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今日も私は蓋をする

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和泉りあちゃんは可愛い。そして、頭もいい。
本来だったら私が隣にいるなんて考えられなかった人だ。

「かすみ、次は科学実験室だって」
「うん、行こっか」

後ろからポンと背中を押される。それだけでもくすぐったい。りあちゃんの声は、優しくて甘いから。
名前を呼ばれるだけでくらっときちゃうんだ。もちろん、言わないけどさ。

「科学はいろんな記号が出るからちょっと苦手だなぁ」
「そう? 私は化学変化とか面白くて好き。また一緒に勉強しようよ」

「えぇ? りあちゃんに悪いよ」
「むしろ逆だよ、私はかすみと勉強したいな。かすみの目の付け所はおもしろくて、いつも勉強になるんだ」

「そ、そっか……」
「それに、かすみと居るの好きだし」

ずるいと思うんだ。私の気も知らないで、簡単に好きとか言っちゃうなんて。私がどれだけドキドキしてると思ってるの。
言うつもりもない気持ちを抱えて友達を続けるには、なかなか難しい。無自覚なりあちゃんはいつも私をドキドキさせる。

「かすみ? どうしたの」
「な、なんでもないよ? ……なんでも」

想うだけなら許されると思ってた。
こんなに苦しいなんて聞いてない。

「へへ、りあちゃんとならすごく頑張れそう」
「っ……、そ、そっか。なら嬉しいな」

あなたの隣に並ぶまでの私は少し暗くて、自信もないしうつむいてばかりだった。

『綺麗な、女の子……』

そんな時に見つけた、背筋をピンと張って堂々とした女の子。まっすぐ前を見据えるその姿に目を奪われた。
あなたに話しかけられたらいいのに。話しかけるきっかけ欲しくて、私は一冊のノートを手渡したんだ。

「またノート見せてよ、かすみのノートは私の原点なんだ」
「もう、大げさだよ」

「ほんとだってば」
「ふふ、りあちゃんにだったらいつでも貸してあげる」

こんな私をあなたが褒めてくれるから、私はまた歩き出せる。
あなたこそ私の原点なんだ。
この関係を壊したくないし、なにより困らせたくないから。
私は今日も気持ちに蓋をする。


「ありがとうね、りあちゃん」
「お礼を言うのはこっちだって」




好きだよりあちゃん。
この気持ちだけは絶対に教えてあげないけど。
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