ」

「え? しないんですか?」

「……は?」

「……え?」

 え、しないの?
 じゃあ何で猫野はあんなことしたんだ?

 この世界の友達付き合いに疑問を感じている俺を難しい顔して見ていた先輩は片手で顔を覆ってはぁぁぁ……ととても長いため息を吐いた。

「……そういやお前はそうだった……」

「そうだったって、どういう事ですか?」

「いや……それよりもっと詳しく話聞かせろ」

「はぁ……」

 詳しく聞かせろと言うので昨日の楽しかった思い出を先輩に話した。
 その際ベッドの上で壁に背をつけて座る先輩の上に横抱きされながら話すはめになったけど、もう今さら抵抗しても無駄だと悟って大人しく座っている。
 試着室での事は簡潔に話したかったのだが、先輩はしつこいぐらい細かく聞いてくるもんだから事細かに説明する事になってしまった。
 これも新手の嫌がらせだろうか。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息(仮)の弟、破滅回避のためどうにか頑張っています

岩永みやび
BL
この世界は、前世で読んでいたBL小説の世界である。 突然前世を思い出したアル(5歳)。自分が作中で破滅する悪役令息リオラの弟であることに気が付いた。このままだとお兄様に巻き込まれて自分も破滅するかもしれない……! だがどうやらこの世界、小説とはちょっと展開が違うようで? 兄に巻き込まれて破滅しないようどうにか頑張る5歳児のお話です。ほのぼのストーリー。 ※不定期更新。

輝夜坊

行原荒野
BL
学生の頃、優秀な兄を自分の過失により亡くした加賀見亮次は、その罪悪感に苦しみ、せめてもの贖罪として、兄が憧れていた宇宙に、兄の遺骨を送るための金を貯めながら孤独な日々を送っていた。 ある明るい満月の夜、亮次は近所の竹やぶの中でうずくまる、異国の血が混ざったと思われる小さくて不思議な少年に出逢う。彼は何を訊いても一言も喋らず、身元も判らず、途方に暮れた亮次は、交番に預けて帰ろうとするが、少年は思いがけず、すがるように亮次の手を強く握ってきて――。 ひと言で言うと「ピュアすぎるBL」という感じです。 不遇な環境で育った少年は、色々な意味でとても無垢な子です。その設定上、BLとしては非常にライトなものとなっておりますが、お互いが本当に大好きで、唯一無二の存在で、この上なく純愛な感じのお話になっているかと思います。言葉で伝えられない分、少年は全身で亮次への想いを表し、愛を乞います。人との関係を諦めていた亮次も、いつしかその小さな存在を心から愛おしく思うようになります。その緩やかで優しい変化を楽しんでいただけたらと思います。 タイトルの読みは『かぐやぼう』です。 ※表紙イラストは画像生成AIで作成して加工を加えたものです。

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

【完結】隠れSubの俺は幼馴染の腹黒Domにこっそり催眠プレイで甘やかされていることを知らない

grotta
BL
西岡凪はブラック企業に勤める会社員。大学の時Subと判明。このことは幼馴染のイケメンDom三浦煌星には知られたくないのに、あいつは俺の家にやってきて全力で俺をよしよししてきて――? 「煌星が入れてくれる蜂蜜入りのミルクティーを飲むとなんだか眠くて気持ち良くなっちゃうんだよな」  ※バレてる 【受けにだけ優しい腹黒Dom×口の悪い社畜Sub】 受→西岡凪(27歳)、Sub。ブラック企業務めの平凡会社員。煌星とは実家がお隣さんだった。昔は俺がヒーローだったのに、と思ってる。 攻→三浦煌星(26歳)、Dom。優良ホワイト企業勤務、腹黒執着系イケメン。凪の世話を焼くのがライフワーク。彼に気づかれぬよう大学時代からこっそり催眠をかけ躾(開発)している。 ※お祭りに便乗して書いたことないDom/Subユニバースを書いてみる試み。慣れてないので設定はゆるゆるです。 ※痛みを伴うプレイはありません

悪役令嬢の次は、召喚獣だなんて聞いていません!

月代 雪花菜
恋愛
【3つの異なる世界が交わるとき、私の世界が動き出す───】 男爵令嬢誘拐事件の首謀者として捕らえられようとしていたルナティエラを、突如現れた黄金の光が包み込む。 その光に導かれて降り立った先には、見たこともない文明の進んだ不思議な世界が広がっていた。 神々が親しい世界で、【聖騎士】の称号を持ち召喚術師でもあるリュートと出会い、彼の幼なじみや家族、幼い春の女神であるチェリシュとの出会いを経て、徐々に己を取り戻していく。 そして、自分に発現したスキル【料理】で、今日も彼の笑顔を見るために腕をふるい、個性豊かな人々に手助けをしてもらいながら、絆を結んでいく物語である───   ルナが元いた世界は全く関係ないということはなく、どんどん謎が明かされていくようになっております。 本編の主人公であるルナとは別視点、あちらの世界のベオルフ視点で綴られる物語が外伝にて登場! ルナが去った後の世界を、毎週土曜日に更新して参りますので、興味のある方は是非どうぞ! -*-*-*-*-*-*-*- 表紙は鞠まめ様からのいただきものです!家宝にします!ありがとうございますっ! 【祝・3000コメ達成】皆様の愛あるコメが3000も!恒例の飯テロコメや面白劇場コメなど、本当にありがとうございますーっ”((._.;(˙꒳​˙ ;) ペコリ -*-*-*-*-*-*-*-

飼い犬Subの壊し方

田原摩耶
BL
王子系優男生徒会長(dom)に飼われている堅物真面目生徒会会長補佐Sub総受け ふんわりドムサブ非王道学園BLのようななにかです 基本日本語コマンド 基本無理矢理で受けが可哀想な目に遭いがちです。愛はあったりなかったりします。

Ωの恋煩い、αを殺す

wannai
BL
生徒会副会長α × 生徒会長Ω  才色兼備の性格キツめΩと、彼と番いたくて狂っちゃうαの話

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

処理中です...